幼馴染みを振り向かせる
あらすじにも書きましたが、特訓として書いてます。
読んでもらえる方が面白いと思ってもらえれば、幸いです。
それではどうぞ。
葛秀こと俺には幼馴染みがいる。親同士の仲が良く、幼児の頃から顔を知っていたらしい。幼い頃の話であるから記憶は曖昧であるが、これは母親に聞いた話だから、間違いないのだろう。
そんな女の子が居れば、知らず知らずの内に彼女に好意を頂いてしまうのも納得がいくことだと思う。
そこにはいるのが当たり前で、毎日顔を会わせるのも当たり前で、必ず話すのも当たり前で、全てが当たり前のように行われる。日常の1ページなのだ。彼女との事が。
"正義の味方"に憧れた。ヒーローは格好いいと思っていた。正義の味方になりたいと思った。だけど、それは一人には限界があった。幼い頃の俺がそんなことを考えていたのかは分からない。でも彼女の前では何時も正義の味方と言う名のヒーローを語り、自分が思う正義の味方の格好をし、一番格好いいと思う登場の仕方をしていた。今思えば、恥ずかしい。だけど、あれが俺だった。
何をするにも、正義の味方という視点で行動をした。
誰かが虐められていた時はその子を守り、虐めていた子を悪役と言う名の"敵"と見なして、正義の味方らしく追い返したり、退治したりした。
それだけではなく、町を大切にすることが正義の味方の第1条件と見なして、町のゴミ集めなどの清掃も行ったりもした。
町の住民はこれを静かに見守っていた。顔を会わせた時も笑顔を向けられたり、何かしらのご褒美をくれたりした。それがまた嬉しかった。
全てが自己満足で、偽善にも近いような正義を見せていたようなものなのに。
只、持て囃してくれたことが嬉しかったし、正義の味方になることが自分のしなくてはいけないことみたいな風に考えていたし、ご褒美をくれるのも嬉しかった。
結局は自分のためだった。全てやって来たことが自分のためであって、他人のためではなかった。それを悟ったからなのか、それとも他の理由からなのか、知らぬ間に俺は正義の味方になることを止めていた。それ自体をしなくなっていた。
それからも幼馴染みである彼女とは何時も話をした。それでも、彼女は次第に俺を見なくなっていった。
正義の味方をしたくなってから、彼女との会話は少なくなり、いつの間にか、挨拶程度ぐらいのことしか話さなくなった。
俺はその全てに後悔した。もう一回やり直したいと何度も思った。それでも、そんなことは出来る訳もなく時間だけが過ぎていった。
ある時、ふと思った。
―彼女と一緒にいたい
と。
そして、決意した。
―関係を元に戻そう。
と。
俺は急いだ。昔のように正義の味方みたいな格好を出来る服装を探した。結局、それはなかった。だから作った。作り上げた。今、自分が思う正義の味方の格好を。それを作るのに1ヶ月という時間を費やした。
そして今日、俺は彼女を幼い頃良く遊んでいた空き地に呼び出した。彼女は時間通り来てくれた。
彼女は一言だけ言った。
「秀くん?」
彼女が疑問を持っていることに自分でも頷けた。俺でもこんな状況に陥れば、名前を呼ぶしかない。彼女も同じ状況になっているのだ。
だから、俺は格好いいと思う返答をした。
「秀?俺は正義の味方だ。そんな名前ではない。」
この台詞と展開は幼い頃と全く同じなのだ。彼女もそれに気付いたらしい。笑顔を見せて、またいつもと同じ言葉で尋ねてくる。
「なら、正義の味方さん。今日は私に何をしてくれるのかな?」
全く変わらない。この空き地も、俺たち2人も。空き地は何もない只の空き地だ。それなのに此処には大きい木が一本ぽつんと立っている。この木は何時も登場の時に使っていた。そして、今日も。
徐々に昔の光景を思い出していく。記憶が一つ一つ頭を過る。懐かしい思い出。それが俺に勇気をくれた。
「正義の味方は皆を守ることが絶対。俺が今日、君にすることは…」
一度、間を置く。
―落ち着け、言うだけだ。何ら変わらないこの空き地と同じように、何時もと同じことを言っているみたいに…
「俺は君の正義の味方になり続ける。これからもずっと。だから、俺と付き合ってくれないかな?結婚のプロポーズ込みで。」
彼女は一瞬驚いた表情をするが、まるでずっと前から考えていたかのように言葉を返してくれた。
「やっと、正義の味方に戻ってくれた。うん。勿論、正義の味方さん。」
―ああ。なんと言えば良いのか。嬉しさが込み上げてくる。只々、嬉しかった。
俺は笑顔を彼女を見つめた。すると、彼女はこう言った。
「でも、正義の味方だからちゃんと動いてね。」
「そ、それは…君の正義の味方と言うのは君を守り続けるという意味で…」
「そこで頷かないと、決まらないよ。綺麗に終わらなかった。とにかく行こっか。」
「?」
彼女は俺の手を取ると家の方向に向かった。俺には疑問でしかなかった。
結論から言えば、彼女の両親に正式に挨拶しに行った。中学生で挨拶に行くのは異例も異例だろうと思いながら、彼女従いながら終わらせた。
その後は俺と彼女の両親が飯に行こうと言い、飯も食った。
それからは両親たちが嬉しそうに話しているのを俺と彼女は見ながら、話し合った。
如何でしたでしょうか?
感想をお願いします。
それではまた。