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乱象  作者: 酒井順
第1章 象界師
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第12話 考の刻印(3)

第12話 考の刻印(3)


 胡蝶の想いに同情はなく、容赦なく問いは続けられた。

胡蝶は悲しみと後悔に沈み、ケルンとカイロで、問いへの応えは行われていた。幸いにも次の問いが最後だと告げられる。

『ここの通路に13本の旗があります。最短経路を辿って旗を集めなさい』

「旗を集めればいいんだろ」

ケルンは、通路に飛びだした。やがて1本の旗をみつけて、回収しようとすると旗が外れない。ようやく、自分が何かを勘違いしていることに気付いて、カイロに相談した。

「どこが間違っていたの?」

「はい、この問いは見掛け以上にやっかいです。旗は13本ですが、その旗を1度づつ通る経路は5億本も存在します」

「つまり、5億本から1本見つけろっていうこと?」

「そうです。13本の旗の配置によって複雑さは変わりますが、外周に旗が何本あるかで、その複雑さの程度が予測できるはずです。外周を回ってみましょう」

 1本目の旗から壁伝いに歩いて行くと、旗が見えた。その旗に手をかけるとスルリと回収できた。旗は外周に意外と多く、気が付けば13本目の旗を回収して、1本目の旗に戻ることとなり、結界は消えた。


 どうやって考えることを伝えようか迷っていたノージは、結界が消えたことに驚いた。

(そんなはずはない。全ての問いに応えられなければ、結界は消えないはずだ)


 ノージの傍らに佇む胡蝶は沈み込み、その影響なのかケルンにも元気がなかった。ケルンから事情を聴いたノージは思いがけずも、誰を相手とせずとも昔語りを始めた。


「知っていたはずなのに、止められなかったんだ。かれこれ2千年は経つのかな。わたしの産まれた頃は、人類は皆、わたしと同じ人型の姿をしていてね、それでも争いは絶えなかったな。人類はカガクとケイザイに支配されちゃってね、この世界の象を乱すようになったんだ。あの頃は、酷いと言えば酷かったし、今と比べてどうなんだろう。あまり変わり映えしないかな。人ってあまり成長しないんだね。その時ね、わたしたちは“命子”の存在に気付いたんだ。その頃は大勢の仲間がいてね“命子”はこの世界を象っているんじゃないかと考えたけど、今でもはっきりしないね」

 胡蝶は“命”という言葉に反応したようで、ノージは一息ついた。

「ねェ、胡蝶。生きているってどういうことかな?生きていると存在しているは同じかな?」

「わかんないよぉ」

「わたしたちはね、存在して、意思を持っている事が生きているってことじゃないかと考えたんだ。確かに“命子”は意思で、この世界を写し出しているように感じたけれど、これは仲間たちの感性で、カガクもケイザイも信じちゃくれなかったね。そこで、産まれたのが“印”の体系なのさ。わたしたちより古い時代にも印はあったけど、それほど重要じゃなかったようだね。印の体系は、社会に実影響を与えて注目されたよ。この世界を変えられるかもしれないと思ったね。でも、その時、大きな事件があったんだ。でも、その話は次にしようか。胡蝶、“命子”はね、どんなに遠く離れていても呼びあえると言われているんだよ。いつか父さんとも母さんともお兄ちゃんとも呼び合えるかもしれないね」

「ほんと」

 未だ、涙は引けていなかったが、幾分明るくなった胡蝶であった。

「トラにも意思はあるの?」

「もちろん、あるよ。胡蝶に従いますというのも、立派な意思だよ」

 しかし、“命子”を意識するということが、どれほど印の習得に加速をつけるかノージも知らなかった。


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