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プロローグ
大きいな。
家の前の道で初めてそのボールを直に手に取った時、昇はそう思った。真新しいゴム質の表面は昇の手に吸い付くようにしてこちらを見ている。
不安気にそのボールを眺めていると、昇は突然軽く肘を上げ、ボールを投げた。昇の指先はヤマにしっかりかかり、綺麗な回転でボールは進んで行く。昇は笑顔になった。
古谷野 昇。彼は私立の今南高校の1年生。中学生の頃は軟式野球部に入っており、高校でも野球をやろうと考えていたが、生憎ここには野球部は存在せず、野球部に近いソフトボール部に入ることを決めた。
昇は野球選手としては比較的いい選手であった。
そしてこの時も、ボールに不安を抱きつつも上手く投げることができ、余裕を感じていた。
明日は初めて部活動に参加する日である。