19話 これから、バヤンガ町に帰ります
第2章王都編はあと1話で終わります。
リナさんへのお土産を無事に買い終わった後、俺達はまだ時間もお金もだいぶ余裕があるという事で王都で有名な飲食店に入り小休憩することにした。
俺達が入った飲食店の名前は「マリル」。王都で有名なお店だけあって店内の雰囲気はとても良く、店内はとても賑わっていた。
そして、肝心の料理については王都の有名店だけあって、バヤンガ町のお店より値段は高かったが、味は俺の予想を遥かに上回るほど美味しいかった。
注文した物を食べ終わった俺達は、いい時間帯だった為、馬車を一時的に預けている宿屋に戻ることにした。
「さてと、2人共帰りはどうする?」
「 「どうする?」って、馬車で帰るしか手段は無いじゃない」
「そうですよ」
馬車を一時的に預けている宿屋に到着すると、俺はバヤンガ町までどう帰るか2人に聞いてみた。
すると、2人は「お前は、何を言っているんだ?」と言う顔をしながら帰る手段は馬車しか無いと答えた。
どうやら、2人は俺のスキルの1つ「ゲート」の事を忘れているようだった。
「あれっ?ひょっとして、2人共あのスキルのこと忘れてる?」
「あの、スキルって?」
「・・・・・・あっ!?、ひょっとして、「ゲート」の事ですか?」
「そう、正解。俺の、「ゲート」は一度自分の足で行った所にしか開くことが出来なかったから行きは使えなかったけど帰りはバヤンガ町に帰るだけだから使えるんだよね」
エリスは、未だに分かっていないようだったが、シリリアはようやく「ゲート」の存在に気づいたようだった。
俺のスキルの1つ「ゲート」は、目の前に扉を創り出し、その扉を通り抜ければ行きたい場所に一瞬にして行けると言う便利なスキルだ。
しかし、その反面行ける場所は自分の足で一度訪れた場所に限られてしまう。
「・・・ん〜、どうするエリス?」
「今回は、色々と想定外の事が沢山あって疲れたし、ここはハルトのスキルを使いましょうか」
「そうですね。でも、ここで「ゲート」を使うのは流石に目立ってしまうので使うのは王都を出てからにしましょう」
「そうね」
「そうだな」
2人は、「ゲート」を使ってバヤンガ町に帰ることを賛成してくれた。
しかし、ここで「ゲート」を使うのは人の目もあるし王都を出てから使った方がいいんじゃないか?と言う話になり、俺達は王都を出てからしばらく馬車を走らせ、人が居ない場所に馬車を止め「ゲート」を使用した。
この時に、俺は「そう言えば、馬車ごとゲートは通り抜けられるのか?」と思ったが、実際に通ってみると意外とすんなり馬車ごと「ゲート」を通り抜けることができた。
「初めて見たけど、本当に凄いわねこのスキルは・・・」
「そうですよね・・・。普通なら、馬車で数日掛かるのが一瞬ですもんね」
「まぁ、その代わり一度自分の足で訪れた場所にしか行けないことが欠点みたいなものだけどね」
馬車ごと「ゲート」を通り抜けると、バヤンガ町に到着したのは丁度陽が沈む頃だった。本当は、陽が沈む前にバヤンガ町に到着したかったけど、それはしょうがないことだな・・・。
陽が沈んでしまっていると言うこともあり、ソード・ソックス子爵とギルドへの依頼達成の報告は明日に回そうと言うことになり、俺達は銀鷲に戻ることにした。
因みに、借りた馬車はシリリアが代表として返しに行った。
▪▪▪▪▪
「いらっしゃいませ!!」
ん・・・?誰だこの人は・・・?ってか、リナさんは何処に行ったんだ・・・?
銀鷲に到着し中に入ると、カウンターに座っていたのはリナさんでは無く見たことの無い女の人だった。
「って、あれ?もしかして、君達がギルドの以来で王都に行っていた冒険者達かしら?」
「えっ・・・あっ・・・はい、そうですけど貴方は?」
女の人は、俺とエリスの顔を見てそんな事を言った。
どうやら、この女の人は俺とエリスの事を知っているようだった。
もしかして、リナさんがこの女の人に俺達の事を話したんだろうか・・・?
「あらっ、まだ名乗って無かったわね。私はミナって言ってリナの母親よ。よろしくね」
「えっ!?リナさんのお母さん!?」
「えぇ、そうよ」
・・・まじかよ。この人がリナさんのお母さんか・・・。
この、女の人がリナさんのお母さんと言う事に対して、後ろに居たエリスは大きな声を上げ驚いていた。
確かに、ミナさんの事をよく見るとリナさんにそれとなく似ているような気がするな・・・。
「あれっ、お母さんどうしたの?・・・って、ハルト君達帰って来たんだ!!」
「あ・・・あぁ、今さっき帰って来たんだ」
しばらくすると、厨房の方からエプロン姿のリナさんがやって来た。どうやら、リナさんは今まで厨房で何かを料理していたようだった。
「で、2人共王都はどうだった?」
「ん〜、まぁ結構いい所だったよねハルト」
「あぁ、そうだな。後、これリナさんへのお土産。中身は王都で有名なクッキーだからよかったら後でミカさんと一緒に食べて見て」
「あら、ありがとうね2人共」
俺達は、リナさんの「王都はどうだった?」と言う質問に簡単に答えながらマッシュで購入したお土産「五色のクッキー」を手渡した。
リナさんは、お土産を受け取った後、俺達に「夕食はどうする?」と聞いてきた。
俺達は、正直言ってまだお腹が減っていた為リナさんに夕食を創って貰うようにお願いすることにした。
「じゃ、お母さんはハルト君達を空いてるテーブルに案内して上げて、私は厨房で夕食を作ってくるから」
「分かったわ。じゃ、2人共着いてきて」
「はい。分かりました」
リナさんはそう言い、俺達が手渡したお土産をカウンターの上に置き、厨房に夕食を作りに行った。
その場に残された俺達は、ミナさんに案内され空いている席に座った。
そしてしばらくすると、同じタイミングで馬車を返しに行ったシリリアと料理を持って来たリナさんが来た。リナさんは料理をテーブルの上に置き、「依頼を頑張ったから、今回はタダで大丈夫よ!」と言いウィンクをしてきた。
俺達は、リナさんの言葉に甘え、リナさんが作ってくれた料理を口に運んだ。
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