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乱象  作者: 酒井順
第1章 象界師
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第8話 印の意味

第8話 印の意味


 最初の目的地に戻った胡蝶は、ノージに尋ねた。

「で、どうすればいいの?」

「ほら、6ページ目の3番目の印の型に“刻の印”と書いているだろ」

「うん、でも、この印は結んだよ」

「次の印があるんだ」

「複合技ね」

 ノージは面白くなっていた。

(この子は何処まで知っていて、何を知らないんだろう?)

「そうだね。次の印を教えるけど、その前に基本を確認しよう。印の基本とは?」

「結ぶ事」

「当りっ。そうじゃなくて、印の効力の基本だよ」

「そんなの知らない」

(この子はどうやって、本を手に入れたんだ。あそこにはフラクタル・トラップがあるはずなのに)

「基本は印の型・照準・精神力だよ」

「印の型はいくつか知っているけど、残りは何?」

(えっ、何も知らないってこと?)

「じゃあね、知っている印の型を結んでみて」

 胡蝶は知っている印を結び始めた。

(うん、数字は知っているようだな。おや、これは16進法だな)

(あれっ、知っているじゃないか)

「胡蝶、知っているじゃないか」

「なァに?」

「次の印だよ」

「そうなの?じゃあ、やってみるね」

「待った!ちょっと、待って。胡蝶はそれの意味を知っているの?」

「意味?知らない」

 胡蝶は、ここまで30くらいの印の型を結んだが、ノージから見ると、確かに印は発効されているけど、それは単発で、何の実効もないことは明らかだった。

「胡蝶、その印はね“それは、ここです”という意味なんだよ」

「ふ~ん、それで?」

「つまり“刻の印”とそれを組み合わせると“ここを印に刻みます”という意味になるんだよ」

「なるほど、案外簡単だね。じゃあ、やってみるね」

「待った!だから待てといってるだろうが!」

「怒んないでよ」

「あァ、御免」

 しかし、ノージから見れば危なっかしい。その“意味を持った印”の結果を胡蝶はまるで考えていない。

「知っている印を続けて見て」

「は~い」

(何だ?これは“発現”の印じゃないか)

「胡蝶は産まれた時から今の姿だったの?」

「ううん、産まれた時はノージと同じ姿だったわ」

「じゃあ、どうして今の姿になったの?」

「父さんに崖から放り出されて、夢中で印を結んでいたらこうなったの」

(なるほど、しかし、如何に危機的状況とは言え、メタモルフォーゼは身体が拒絶するはずだ。多くは印が無効となるか、発効されたとしても身体が保たないはずだ。何故だろう?胡蝶には天性の資質があったということだろうか?)

「続けて」

「は~い」

(うん?これは“虚空”の印じゃないか。なるほど、だからフラクタル・トラップを抜け出せたんだ)

「胡蝶、その本はお婆さんから貰ったの?」

「そうだよ」

「その時、トラップに遭わなかった?」

「遭ったよ。溶けそうになっちゃたんだから」

「だから、溶けそうになったのは僕だけだって」

 だが、ケルンの主張は誰の耳にも届かなかった。

「どうやって、抜け出したの?」

「複合技よ。これとこれの印を結んだの」

 それは、“13”と“虚空”の印だった。

(おかしい。確かにあのトラップを抜け出す方法はいくつかあるが、その印では抜け出せないはずだ。もしやトラップに何か変化でもあったか)

 それから暫く胡蝶は印を結び続けたが、それらは単発の印の発効で、この場では何の意味も為さなかった。

 ノージは胡蝶にそれぞれの印の意味を教え、その複合印も教えた。複合印は2つの印の組み合わせで、ノージはそれを“2次の印”と呼んでいた。複合印の次数が上がれば、それだけ威力も意味も増すのだが、それは術者の能力に依存していて、教えることはできないことだった。全7ページの件の本にノージは自動翻訳の印を施した。それは、胡蝶の成長とともに本を理解できる印であった。


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