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第六話

 見覚えのある真っ白な空間。

 ここはあの死後の世界とやらだ。僕が1度死んでやってきた場所。

「やぁ、随分と早いお戻りだね。カナタ君」

 死神がそう言った。

「わかってるよ、どうせ今回も手違いなんだろ? 早く転生させろよ」

 死神は首を振った。

「あんまり馬鹿にされちゃ困るんだけど、今回は手違いじゃないさ」

「は、何言ってんだ? 俺が毒で死ぬなんて手違いにも程があるだろ」

「そもそも、転生する前のあの事故も手違いじゃないんだよね」

「は?」

「いいかい? 君にはカナタという名前があるけどそれは誰がつけたかわかるかい?」

「何の話だ。さっさと俺を転生させろよ」

「黙れ」

 死神の語調が強くなる。俺は怯んだ。

「調子に乗るなよ、人間。君は一体何者なんだ?」

「何者? 俺はカナタだよ、あの町を守った英雄だよ!」

「違うね。君がしたことは大したことじゃない」

 なんだと。俺は怒りに震えた。

「君の力は君のものじゃない。僕らが『気まぐれ』で君に与えたものに過ぎない。さも君は神にでもなったつもりだろうが、君は僕に勝つことはできない。わかるかい?」

「そんなのやってみなきゃわかんないだろ」

「いーや、わかるね。なんせ君は僕に挑むなんてことはしないから。君は自身のことをカナタだと思い込んでいるが、なぜ、君はカナタなんだい?」

 は? 言っている意味が分からない。

「もう少し簡単にしようか? 君の名前をつけたのは誰?」

「俺の親だろ」

「それは誰?」

「井瀬律と井瀬陣」

「君はそうやって言ってるけど、この物語に登場していないからそれが本当だとは限らないよね」

「は?」

「その2人の名前は僕らなんかでは分からないような遥高次の存在が君の存在に矛盾を無くすために急遽生み出した存在でしかない」

「何が言いたい。はっきり言えよ」

 死神は少し黙ってから喋りだした。

「君が事故に遭い、転生し、首都を守り、毒を盛られ死ぬ。これは君の運命なんかでは無い。君に元々仕組まれた設定に過ぎない。君はある物語の登場人物に過ぎないんだ。だから君はカナタという名だけ与えられただけ。もっと言うなら物語というのもただの文字列に過ぎないんだ。君という存在は読者の中にだけ存在し、そして、その読者がこの物語を忘れたとき、君は消滅する。君の本体は読者の中にあり、この文字列は君を生み出すきっかけに過ぎない。

 不自然な時間の流れだとは思わなかったのか? 気がつけば数ヶ月が経ち、気がつけば数年が経ち、抱いてもいない女をぼんやりと覚えていて、いつの間にか毒死している。これほど都合よく、首都が魔物に襲われているなんてことはあるか? そこにさらに都合よく君が現れるなんて不思議では無いか。

 いいか、これは偶然じゃない。仕組まれた設定に過ぎないんだ。君はカナタという登場人物であってそれ以上じゃない。作者がこのあと君が僕に攻撃をしないと決めているから君はいつまでも僕に攻撃はできない」

 すべてを聞き終わって俺は絶望した。

 

「ほらね、彼は僕に攻撃をしなかった。さて、一本線が入ったら物語はおしまいさ。あとがきがあって、評価スペースがあり、広告があって、ページの下端だ」

 終わりです。

 メタフィクションが書きたくてさっさとオチに持ってきました。

 一応、カナタが転移する前日譚的なのもあるのですが、いらないと思って載せてません。下書きにはあるので、要望があれば「第零話」としてのせます。


 ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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