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第五話
その日、ある青年が殺された。もはや青年とは呼べない年齢ではあったが、ここでは敢えて青年と呼称しようと思う。
首都の安全は彼一人に任されていた。つまり、彼さえ殺すことが出来れば首都は壊滅状態になり、隣国としてはこれほどのチャンスはなかった。隣国は一人の女をスパイとして青年の元に遣り、青年に毒を飲ませ、殺す。という至極シンプルな方法であった。先述の通り、これは上手くいった。
隣国の王は翌日、首都が壊滅するのを待っていたが、以外にもそんなことはなかった。
魔物の襲撃は確認されたが、首都は守られたのだ。
誰が、守ったのか。それはほかでもない、元近郊守衛団の人間である。なぜ彼らが動いたのか、真意は分からないが、予測はできる。
彼らはたとえ除隊されたとしても近郊守衛団の人間であることを誇り、いつかきたる異常事態に備えていたのだろう。
それとも、カナタが死ぬのを待っていたのだろうか。
その後、すぐに議会で近郊守衛団の再結成が可決したのであった。