着信
「......聞こえた?」
凛は頬を赤く染めて聞いてくる。
お腹に手をあてて恥かしがってる凛かわいいなぁ
でもここはジェントルマンに聞こえないって言った方が凛は恥ずかしくないかな?
「いや、聞こえ(くぅ~)」
またもや凛のお腹から可愛らしい音がする。
「.....」
「.....」
ダスティ「フルフルフル」
「......うぅ......恥ずかしい」
「あはは......お昼食べてないだもん、鳴っちゃうよね!」
もう6時だ、お昼食べてないならお腹なってしょうがないよな
お昼食べた俺でもお腹減ってきたもん
パンとかあったらあげたいけど、今なにも持ってないんだよな......
「あ、盲学校は(パーパーパーパーパパーパーパパー♪)」
凛が恥ずかしさを隠すように盲学校の説明をしようとすると、いつぞやのやる気のないダー〇・ベイダーの曲が流れだす。
「あ、お兄ちゃんだ。ちょっと電話に出ていい?」
「どうぞどうぞ」
凛はありがとうと言って電話に出る。
この着信音克也さんなんだ、ある意味イメージピッタリかも
「は(りーーーんちゃーーーん!!!! お買い物まだーーー??)」
凛がはいという前に克也の声が凛の携帯から漏れ出す。
その大きい声に右耳に携帯をあてていた凛の頭は一気に左に傾いた。
「お兄ちゃん声大きいよ!」
(だっていつもならもう帰ってきてもいい時間だから心配でさー!!)
克也さんの声大きくて相変わらず漏れてるな......てか前俺と話した時と口調違いすぎ....ほんとに同じ人?
「あ、ごめんね! あと30分ぐらいしたら帰るから!」
(あと30分!? あと30分もかかr)
ブツ...
凛は克也のセリフを最後まで聞かずに電話を切った。
「ごめんね、お兄ちゃんが心配症で」
「いやいや大丈夫だよ! てか時間大丈夫? 何かあるみたいだけど」
「うん、あ、でも(パーパーパーパーパパーパーパパー♪)」
「........」
「........」
またあのやる気のない曲が流れだす。
「ごめんね....」
「いや、気にしないで」
「はい」
凛は再び電話に出る。
(りんちゃーーーーん!!! ごめん玉ねぎも一つ買ってきてー!!!)
「うん、わかった。他には?」
(牛乳と、麦茶のパックと、りんちゃんの愛じょ)
ブツ...
「......ごめんね、何の話してたっけ?」
「えっと、盲学校の話」
「あ! そうだ! 盲学校では(パーパーパーパーパパーパーパパー♪)」
「......」
「......」
「ほんとごめんね......」
「や、気にしないで」
俺は苦笑いで言った。
凛は眉間にしわを寄せながらもう一度電話に出る。
「はい......」
(りんちゃーーーーーん!!!! 大事なこと言い忘れてた!! りんちゃんの女の子の日の道具が)
ブツ....
「....」
「....」
「ダスティ、お兄ちゃんが寂しいみたいだから後で相手してあげれる?」
ダスティ「バウ!」
「よし、いいこいいこ.......ふふふ(くぅ~)」
凛は優しく微笑みながら、お腹が鳴ることも気にせずその黒い頭を撫でている。
あれ......なんでだろ?いつもなら可愛くて、すごい絵になる光景がなぜか物凄く怖く見える......
「りょう」
「は、はい!」
恐怖のあまりなぜか敬語になる。
「ちょっと今日は用事があるから帰るね?」
「う、うん! 気を付けてね!」
「ん、ありがとう、家帰ったらメールするね」
そう言って優しく微笑む凛はいつもの可愛い凛の笑顔だ。
先ほどの恐怖はどこえやら、俺はその優しい笑顔を見てまた幸せな気持ちになる。
「うん、楽しみに待ってる!」
「じゃあまた」
「じゃあね!」
「ダスティ、go.ふふふ......」
そう言うと凛はダスティとともに帰路を歩きだした。
やっぱちょっと怖いかも......
俺はそう思いながらその背中が見えなくなるまで見送った後、凛に名前を呼ばれたこと、メールアドレスを知れたこと、お腹が鳴って恥ずかしがる凛を思い出してニヤニヤしながら家に帰った。