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王様と勇者くん  作者: 鈴澄泪
19/19

終焉

煌々と燃える炎を前に二人は安心していた。

勝利に陶酔し、戦っている時の高揚感は何処かに

消えつつあった・・・


炎の奥から人形が見えたかと思うと炎を一閃

中から2メートルを超える筋骨隆々のゴブリンが姿を現した。

手には炎を薙いだ得物が握られている。

その得物は剣と言うよりは鉄の板の様な幅と厚みを持っている、斬ると言うよりへし折る為の武器なのは一目瞭然なのは疑い無かった。

二人はこのゴブリンがこの洞窟の主であることに

気が付くまで時間が掛かってしまった。

完全に虚を突かれた形となった。

いきなりの跳躍で距離を詰められ呆然する二人目掛けて得物を横に薙いだ。

「危ない!」

そう言って二人を蹴り飛ばしナオミが邪魔に入ったが、変わりにその反動で宙に浮いたナオミがゴブリンの一撃の餌食になる。

手甲でガードするがそのまま吹き飛ばされ木に激突する。

物凄い勢いで背中から木に激突したナオミはガハッ!と口から血が吹き出す。

ナオミに救われた二人は我に返り助かったと思うと同時にナオミが重症を負ったのを理解した。

二人は立ち上がり、ナオミを守る為に駆け出した。

咄嗟に取った行動で策が有るわけでもない

ただ、自分達を守る為に我が身を犠牲にしてくれたナオミを守りたい一心からの行動で勇治はショートソードを亮は魔法の杖を構えてゴブリンに立ち塞がった。

「オラアアアア!」

ナオミに止めを刺そうと悠然と歩くゴブリンに奇声を上げ立ち向かう

ゴブリンは得物を横に一振りで二人は吹き飛ばされた。

勇治はなんとか体勢を整えたが、亮は木にぶつかり気を失ったようだ。

明らかに格上の敵、まともに力で立ち向かっても叶わない

そうだ、ショートソードを仕舞い格闘戦の構えを取る

「カウンターレディー」発動!!

深いトランクス状態、恐怖に打ち勝とうと集中力を極限まで高める。

先程までパチパチと聴こえていた木の燃える音も風の音も

一切が聴こえず静寂の中に相手と自分だけしか見えなくなる。

相手の動きすらゆっくりに見える、得物を大きく振りかぶり脳天目掛けて振り下ろしてくるが・・・

見える、寸前で交わして顔面に正拳突きを喰らわせる!

どうだ!ナオミからコピーしたカウンターレディーの威力は!

が、効いてない、バカな!

距離を取りもう一度深いトランクス状態に入る。

袈裟斬りに振り下ろされた得物を交わして全力のカウンターを放った!!

顔面にモロに入ったはず・・・が、効いてない

離れてトランクス状態に入るが、恐怖感が勝ってきたのか

相手の攻撃が前より早く見える。

交わすのも段々と余裕がなくなってくる、踏み込みが浅くなり反撃しても威力がなくなり、終いには力にものを言わせて吹き飛ばされた。

初めから無かった自信はどんどんと失われカウンターレディーその物を発動出来なくなってしまった。

恐怖に押し潰されそうになった時に怒声が聴こえてきた。

「臆するな!勇治!君は格闘家ではない!剣士と言うことを忘れるな!」

ナオミは傷付いた身体で勇治に檄をとばす。

「こうなったら自棄だ」

そう気持ちが切り替わった瞬間に取った行動は

ショートソードと木刀で二刀流だった。

相手の得物をいなしては腕を打ち、またいなしては打つが相手の得物の威力を味わっているだけに恐怖とまた馴れない片手剣では浅くなる。

ゴブリンの攻撃をいなして反撃しようとしたら、奴は勇治の攻撃を読んでいた!

横に一振りすると見せ掛けて肩でタックルしてきた!

しまった!!

勢い良く吹っ飛ばされる!!

アゴを突き上げられ意識が飛びそうになる。

甘かった、相手も命懸けなのになんでこんな消極的な行動を取ったのか!!


こんな死に方で良いのか?


本当にやっりきったか?


・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・


・・・まだだ!まだ出し切ってない!!


何かが身体の中で弾けた。

ゆっくりと立ち上がり、格闘戦の構えを取るが剣と木刀を持ったままで刃を下に向けた状態で握り構えた。

何故そうしたのか本人も分からないがただ、構え易かったと言うのもあるだろう。

「スキルカウンターレディー発動!!」

高まっていた戦いへの高揚感は反転するかの様に静まり

深いトランス状態へ移行した。

相手の攻撃がスローモーションの様に見えるのは集中力の高さだろう、横に一振りしようとするのが手に取る様に分かる。

それを木刀と腕で受け、その反動を利用して身体をその場で回転させる。

そのまま、威力を借りてゴブリンの脇腹にショートソードを突き立てた!

先程とは違い相手の身体に深く突き刺さる感触が伝わってくる。

これには流石にボスゴブリンも絶叫を上げる。

直ぐに剣を抜き前転して相手との距離を取り、また構え直した。

ボスゴブリンは怒りに任せて真っ直ぐ突進してくる!

そして、勇治の脳天目掛けて一直線に得物を振り下ろした。

勇治は横に吹き飛ばされる!

「勇治!!」

見ていたナオミが思わず声を上げた!

だが、ゆっくり立ち上がった勇治はぴんぴんしている

それより、ボスゴブリンの右手が有らぬ方向を向いて腫れ上がっていた、それだけではなく頬も切られ血が滴っていた。

「何が起こった・・・」

無理も無いだろうそれは正に一瞬の出来事だった。

勇治は実に沈着冷静そのものだった。

相手の手首の弱い部分を振り下ろす力を利用して上へ打ち据えた、その反動で宙に舞い上がり回転して頬を斬りつけ蹴りを入れて距離を取った。

万全の状態ならナオミでも見えただろうが、ダメージを負った状態では見切れない程の早業だった。

「カウンターレディー改とでも言えば良いのか、恐ろしい技を編み出したものだ・・・」

流石のナオミも思わず呟いてしまった。


先程とは立場が逆転した。

ボスゴブリンは痛みに顔を歪ませ左手で得物を掴む

そして、折られた右手は使用を諦めダラリと下ろしていた。

勇治は静に喜ぶでもなく興奮するでもなくただ、ボスゴブリンを見詰めていた。

相手は警戒し勇治の周りをゆっくりと回り隙を伺っている。

しかし、目では追うが身体はピクリとも反応しない

後方に回り込み勇治の後頭部目掛けて振り下ろすが避けるどころか勇治はボスゴブリンの懐に入り自分の肩を支点にしボスゴブリンの左肘の関節を決めてから投げ飛ばした。

地面に叩き付けられたボスゴブリンは痛みに絶叫を上げる

「チェックメイトだ、悪く思うな」

そう言ってボスゴブリンの口から喉へショートソード突き立てた!

声にならない断末魔と血飛沫を上げてボスゴブリンは絶命した。

「やったー!」

「勇治良くやった!」

二人が駆け寄り声を掛けたが既に勇治は意識は無かった。

だが、二人に取って貴重な実戦経験になったことは間違い無かった。



全員ボロボロになりながら王都に戻ったのはそれから5日後だった。

3人で修行の打ち上げとゴブリンの巣から持ち帰ったお宝を分配する為に晩御飯を食べに来ていた。

「修行も無事に終え、そして、ゴブリンの巣を攻略お疲れ様でした!乾杯!」

ナオミの音頭で3人はエールで乾杯した。

「二人とも私が見込んだ通りに本当に最後までやり切ったわ!」

ナオミは感慨深い表情でそう言った。

「嘘つけ!お前あんなに強いボスゴブリンが居るなんて絶対に思ってなかったろ?」

勇治は命懸けで倒したボスゴブリンが誰にでも倒せるとは思えなかったし、あの勝利はまぐれとしか言いようがないと本人も自覚していた。

「そそそそそんなことないわよ!あの程度のゴブリンなら倒す冒険者なんて掃いて捨てる程居るわよ!」

ナオミの悪い癖が出た、どうも図星をだとドモル癖が有るようだ。

二人は動揺具合に氷よりも冷たい視線を向けずには要られなかった・・・。


そんなこんなで宴もたけなわとなりお宝の分配の話となる。

「えーとあの洞窟に有った売れそうな武器や防具、また宝石類などを全てゴールドに換金しました!ハイ拍手!」

パチパチパチと盛り上がる。

「それで合計金額ですが、なんと!」

「「なんと~‼」」

「170万ゴールドになりました~‼ハイ拍手!!」

うおおおおおおお

が、3人で割りきれない・・・

「とりあえず、均等に割って一人56万6666ゴールドと言うことですね!」

亮は眼をキラキラさせて素早く計算した。

「「ちょっと待った!」」

と、いきなりナオミと勇治が異を唱える。

何処から持ち出したのかいつの間にかナオミは眼鏡を掛けていた。

「言わせていただきますが、今回の利益に大きく貢献したのは私が立派な冒険者に育て上げたのが大きくやはりですね私がもう少し必要経費をいただくのは当然であろうかと」

「いやいや、姉さんそれは可笑しいわ」

こちらもいつの間に用意したのかパイプをくわえながら

眼鏡を掛けて聞きなれない方言で話はじめた。

「あんさん修行出る時に薬草と食料ぎょーさんワイのオゼオゼで買い込みましたやん?それにワイがあのボスを倒さなんだらこの宴もワヤでっせ?ここまで言うたらワイの取り分はもう決まった様なもんでしゃろ?なあナオミはん?」

うぐっ!とナオミは声にならない声を上げた。

勝ち誇った顔をした勇治は70万ゴールドを持っていこうと手を伸ばしたが、横からひょいと全額入った袋を持ち上げる者が表れた。

3人が誰?となった。

「このお金は僕が預からせていただきます」

艶々とした金色の髪が眉上にかかり眼鏡が利発そうなのは直ぐに伝わったが、年端もいかない子供がこんな時間にそして、お金を預かると言い出した。

「まてまてまて、君は誰?あと両親はどこかな?」

勇治はこの若いがくそ生意気そうな若者に食って掛かった。

若者は懐から一枚の書簡を取り出して投げて渡した。

書簡の蝋封には王家の印が押してあった。

嫌な予感しかしない、封を解き読み始める。

『この者、神のお告げを受けし者、オスカー・エミール司祭は勇者の参謀として派遣する、この者の助言は王の命令と同等で有るものをここに保証するものである』

中にはそう書かれていた。

あのポンコツ!!

勇治は立ち上がりエミールの頭を撫でて囁いた。

「あのねボクちゃん、ガキの使いじゃないからね、はい、そうですかと大金を渡す訳にいかないんだよ?わかる?」

と言おうとすると喉辺りに懐かしい冷たい感触が当たる。

「うわ~、久々に感じたわこの恐怖感」

勇治!とナオミと亮が言った時には既に後ろを取られて

刃物を喉元に突き付けられていた。

「あのー一応そうゆう対応をされるのは予想してました、ですので暗部の方には逆らわない方が身のためですよ?あと言って置きますがこの程度のお金をあなた方が手にしたところでどうせ浪費して直ぐに無くすだけです、ですので私が預かります、必要経費をちゃんと申請して頂ければ審査してお出しします、良いですね?」

「何が必要経費だー!ふざけるな自分の稼いだ金ぐらい好きに」

「勇治さん、止めといた方が良いですよ!オスカー・エミールと言えば若冠14歳にして教会の最年少司祭で天才の名を欲しいままにしている有名人ですよ?」

表情を全く変えることなくエミールは指で眼鏡を押し上げる。

「お姉さん良く僕のことを知ってますね?そうですそのエミールです、あと別に勇治さんに好きで使えるつもりもありません、お告げと言う名の脅しさえ無ければ貴方に時間を割くより本を読んでる方が有意義な時間になるというものを・・・あの変質者め」

ん?最後の変質者と言う言葉になんとなく心当たりが有った。

「なんだ?お前もゼウスに会ったのか?」

「ええ、貴方をバックアップしろとしなければ寿命を縮めるとも言ってきましたよ、あの変質者!」

またアイツの仕業か・・・

しかし、教会きっての天才司祭が仲間になるのはありがたい

これで戦いは楽になる。

「お互い大変だな!まあ、回復出来る仲間が加わるのは願ったりだ!」

「出来ませんよ?回復」

ええええええええぇぇぇぇぇ

「私は産まれてこの方、街の外に出たことありませんから、回復魔法は全然習得してません」

まあ、それはそうなるよね!

「じゃ、何が出来るんだよ?」

「登記簿とか財務管理あと確定申告などが得意です、弁護資格も持ってますね」

と自信たっぷりに言う。

また変な奴がきた・・・

どうやら、まだまだこの冒険は終わりそうにない。


次に続く

なんとかここまで書き終えることが出来ました。

ここまで読んでいただい方に感謝です。

小説は学生時代にちょこちょこ書いてまして

仕事し始めてからも書いてはいたのですが

途中から書くことを止めてました。

まあ、才能がないと思ったのが一番デカかったと思います。

しかし、歳を取り好きな話をまた書いてみたいと

ついつい、また思い始めましたが題材が思い浮かばなかった

のですが、ラノベを読んでこうゆう世界観は嫌いじゃないと

思い空想していると勇者になりたくないと言う冗談みたいな

設定は面白いんじゃねぇ?とか思ってしまった訳です。

そうなると勇者に絶対にしたいという思惑の人物像を考えて

頭の中でコントをさせて遊んでました。

せっかくだしちょっと書いてみよう的な感じで書き始めたら

まあ、キャラが僕の頭の中で動きまくる動きまくる。

久々に楽しくなってしまいました。

もっと細かい表現を入れないと伝わり辛いと思いながら

書き進めてしまいました。

本当に申し訳ありません。

次からはもうちょっと細かく細部まで描きたいと思います。

一応、このお話はセカンド・サードくらいまで頭の中では進んでおります。

ただ、仕事をしてますので

忙しくなるとスピードダウンしがちになると思いますが

勇治のこれからの変化を楽しみにして読んでいただけたなら

作者として幸です。

また、小説を書く場所を与えていただけた

サイト様と読んでいただける読者様に厚く御礼を申し上げます。

ありがとうございました。


鈴澄 泪

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