16.溜め息の出る仕事
『次の仕事だ』
「はぁ………はい」
"声だけの上司"からの仕事の依頼はいつも突然。
そして断る事もできないので、せめてもの反抗心みたいなもので、大きな溜め息混じりに返事をする。
まぁ、愚痴っていても進まないので、まずは今回の標的を確認する。
瑞浪光介、19歳、大学生。
そこそこレベルの高い大学だが、どうやらここ1か月ほど大学に行っていないみたいだな。
まずはいつも通り、標的の身辺調査からだ。
そして行動パターンの分析をして、最終的に仕留めるまでのシミュレーションをして、実行に移す。
上司の依頼が来てから任務完了まで、早ければ2週間弱、長かった時は今までの最長で2か月というのもあった。
別に明確な期限が決められているわけでは無いが、あまり長期化するとこちらの精神的・肉体的に疲弊が溜まるので好ましく無い。
今回の標的、瑞浪光介を調査・監視し始めて3日目、俺は過去最長の仕事になるかもしれないと感じ始めた。
この男、ほとんど自宅のアパートから外出しないのである。
唯一の外出は、アパートから50メートルも離れていないコンビニのみ。
アパートからコンビニまでのルートは、俺の"商売道具"である大型トラックが通れない狭い路地。
「はぁ………どうしたもんかねぇ」