表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生トラック君のお仕事  作者: 真碑
第1章 異世界転生トラック君の初仕事
13/18

13.【回想】最初の仕事、完了

「うぁ……ぐっ、いっ……てえ」



 全身の激痛に悶え苦しみながらのたうち回る大垣(おおがき)


 このクズ野郎の前まで来た俺は、しゃがみこんで髪を掴み、顔を向けさせる。



「ひぃっ!た、助けて……!」


「………………ふむ」



 クズの顔を見ながら、さて、どうしてやるのが一番いいだろうか?と思案する。


 怒りに任せてとりあえずコイツをトラックで撥ね飛ばしてやったが、その後の事までは考えていなかった。



「あのトラックはな、轢き殺した奴を異世界に転生させる魔法のトラックだ。だが、残念ながらお前は異世界転生者に選ばれていないんだ」


「…は?は、早く……き、救急車を……」



 ここでコイツを殺すのは簡単だ。


 ここは深夜の倉庫街、人通りは全く無い。


 目の前の海に投げ棄てるだけで楽に殺せる。


 だが、それだけではコイツへの制裁には足りない。



「……よし。じゃあ望み通り、命だけは助けてやろう」



 俺は左手に魔力を集め、クズ野郎の顔にかざす。



「我が名はトレイグ。我が魔力を(にえ)とし、()の者の記憶を奪え」


「うっ!?」



 俺が魔法をかけると、クズ野郎は意識を失い倒れた。


 ついでに全身の怪我も治してやる。


 目を覚ました時、この男はトラックに轢かれた事だけ忘れているだろう。


 だが、これで制裁が終わったわけでは無い。


 むしろ目を覚ましてからが制裁の始まりだ。



「さて、と」



 立ち上がり、クズ野郎を放置して帰ろうとした時、目の前に藤堂(とうどう)のオッサンが現れた。



「お前なぁ……勝手な事しやがって」


「言われた通り、標的(ターゲット)には接触してねぇよ。任務である天乃巣来夢(あまのすらいむ)を殺……処理した後の、俺のプライベートだ」


「それはただの屁理屈だろうが!」


「ガタガタうるせぇ!これくらいやれなきゃ、やってられるか!こんな仕事!」



 藤堂(とうどう)は「やれやれ」と首を振り、大きなため息をつく。


 すると……



『構わん。大目に見よう』


「!」



 この世界に連れてこられた初日以来の、例の"声だけの上司"だった。



『本人の言う通り"仕事"は問題なく達成したのだ。今後もその調子で頼む。だが、あまり必要以上にこの世界の人間に関わり過ぎるな』


「へいへい」



 それだけ言葉を交わすと、俺は自分のアパートへ帰っていった。




 翌朝テレビを点けると、昨夜の轢き逃げ事件がニュースで報道されていた。


 当然ながら逃亡したトラックの行方は不明。


 そしてもう一つ……。



『……死亡した天乃巣来夢(あまのすらいむ)さんですが、事故の少し前に勤務先の会社内で上司の男性から性的暴行を受けていたという事実がわかりました。天乃巣さんを暴行したのは大垣輝夫(おおがきてるお)容疑者47歳とみられており、大垣容疑者は天乃巣さんに残業の指示を出し、社内に人気(ひとけ)が無くなった頃合いを見計らい暴行に及んだ模様。犯行の一部始終が社内に数日前に設置されたばかりの防犯カメラに映っており、天乃巣さんの遺体からも大垣容疑者のものとみられる体液が検出され、現在DNA鑑定を進めています。今回の事故についても暴行を受けたショックによる自殺の可能性もあると見られており……』



 あのクズ野郎が社内の防犯カメラの位置を把握してない(はず)は無い。


 今回の証拠品の映像は俺たちが監視に使っていた盗撮カメラの映像だ。


 それを社内の人間の記憶も俺の魔法で少しだけ改竄し、新しく設置されたばかりの防犯カメラというように刷り込んだ。


 これで奴は社会的に抹殺されるだろう。


 あのクズ野郎が今後どうなるかなんて全く興味は無いが、俺が今、気になっている事は一つしか無い。


 異世界に転生されたはずの天乃巣来夢(あまのすらいむ)が今、幸せな人生を過ごせているかどうか。


 それだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ