沈黙
なし崩しとか絶対にさせない!
ここ百年とか戦ってる、しかも、何十万という犠牲を払っても勝てない相手に勇者~とか言って
祭り上げて何とか戦いを有利に進めたいというのが本心だろう・・・
だが!断る!!
無理だから!絶対に無理だから!
昨日まで庶民雑貨店812で働いてた俺が勇者とか
あり得ないから!!
でも、絶対に辞退させる気を相手から
微塵も寸毫も微動たりとも感じない・・・
困ったよーこのポンコツの王さまマジで困ったよー!
このままじゃ、終いには『機は熟した勇者よ!魔王を倒す冒険の旅に赴くのじゃ』とか言い出しかねぇー!!
何か言わねぇと・・・
「機は熟『・・・あの~ですね』者よ!」
・・・
ホラホラホラ危なかった~!
今、絶対にこの人なし崩す気満々だったよ!
もう人権もへったくれも無かったよ!
「なんじゃ、申してみよ」
「あの~ですね、まあ、仮にですよ?あくまで仮の話なんですが、その僕の横に本当の勇者が居たら、いや、あくまで仮定の話なんですが何を命じられるおつもり何でしょうか?触りだけで良いんで」
少し不服そうだが、納得して一つ咳払いし
改めて話始めた。
「勇者よ!お主に頼みがある、このドラクエアに巣食う異形の者共を、そして、それを束ねる魔王をそちに退治して欲しい、そし」
「無理無理無理無理無理無理無理だーて!無理だーて!そんなの無理だーて!」
「話は最後までちゃんと聞きなさいと学校で教わらなんだか!あと私語は厳禁とか!」
うわー、変質者と同じこと言ってるよ
このポンコツ!
「そして、拐われた我が王女ヘカテリナをどうか救い出して欲しい・・・なんじゃ、手を上げて?ゆうてみい」
「いや、絶対もう○○れてますよ!それどころかきっとですよ散々○○注ぎ込まれて肉○○にされて○○されてんじゃないすかねきっ」
まで言ったところで喉元に金属製の冷たさを感じた・・・
そして、その相手は僕だけにソッと囁いた。
「お兄さん、いや、勇者さんよ・・・あんまりこれ以上さ○○なこと言われると冒険じゃないところに旅に出て貰わねぇといけなくなるんだわ?分かるよね?」
さっきまで王さまの横に居た近衛が何時の間にか後ろから
ヤクザよろしくの殺し文句を仰られておいでだ。
ただ、切られないようにゆっくりと頷いた。
喉元の冷たいのでちょんちょんと合図してきた。
「オッオッオッオッオッ、オウジョサマハキットブジデスヨ」
そらドモるし!片言なるわ~!
命の危機を感じながらまともに喋れる訳がない!
喋り終えると冷たい感触が喉元から消えた。
「そうじゃ!ヘカテリナは絶対無事じゃ!」
まあ、親としては心配なのは分かるちょっと言い過ぎたと
反省する。
「王女様はどうして誘拐されたのですか?」
素朴な疑問をぶつけてみた。
ふうとため息を着いてから、王さまは沈痛な面持ちで話始めた。
「わからぬ、わからぬのだ、だが、あれはそう3年前・・・」
「いや、それ絶対に○○れて絶対に○○さ」
また冷たい物が喉元に当たる・・・
「勇者さん、ダメだよー?話は最後まで聞かないと~」
無言で頷く
お願いだからその物騒なの仕舞って下さい
お願いします!
願いが通じたのか冷たい感触が喉元から離れたのを感じる。
「ヘカテリナは生きてる!あの子は絶対に生きてるの~!」
「そうですね、生きてると思いますよ!ところで何歳なんですか?ヘカテリナ王女は?」
「あの当時はまだ弱冠26歳でまだ右も左も分からぬ小娘を拐うという卑劣極まりない奴等じゃ!」
全然、弱冠じゃないし、というか、もう29歳じゃん!適齢期真っ只中だし、左右も分かるし、分別も分かる
どちらかと言えばこのポンコツに愛想尽かせて家出した・・・
いや、自立の道を選んだとしか言いようがない
多分だが、生きてると推察されるが、話が面倒になるので
「おいたわしや!王さまは何と不幸な境遇か!」
と調子を合わせた。
「おお、察してくれるか、いや、だが、一番不幸なのは儂ではなくヘカテリナよ!あの子の心の苦しみを考えるだけでこの胸が張り裂けんばかりだ」
良くわかってるじゃないか、一番不幸なのは心の苦しみを全く理解しようとしないポンコツの娘に産まれてしまった事だがな!
悲しそう表情を全力演技力で
「このような時は人海戦術が一番でございます、街の人間総出で手分けして探しましょう!どうぞ、御触れを公布なさって下さい今から帰って参加する準備をしてまいります!これにてごめん!」
と言って逃げようとしたら、喉元がまた冷たくなりした・・・