3.【回想】師匠との出会い
今にして思えば、奴の力をもってすれば俺の免許証くらい偽造できただろう。
何せ俺の戸籍まで用意してたくらいだからな。
だから免許の取得が目的というよりも、運転技術の習得が目的だったのだろう。
だが、俺にとっても教習所に通っている期間は有意義なものだった。
この期間があったおかげで俺はこっちの世界の事をゆっくりと学習する事ができたのだ。
それに本音を言えば、こっちの世界の"自動車"という乗り物を運転できるようになる、というのも正直楽しかった。
そして、3ヶ月が過ぎた。
俺は大型自動車運転免許を取得し(学科試験は"例の上司"が裏工作した)、ある男と引き合わされた。
男の名は藤堂 保利。
正確な年齢は聞いてないが、おそらく50前後ってところだろう。
この男が俺の、こちらの世界での"師匠"となる男だった。
「俺は藤堂だ、よろしくな。敬語の必要は無い」
「あ、ああ、よろしく」
「さて、今日から俺がお前の面倒を見るように言われたんだが、最初の任務だ」
そう言って藤堂は一枚の写真を俺に差し出した。
写真には2~30代の女の顔が写っていた。
「この女の名前は天乃巣 来夢。まずはこの女の身辺調査をしろ」