トリプルアクセル
凛と公園で別れてから3時間ほどした午後9時。
一人暮らしを始めて3日で自炊を諦めた良は家でご飯だけを炊き、冷凍食品を暖めて簡単に晩ご飯を7時頃すませた。それからテーブルの上にスマホを置き、凛からのメールを待ち続けてはや2時間が経とうとしてる。
気休めでテレビをつけてはいるがその内容が良の耳に届くことはない。
メールまだかなぁ? 疲れて寝ちゃったのかなぁ? てか俺が送ったメールちゃんと届いたよな? エラーで帰ってきてないから大丈夫か
あーダメだ! 気になって仕方ない! とりあえずゲームでもやって気張らそう
俺はbattle worldという戦争のゲームをやり始めた。
これはオンラインで同じゲームをやっている世界中の人と対戦出来るものだ。
武器をカスタマイズし、出撃する。
「いざ、戦場へ。俺のFPSゲームの上手さを世界に教えてやる」
俺が操作するキャラクターがビルの柱に隠れ、敵がいるだろう方向を覗き見ると、敵が一人こっちに向かって走ってくるのが見えた。
向こうはこちらに気付いていない。
チャンスだ!一気に飛び出してハチの巣にしてやる!
俺は柱から飛び出し敵に向かい銃を乱射した。
そして10分後
「うっわ、一回10分のゲームで3人倒して123回死んだ!」
ベットに腰掛けていた俺はコントローラーを投げ出しベットに倒れこむ。
(プーニョプーニョプニョゲヘヘヘヘ♪)
天井を見つめ自分の下手さに萎えていると、テーブルに置いてあったスマホが短く3回ほど振動しながらメールの着信音を鳴らした。
俺はベットから慌てて手を伸ばす。
「いて!」
届きそうで届かない状態で手を伸ばしているとベットから頭から落ちた。頭をさすりながらスマホを手に取り、メールの受信相手を見る。液晶の画面には新垣凛の文字が。その名前を見て思わず笑みがこぼれた。
[こんばんは。凛です。返事遅くなってごめんね。あと今日は2時間も待たせてほんとごめんなさい。でも待っててくれてほんと嬉しかった! ありがとう。じゃあオススメの曲送るね! いっぱいあって何送ろうか迷ったんだけど、とりあえず私のホントに好きな3曲を送ります。もし聴いてくれて、気に入ったらもっと教えるから言ってね! 良ければ感想待ってます。
re:pulas neverlasting truth https://www.yautune.・・・・・・・
Ludovico Nimaudi euvole bianche https://・・・・
yaruma river flowers in me https・・・・・]
そこには3曲分の作曲者の名前と曲名、そしてyautneのURLまで載っていた。
待っててくれて嬉しかったって......そう言ってもらえるとスゲー嬉しい! 待っててよかったぁ......。てか凛からまた会いたいって言ってくれたり、待っててくれて嬉しかったって言ってくれるってことは、俺のこと......いや! この早とちりで今まで何回痛い目を見たことか!! 思い出せ良! 中学の頃同じ教室の女の子と10分間に偶然3回くらい目があっただけで
「あいつ俺にホレてるな、ちょっと梨汁ブシャァァァァァァァアア状態にしてくるわ。お前ら見てろよ」
ってカッコつけて友達に言って、休み時間にテニスラケット2本持ってその子の前に行き
「あのさ.....俺と二人で....夜のダブルスしない?」
って言ってたらその子は一瞬キョトンとした後、ラケット1本奪って盛大に振りかぶり、フルスイングしてきて俺はトリプルアクセルかましながら机なぎ倒してぶっ飛んだだろ!!
その後女子からは変態テニスマンって呼ばれて体育の授業でラケット持つたび笑われただろうが!!
あれ....思い出したらなぜか涙が....
とりあえず早とちりはやめて、送ってくれた曲を聴こう。
てかURLまで載せてくれて、ほんとなんでも出来るんだな!きっとこれを凛に言ったらそうでしょ?なんでも出来るんだからって自慢げに言いそうな気がする
俺はそう思い、微笑みながら一番上にあった曲のURLにタップした。
yautneにとび曲が流れ始める。
ザザー.....ザザー....
その曲は波の音から始まり、頭の中には砂浜から海を見てる光景が広がった。
そして波の音をバックにメインのピアノの単音が流れ始める。