日曜日のパンケーキ
「じゃあ、行ってくるから。」
彼はそう言って、いそいそと出かけて行った。
私はベッドの中で、彼の言葉が聞こえないふりをする。
「ふ~んだ。お土産買ってこなかったら、ぶっ殺すから。」
私は枕に怒りをぶつけた。
いつもの日曜日なら、昼前までうだうだしているくせに
こんな日にかぎって早起きして出かけるんだから
まったく調子がいい。
昨夜の会話を思い出し、怒りが再燃焼する。
確かに世間でいう夫婦じゃないし、正確には同棲ではなくて
シェアハウスの同じ住人だけどさ。
こんな若くて綺麗な彼女を置き去りにして、
撮影会のモデルの元へ走るなんてどうよ。
「 お互い、生活に干渉しないのが条件だったし、
君だってジャニーズのおっかけじゃないか。
まあ、君がおっかけやめるって言うんだったら、
僕だって撮影会やめるけどね。」
私がおっかけをやめるはずがないと思って言うところが
まったく憎たらしい。
「結婚してくれたら、ジャニーズのおっかけをやめる。」
よっぽど言ってやろと思ったけど、女のプライドが許さない。
正直、そんなこと言ったら彼が出ていく不安もある。
このままの関係が良いのかもしれない・・・・・。
あ~、まったく、イライラする。
私はベッドから起きると洗面所に向かってから
共同キッチンに行った。
「うっひょお~」
私は思わず、歓声をあげた。
私の大好きなパンケーキが用意されているではないか。
朝早く、キッチンでごそごそやっていると思ったら、
こういうことだったのか。
「こんなことぐらいでごまかされないぞ。」
私はフォークでパンケーキを突き刺し、
口に詰め込んだ。
「うまっ」
悔しいけど、美味しい。
どこかの有名なお店のハチミツに感動すら覚える。
正直、私が作るより数段上手だ。
私は、あっという間にたいらげ、コーヒーを飲みながら、
考えた。
このままベッドの潜り込もうかなあって思ったけど、
急に美容院に行きたくなった。
私は行きつけの美容院に電話するのであった。