二人の日々(4)
ピーノは驚きつつも、小さなサーシャを喜んで迎え入れた。苦労していた筈なのに、皆にやさしい娘なのだ。
「サーシャ。この卵は何故必要だったんだ?」
「雷竜の卵をお母さんに食べさせたかったから…。」
意を決した様にさらに言う。
「馬でお母さんの所まで送って欲しいんだ!」
「さっきの馬は私達のではないんだ。今すぐだと…歩きでしか方法がない。いったいどこから来たんだ?」
「アサバルから…」
ニアとピーノはびっくりしながら見つめあう。
「2日は掛かるじゃないか!ヘタをすれば卵が孵化しちまうぞ?」
「えっ!そうなの??雷竜の卵を生で食べさせれば、元気になれるとしか聞いてなかったから…。」
「生は厳しいかもなぁ?他のヒナも孵化してたろう?もう少しで生まれるはずだよ。」
クシャクシャと顔をくずしながら、大粒の涙が零れる。
「お母さんがすごい苦しんでる…。早く帰って栄養のある物を食べさせなきゃ…。僕を待ってるんだよ!」
サーシャの頭を撫でながら言う
「お母さんを助けたい気持ちは、凄く分かる。しかしその卵の中の竜には罪はないだろう?」
「……」
「恐らく暖めれば、今晩にでも生まれるだろう…この子の親になるのは、お前だよ?」
「!?…僕が?」
「盗んだのはお前だ。盗んだなりの責任があるからな。違うか?」
小さく首を振りながら
「…違わないよ…。でも僕が親…なんて…出来ないよ。」
「まずは暖めるんだ。割らない様に柔らかい布で包んでひと肌で暖めるんだよ。」
「…うん、わかった。」
ピーノがそっと布を渡す。
「(*^_^*)」
ピーノが服を引っ張ってくる。ピーノと頷き合い、ニアが口を開く。
「今晩はしっかり卵の面倒をみる事だ。そして明日朝早くここを出よう。大変だろうが、頑張れるか?」
サーシャがパッとこちらを振り向く。
「えっ!?」
「ピーノはとても料理の腕がいいのさ。お母さんに美味しい物でも食べさせよう。保存食も少しあるし、材料も何とかなるさ。」
「本当に?…でもいいのかな…?」
「子供が細かい事を気にするな。まぁ今日の狩りは色々運が良かったからな。」
サーシャの頭を撫でながら続けて言う
「まぁ卵の面倒はしっかりしてくれよ?それまでは出来ないからな?」
「うん!わかった!」
サーシャは喜々として卵をそっと暖める。
「悪いが、サーシャの面倒をお願いできるか?」
「(≧∀≦ゞ」
「明日の移動は寝てて構わないからな。んじゃ、先に寝るわ」
(早起きしないといかんから、早よ寝よ…。)
ピーノの用意してくれた、ぬくぬくの布団に滑り込んだニアだった。