《コメディー童話》大好きな男の子へ、最高のプレゼントを
最高のプレゼントは何か?と考えて、俺が思い浮かべたのは金でした……はい、俗物です
ここより遠い場所、今より遠い時代に、二人の女の子が住んでいました
二人は町でも仲が良い姉妹と慕われていましたが、ある日を境に喧嘩ばかりするようになってしまいました
それを心配した両親が喧嘩の原因を尋ねると……なんという事でしょう、二人は同じ男の子を好きになったというのです
それを聞いたお父さんは「パパのお嫁さんになるって言ってたのに……」と嘆き、お母さんは「それならしょうがないわね」と納得しました
二人の喧嘩は日を追う毎に苛烈を極めていきます
初めは可愛い口喧嘩でしたが、それでは埒が明かないと気付くと
次第に拳で殴り会うようになり、拳を避けれるようになると、武器を振りかざし、武器が効かなくなると、大きな攻城兵器を持ち出すようになっていったのです
町の人々は、このままでは町が破壊されてしまうと大慌てです
どうにかして止めようとしましたが、大きな兵器を片手で振り回す姉妹には、町の力自慢でも近付けませんでした
みんなで相談しましたが良い案が浮かびません、そこで町一番の知恵者に相談へ行きました
町の人みんなが認める知恵者は町長さんの息子さんでした、いつも本を読んでいるので滅多に人前に姿を表しませんが、とても賢くて可愛い男の子です
男の子は町の人から相談を受けると、ため息混じりにこう言いました
「いや、その二人の好きな人に仲裁を頼みなよ、もしくは喧嘩ばかりしてる女の子なんか嫌いだとでも言わせなよ」
最もな意見です
しかし町の人々は「その手があったか!」と一斉に自分の太ももをパーンと叩き、男の子の賢さに称賛の声をあげました
その様子に男の子はちょっと「おいおい」という顔をしましたが、町の人々はざわざわと騒ぎながら、すぐに姉妹の好きな人を連れて行こうと沸き立っていて見ていません
でもそこでみんな気付いたのです
あの姉妹の好きな男の子が誰なのか、誰も知らない事に
どうしよう、どうしよう、と慌てる人々に、賢い男の子は再度ため息をつくと、二通の手紙を書きました
「これを姉妹の家に届けて下さい、手紙には好きな人を落とすなら心の籠ったプレゼントが効果的ですよ、と書いておきました……これで姉妹からプレゼントをもらった人が二人の好きな人だと分かります、それに……プレゼントを選んでいる間は、流石に喧嘩をしないでしょう」
ニッコリと微笑み手紙を差し出す男の子に、町の人々は大喜びです
あちこちから自分の太ももをパーンと叩く音が聞こえます
手紙はすぐに姉妹の家に送られました───そして賢い男の子の読み通り、その翌日から姉妹の喧嘩はピタリと止んだのです
…………ですが、同時に姉妹の姿も町から消えてしまいました
町の人々はようやく訪れた平和な日々に胸を撫で下ろしました
けれど……消えてしまった姉妹が心配で仕方がありません
何故なら彼女らも町の一員なのですから
喧嘩を止めたいのも、元の仲が良かった頃に姉妹に戻って欲しかっただけなのですから
夕方になっても戻らない姉妹を、町の人総出で探しました
賢い男の子も、自分の手紙のせいで居なくなったのかと、一生懸命探しました───けれど見付かりません
次の日も、その次の日も探しましたけど見付かりませんでした
それから毎日誰かが探すようになりました
他の町にも尋ね人のポスターを張りにも行きました
ですが、何日経っても、季節が変わっても見付かりませんでした
あれから何ヵ月経ったでしょう?町の人達も姉妹の事を半分諦めた冬の朝
舞い散る粉雪の中、大きな二つの音が町に響き渡りました
町の人々が慌てて外に出てみると───ズシーン!ズシーン!と、何か大きな物が粉雪に隠れて、北と西からゆっくりと町へ近付いて来るではないですか
大きな音に驚いたのか、粉雪が風に舞って飛んで行きます
ようやく見えたそれは、大きなお城と大きな図書館でした
北からはお城がズシーン!ズシーン!
西からは図書館がズシーン!ズシーン!
大地を響かせ近付いて来ます
あり得ない光景に、町の人々はまだ寝惚けているのかな?と現実を受け入れきれせん
お口を大きく開けてポカーンと、迫って来る大きな建物を、ただ呆然と眺めています
それを咎める声が響きます
「何をポカーンと見ているんですか!早く止めないと町が潰されてしまいますよ!」
ハッとなって振り替えると、賢い男の子が叫んでいました
ようやく目の前の現実を受け入れた町の人々は、「そうだ早く止めないと町が壊される」と、パーンと太ももを叩いて走り始めました
二手に別れてお城と図書館に向かって走り出します、太ももパーンで鍛えた足で走り出しました
するとどうでしょう、町の人々が駆け寄ると、お城と図書館はピタリ止まりました
良かった、これで町は潰れないと、ホッとしたのもつかの間、何か声が聞こえて来ます、どうやらお城と図書館の下から聞こえて来るようです
誰か居るのだろうか?と町の人々が覗くと…………お城の下には行方不明の姉妹の姉が、図書館の下には妹が、それぞれ一人で建物を支えているではないですか!
町の人々はビックリです
姉妹の無事を喜ぶと同時に、お城と図書館を一人で持ち上げているのに、とっても驚きました
姉妹は、危ないから離れてと言ってるみたいです
言われるがままに町の人々が前を開けると、姉妹はポイっとお城と図書館を町の横へ投げます
ズ、ズシーンン!!と音を立てて着地するお城と図書館
地面が波打って、町の人々はピョーンと飛びはねました
そんな事お構い無しに、姉妹はそれぞれの建物の扉を開けます
すると、扉の中からは沢山の人が出てきました
お城の中からは鎧を着こんだ騎士達が、ガッチャガッチャと整列して出て来ます
図書館の中からは箒に乗った魔法使い達が、フヨフヨフヨフヨと並んで出て来ます
姉妹は全員出てきたのを確認して満足げに微笑むと、それらを引き連れ歩き出しました
北からは、姉を先頭に騎士達が、ガッチャガッチャと大行進
西からは、妹を先頭に魔法使いが、フヨフヨフヨフヨと大行進
目指す先は町長さんのお家
玄関で深刻な顔をしている賢い男の子、やってくる騎士と魔法使いにもしや?と思い身構えています
先に着いたのは姉妹の姉でした
騎士達をバックに満面の笑みで賢い男の子へ話し掛けます
「プレゼントを持って来たわ、男の子なら権力に憧れるものよね?だから私のプレゼントは、あなたを王様にしてあげる事よ!」
なんということでしょう
女の子は男の子を王様にするために、今まで一人でお城を攻めていたのです!
もちろん男の子にプレゼントするので、誰にも怪我一つ負わせていません、無血革命(物理)でお城を手に入れたのです
これには賢い男の子もニッコリ(姉視線)
茫然自失にもう笑うしかないという感じです
姉も内心ガッツポーズです……ですがそうは妹が許しません
ポポポーーン、という音と共に騎士達はみんなカエルになってしまいました
姉が振り替えると、そこには杖を向ける魔法使いを引き連れた妹がいました
妹は姉を押し退けて賢い男の子の前に進みます
「私のプレゼントはお姉ちゃんより素敵ですよ、いつも本を読んでるあなたのために国中の本を持って来ました、それもただの本ではありません、魔法の本です!」
なんということでしょう
女の子は男の子の本を集めるために、魔法使い達の長になっていたのです!
もちろん男の子へのプレゼントですから、誰にも怪我一つ負わせていません、説得(物理)で魔法使い達の長になって本を集めたのです!
これには賢い男の子もニッコリ(妹視線)
引きつった笑顔で頭を抱えてしまいました
妹は確かな手応えを感じて内心ガッツポーズです……ですがそうは姉が許しません
姉が気合いを入れると、ポプンという音とともに騎士達の魔法が解け、カエルから人間へと戻りました
睨み合う騎士達と魔法使い達、周囲は魔力と闘気がぶつかり合いバチバチと火花が舞っています
事のなりゆきを見守っていた町の人々は大慌てします
今や二つの軍勢と姉妹の睨み会いだけで、周りの建物が崩れそうなのですから
どうにかして!という願いと共に視線が賢い男の子に集中します
さあ大変です
賢い男の子がさっさと止めないと、町は二人の喧嘩で廃墟になってしまいます
その冴え渡る叡智で二人を止めるのです!
賢い男の子は皆の視線を受けると、半ズボンのポケットから何かを取り出しました
それは金属で作られたスイッチのように見えます
男の子はスイッチを目の前にかざすと、意を決した表情で押しました
するとどうでしょう、姉妹とその配下を囲むように、ゴゴゴゴゴーと四つのパラボラアンテナが地面からせり出して来るではないですか!
アンテナはくるくると数回転すると、姉妹に照準を定めます
そしてバリバリバリバリー!と電磁ネットを照射しました
強力な電磁ネットに絡まれて、騎士や魔法使いはもちろん、姉妹も身動き出来なくなります
これには町の人々も太ももパーンして大喜びです、だって町が壊れる事もなく姉妹が怪我する事もなく、喧嘩を止められたのですから
実は、賢い男の子は予想していたのです
行方不明になった姉妹はどこへ行ったのだろう?あの町の力自慢すら勝てない姉妹が誘拐されたり、狼に食べられたりするのだろうかと?
否、絶対に否、あの姉妹は自分の意志で町から出て行き、プレゼントを持って必ず帰ってくる!
そしてその時はまた、どちらのプレゼントが喜ばれているかで喧嘩になる
そう予想した賢い男の子は、町中にトラップを仕掛けていたのです
それもただのトラップではありません、攻城兵器すら片手で振り回す姉妹に、力で対抗するのは愚の骨頂と、男の子が選んだのは、叡智の結晶科学のトラップでした
電磁ネットで動けなくなった姉妹に男の子は近寄ります、念のためにパラボラアンテナを追加で起動させるのも忘れていません、流石は賢い男の子です
男の子は姉妹の手を取ると、ニッコリと微笑みました
「二人とも最高のプレゼントをありがとう、是非とも二人には僕と結婚してほしい」
まさかの二人とも俺の嫁になれ宣言に、姉妹は驚きましたが、一も二もなく頷きました
こうして姉妹の喧嘩を収め、仲の良い姉妹に戻した賢い男の子は
三人で温かい家庭を築き、いつまでもいつまでも、科学と腕力と魔法で世界を牛耳りながら、幸せに暮らしましたとさ
めでたしめでたし
童話って度々物理法則無視しますよね




