アイドルは別の顔
カウンターのお姉さんの企てにまんまと引っ掛かり、職業遊び人の亮くんとパーティーを組む約束をした勇者くん
彼の冒険はまだ始まらない
昨日、ついつい場の空気に流され
亮くん(職業遊び人)とパーティーを組むと
断言してしまったが、朝起きてから
後悔の念に苛まれています。
「しまったー!流されたー!また流されてもーたー!」
冒険者御用達の安宿屋のベッドの上でゴロゴロと転がりながら後悔している。
大事な旅にアイドル連れて行くとかアホかアホなのか!?もっと連れていくべき技能の持ち主が探せばいるだろうに、なんか盛り上がってついつい出来心で言っちゃったけど
どうしょう、断ろうか?
しばらく考え込んで
「そうだ!面接をしよう!お互い命を預けるのだから面接ぐらいは必要だろう!そうだ!そうしよう!」
かくして、トリカブトへ
「いらっしゃいませ!ようこそトリカブトへ!」
ウェイトレスのお姉さんの爽やかな笑顔とは裏腹に僕は重苦しい気持ちで
奥の冒険者斡旋カウンターへ向かう。
時間も早いせいか冒険者が沢山集まっていた。
カウンターの列に並び順番を待つ間も言い訳を色々考えていた。
自分の番になり、カウンターの中を覗くと昨日のお姉さんだった・・・
周囲を確認してたから
「あの~、実はですね、亮くんと組む前に面接試験をしたいんですが?」
お姉さんは笑顔を保ったまま、手にしていたペンを音が聴こえる勢いで握り潰し
「何故ですか~?」
と優しい口調でそう言った。
殺される!
「いや、その、パーティーを組む前に彼の実力が見たいと申しますかなんと申しますか」
シドロモドロで適当なことを言ってしまった。
後ろから袖を引っ張られるが、今は忙しいので振りほどく
「決して彼が嫌とかそんな」
また、後ろから袖を引っ張られる。
なんだよ、取り込み中だ!そう思って振りほどく
「遊び人たから組みたくないとかそんな事では」
ポンポンと肩を叩かれる。
こっちは命の瀬戸際なのだ!誰だと思い振り替える。
自分より小さな、ローブを着た冒険者が立っていた。
「遊び人はお嫌いですか?」
声は若い女性の様だ。
「別に嫌いと言う訳じゃなくて」
なんだ、この女、人の話聞いてたのか?
杖にしてはちょっとファンシーな感じで、ローブの隙間から
ピンクの髪がのぞいている。
身長は自分より小さく156cm位だろうか?
「責めて魔法の一つでも使えたら即採用なんだが・・・」
ふふふっ
すると、カウンターのお姉さんが不敵な笑みを称えている。
「ですって!亮くん・・・いや、亮子さん」
意味が分からん?
振り返りローブの女の子を見ると、ゆっくりとフードの部分に手を掛け顔を顕にした。
ショートカットの美少女は眼をキラキラさせながら
自分を見据える。
いや、この眼見覚えがある!!
「もしかして、亮・・・くん?」
相手はコクりと頷いた。
お昼休み
人通りを避けて路地裏に集まる。
お姉さんと自分、そして、亮くんだ。
「説明します!彼女・・・基!彼にはユニークスキルがあるの
そのスキルはある代償と引き換えに職業に関係無く魔法が使える、いや、魔法使いになれるの!」
「おお!素晴らしい!職業関係無く!つまり、戦士で有りながら魔法が使えたりするってこと?」
こんな無双なスキルを持っているだなんて!
天は二物を与えずとはウソっぱちじゃないか!!
でも、代償?こんなチートなスキルの代償となると
相当な代償では無いのだろうか?
「このスキルを持って産まれた人は何人か居たけど、行使した人は聞いたことがないの、なぜなら、このスキルには致命的な欠陥があるの!それは・・・」
それは・・・
「このスキルを行使するとたちまち、どんな屈強な男であってもフリフリの魔法使いの衣装に変身し、しかも、変身途中は局部白い光で隠れるけど、保々全裸を見られてしまう恐ろしいスキルなの!その名もスキル名『魔法少女』!!!!」
恐ろしい!!
「筋骨ムキムキのおっさんがフリフリの衣装に変身させられるだけではなく途中の変身シーンも回りに見られるなんて!!
そら行使されないし、伝え聞かないわ!俺なら絶対に行使したくない!」
うっうっ・・・
あ、亮くんが泣いてる
いや、メッチャ可愛いから凄く罪悪感です!
「私も、本当はこんな力になんか頼りたくないんです!もっと男らしく戦いたい・・・でも、遊び人じゃ、誰もパーティーに入れてくれないんです!」
切実!切実過ぎる!!
「どうして、そんなに冒険したいの?」
泣きじゃくりながら、ゆっくりゆっくり話始める。
「昔聞いた話なのですが、遊び人でも、あるレベルに達して転職すると凄い職業になれると伝えを聞きまして、転職する為に転職所に行きたいのです、そして、父のような男らしい冒険者として活躍したいのです!」
志が高い!脅されて流されて勇者にされた自分が恥ずかしくなるくらい志が高い!でも、男の娘にしか見えない!
「ご両親は・・・」
伏し目がちに絞り出す様に亮くんは
「・・・二人とも亡くなりました」
あぁ!聞いたらあかんこと聞いてもうた!
もう引き返せない!断るとかもう出来ない!
・・・
「分かりましたパーティーを組みましょう」
それを聞いてお姉さんと亮くん、グッジョブ!サインを送りあっていたのは僕は知らない・・・