15.《第1章・余談》スライムの統率者、ライム
私の名前はライム。
年齢は10歳。
だけど2年くらい前に突然、前世の記憶が甦った。
前世の私は日本人の会社員で、29歳だった。
ただ、最期はどうして死んだのかだけは思い出せない。
病気だったのか、事故だったのか、それとも殺されたのか。
でも、そんな事は正直なところどうでもよかった。
何故なら、この世界での私はとっても充実しているからだ。
優しい両親、裕福という事は無いが安定した生活、平穏な日常。
そして………
『ぷりゅー、ぷりゅー』
「おはよう、ムーリン」
私にはたくさんのお友達がいる。
私の生まれた村は山に囲まれた土地で、人口が少ない。
私と歳の近い子供となると、私も含めて3人しかいない。
私以外の2人は男の子で、私も前世の内気な性格を引き継いでしまっているせいもあり、成長するにつれて遊び相手がいなくなってしまった。
だがそんな時、村の外れの森の中で、一匹のスライムと出会った。
最初はそれがスライムという生き物だとは知らなかったけど、近づいて触ってみたら私になついてくれた。
『ムーリン』と名付けたそのスライムと私はお友達となり、それから毎日一緒に遊ぶようになった。
ある日、ムーリンの事がお母さんに見つかり、お母さんは「スライムと遊んじゃだめ」って言ったけど、その時たまたま現れた野生の魔物からムーリンが私たちを守ってくれたの。
それ以来、お母さんもお父さんも私がムーリンと一緒に遊ぶ事を許してくれた。
さらに村の大人の人達も、最初は人間になつくスライムなんて珍しいと言ってたけど、最近はすっかり村の一員として仲良く接してくれている。
難しい話はよくわからないけど、普通のスライムには知能が無いので人間の言葉は理解できないし、人間になつくという事も無いのだそうだ。
このあたりの事情について判明するのはもう少し未来の話となるが、どうやら私の育てたスライムは異常に急成長するという、私の中にある無自覚の才能が影響していたらしい。
数年後、その私の"才能"が開花し、やがて私は『スライムの統率者』としてこの世界の歴史に名を残す事になるのだが、それはまだまだ先の話である。