おはなし
「新入りですか?それとも不法侵入ですかー?」
ヘラヘラと笑っている少女になんだかやるせない気持ちになる。
何故こんなにも明るいテンションなんだ?
普通不法侵入をされたら、めちゃくちゃ警戒して武器やら警察やら呼ぶんじゃないのか?
とぬいぐるみだった頭にもその程度の知識はある。
こう見えても長年にして古びたぬいぐるみだったのだから。
「違う。余は何故か目覚めたらここにいたのじゃ。何じゃ貴様。誰だ。」
「初対面でそんな睨まないでくださいよー!私ですか!聞いちゃいますか!!んっふふ、聞いて驚いてください、ここは私の夢の世界なんですー!そして私はるか!!この世界の管理人です!!」
ドヤ顔とドヤ声でまるでひざまつけと言うような態度でこちらを見てくる。
夢の管理人?夢の世界だと?
なるほど頭がおかしいときたか。
これは厄介だな……。
呆れてため息が出た。その様子を見たるかと名乗った少女が唇をとんがらせる。貴方も自己紹介してくださいよー、というが生憎名前が無い。
「……。るーかす。余の名はるーかすじゃ。」
「ほおほお!るーかす!いい名前ですね!」
暫く考えて、るか、という名前の別の言い方からとったるーかすという名前。適当に答えたがある意味名前ができた大事な事だと思った。
るーかす。ルーカス。
自分の名前を覚えておこう。
ぬいぐるみだった時、自分の名前など覚えていなかったがここでの名前も大切になるだろう。
少し新鮮な気持ちになる。
「るか、余は家に帰りたい。ここが夢の世界ならば目を覚ましたい。どうすればいい?」
「えええ、来て早々悲しいこと言いますね!んー。人が侵入してきたのは初めてですから分かりませんねぇ!」
ケラケラ笑う少女。
だからなんでそんなに楽しそうなんだ。
余は真面目に聞いているんだぞ?
そう瞳で訴えかけてもケラケラと笑っている。
「……。」
なんだか目眩がしてきた。