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異世界転生トラック君のお仕事  作者: 真碑
第1章 異世界転生トラック君の初仕事
14/18

14.そして今の俺はトラック君

「ふあ~~~、よく寝た……」



 昨夜は久しぶりに10年前の……俺の初仕事の時の夢を見た。


 あれから10年。


 数えきれないくらいの"仕事"をこなしてきたが、やはり初めての仕事はいつまで経っても忘れる事ができない。


 天乃巣来夢(あまのすらいむ)の事は今でも時々夢に見る。


 彼女に限らずだが、俺が異世界に"送った"奴らが、どうか新たな世界で幸せに生きていてくれる事を願う。


 そうでなきゃあ、俺もこんな仕事やってらんねぇよ。


 久々に見た初仕事の夢を思い出しながらタバコに火をつけ、寝起きの一服。



「っふぅ~~~、あっ、そうだ、オヤッサン」



 タバコを吸って思い出した。


 この世界に来たばかりの俺に"仕事"のイロハを教えてくれた、藤堂(とうどう)のオヤッサン。


 タバコもオヤッサンから教えてもらったものの一つだ。


 立ち上がり、部屋の隅の仏壇の前へ行き、『チーン』と鳴らす。


 オヤッサンが亡くなってもう5年になる。



「えぇっと、線香は……と、あ、切れてるな」



 我ながらすっかりこの世界の習慣が身に付いたなと思う。


 別に仏教に入信したわけでは無いが、これがこっちの世界の作法なのだとすれば、それに(なら)うのが礼儀というものだ。


 礼儀に異世界とかどうとかは無い。



「仕方ない、線香が切れてるから今日はこれで勘弁してくれ」



 そう言いながら、俺の咥えていたタバコを線香の代わりに立てる。



「オヤッサンはこっちのほうが好きだろ?」



 一応これも俺流の礼儀のつもりだ。


 作法だけをガッチガチに守るだけが礼儀じゃない。


 そこに故人を(しの)ぶ心があるかどうかが重要なのだ。



「つっても、まぁ、故人の遺志(いし)を継いでない部分もあるがな。オヤッサンの()してたあのコードネーム。あれはどうしても俺の好みに合わなくてなぁ」



 そんなわけで結局、俺のコードネームは『トラック君』にした。


 意味も理屈も必要ない。


 俺の仕事は結局、トラックで人を()ね飛ばすだけだ。


 ならばシンプルなコレでいい。



「さてと、出かけるか。今日は新しい"仕事"が来ないといいなぁ」

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