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ゆめさんぽとフラジール  作者: ななし
5/5

真実とやりなおし

『真実と』




「……。」

世界は残酷だ。

いや、ここは夢の中と言ったほうがいいのか。

るかはかなりのショックを受けていた。

余がこの世界から抜け出すために、ゆめさんぽをはじめだした。

その頃るかも自分の正体に気づけていないようだったから、2人で探偵ごっこをしてはこの世界の摩訶不思議を解釈していくうちに。

余たちは気づいてしまったのだ。

「……この世界は、ゆめなのは変わりない。」

「……、」

「……るか。」

「私がっ!」

るかは泣きそうに立ち上がった。

「まさか、……私が、私がこの世界を作ってたなんて、っ知らなかった……っ!!」

そう。

るかは、ゆめの……悪夢の象徴だったのだ。

この世界を作ったのは彼女。

そう、ここはこの子の夢の中だった。

しかも皆が夢を見るのは、皆が悪夢を見るのは……るかの見ているこの夢の世界が全世界に影響してしまうほど大きなものになっていて、この世界によりそれぞれ悪夢を見るというものだということがわかった。

分かってしまったのだ。

「私のせいでっ、皆さんが悪夢を見て、苦しんでいるんですね……っ、わたしの、せいで、」

「…余は、……仕方の無いことだと思う。」

「何がですかっっ!?!?」

「るか、多分貴様はもう…リアルの世界では死んでいるのだ。」

るかの目は見開かれた。

そう、夢という概念が生まれたのはもっともっと大昔の話なのだ。

体がそんな長年保っていられるとは思えない。それがぬいぐるみではなく、人間だと言うなら尚更だ。

「魂が夢を見たままここをさまよっている。多分貴様が目を覚ませば…この世界は残ったまま貴様は死んでいなくなる。本当の魂の死を迎えるに違いない。」

「なんで、っ、……!」

なんでそんな事言うの……?

珍しくるかのその大きな瞳からはぼろぼろと涙を零していた。

頬の真っ黒なそれは涙に濡れているも黒が流れることは無かった。

そりゃあそうだ、るかは余と一緒にここを出てリアルで出会おうと約束をしたのだ。

それが、これだ。

「いや、やだっ、私っ……覚めたくない…!!」

「……るか。」

「ルーカスと一緒にいたいっ、お散歩してたい、死にたくない、!!」

地面にへたりこんで痛々しいほどその姿は小さく見えた。

「この世界が残るなら……っ、覚めなくてもいいですよね…っ?ルーカスも人形に戻っちゃうんですよねっ?じゃあもう、覚めなくてもっ」

「るか、」

思ったよりも低い声が出て余はびっくりした。それよりもるかがビクリと肩を震わせて何も喋らなくなってしまった。

なるべく優しい声を出すように心がけて喋る。

「……るか、ずっとここに囚われてなにが得があるというのだ。余と、貴様も、同じ場所に留まることで何も得ることは出来ない。」

「……。」

「確かに、余は貴様が気に入っている。話すのも歩くのも今じゃいい思い出だ。だが、……どうして、貴様がそんなに苦しむことはないはずだ。」

ずっとここに1人だったるか。

それはどれだけ寂しくて怖かっただろう。

周りに人がいたと言っても、まるでロボットのように何かを言い続けるだけ。

そこに余というぬいぐるみにその魂を費やすことは無いはずなのに。

「……。」

るかはすくり、と立ち上がった。

そしてその顔を見せる。

余は目を見開かせた。

頬の真っ黒なそれはなんとなくなっていた。

人として、かけ離れた証としてあったそれ。

しかし、るかは十字架を握りしめた。

「……ルーカスさん、私は、きっともう救われないんだと思うんですよ。」

「……。」

「でも、あなたが来てくれたおかげで確かに私は、生きてると思えたんです。」

だから。

「世界をやり直しましょう。」

「……、は?」

「また、巻き戻しましょうっ、きっと選択肢を間違えたんです!!」

るかの顔はあまりにも困惑していて、悲しいものに見えた。

余は焦った。

「また、また同じことを繰り返してどうなると言うんだ!!」

「だからっっ!!!」

「っ。」

「……だから、ルーカスさんが、見つけてくださいよ……、私たちが、幸せになる、選択肢を……っ!!」

世界が真っ白になっていく。

だめだ。

また同じ連鎖を繰り返してしまう。

「るかっ、おいやめろ、また貴様が傷つくだけだ!!!」

「なんとでも傷つけてください……っ、救えなかったルーカスさんも、助けてあげてください……!」

「おい、ま、っ、」


世界は真っ白になった。



─────

──


目が覚めた。

背中がなにかコンクートのようなものに触れていると感じた。




「余、は、なんじゃ、これは、っ」


そして周りを見渡して更に唖然とした。いつもの廃墟の中ではなく街灯の目立った街の中だった。


ついに自分はおかしくなったのか?まぁあんな廃墟に何十年もいれば当たり前だなと思っていたその時、「あれー?見ない顔ですね、誰ですかー?」と気の抜けた高い声が後ろで聞こえた。


振り返ってみると、そこには少女がいた。


白髪の変わった髪型に白い陶器のような肌、瞳が真っ黒で光の見えないそれは少し不気味に見え、両の頬には黒のペンキでべっとりと塗ったような黒の模様とは言い難いものが白い肌を染めていたが、どうやらそれは肌の1部でペンキで塗っているようではないらしい、と冷静に判断する。


背後にとてつもなく大きな十字架を華奢な体で軽々と持っているのを見る。



何だ、こいつは。


と、おもったけれど


見覚えのある、懐かしい、何かの雰囲気に胸が締め付けられた気がした。

けれど気のせいだ、と余はそれを無視した。





なぜか、似た光景を知っている。

────やりなおし。


頭の中で、何かが呟いた。

いきなりですが詳しく解説。

るか→簡単に言うとみんなの見る悪夢はこの子のせいだと言うことになります。先程のようにるかとルーカスはこの世界を何度も続けることでしょう。


つまり、皆さんから悪夢が消えることはこの先永遠にないということですね。

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