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わたくしの生きがい? どうして、そんな質問をするのでしょうか。
生きがいなんて、なくても生きていられますわ。そんな下らない思いを持つのは、弱い証拠ですわ。
こうやって、人間の血を吸うだけの人生。それだけで満足ですわ。
ふふっ、今日も人間どもがわたくしに寄ってたかって血を提供してきてくれますことよ。
どうせ勝てないことは分かっているのに、どうして戦おうとするのでしょうか? 理解に悩みますわ。
「恐怖に怯える顔は、わたくしの食欲が増進しますの」
わたくしは、じわじわと痛めつけて人間が怯える顔を見るのが好きですわ。
ほら、もっと怯えなさい。あなたは、これから死ぬのですからそれに相応しい表情になりなさい。
……どういうことですの? どうして、怯えないのでしょうか。
むしろ、死ぬことに対して喜びを覚えている? 気持ち悪い、どうしてそんな思いが芽生えるのでしょうか。
「あなたは、どうして笑っていられるのですこと!?」
おかしい、おかしいですわ。こんなこと、こんなこと!
こんな方じわじわ痛めつける価値なんて全くありませんわ。
「……くっ」
なんでしょうか、このまま殺すとわたくしが負けたような気分になるのは。
こんな気持ち、生まれて初めてですわ。どうして、どうしてこんな気持ちになるのでしょうか。
同時に苛々しますわ。人間を殺すことを躊躇うわたくしに。
「――殺さないのか?」
そんな言葉を飛ばすのは、わたくしがよく知る人。
どうやら、一部始終見られていたようですわ。
「今日は気分が悪いですわ。この方は、ずっと笑顔を浮かべていますからね」
「……こいつは、騎士か」
わたくしの良く知る人。お姉さまは騎士の顔をじっと見つめて、考えていますわ。
相変わらず、あの表情は気持ち悪いですわ。攻められて嬉しい人の類でしょうか?
「騎士として……戦って死ねるなら本望。それが、こいつの生きがいなのかもな」
生きがい、生きがいとは一体なんなのでしょうか。
そんなもので、この方は笑顔で死ねるのでしょうか。
分かりませんわ。生きがいというのは、ここまで人の行動や人生を変えるのでしょうか。
「わたくし、もう帰りますわ」
今日は本当に気分が悪いですわ。それもこれも、全部生きがいのせいですわ。
○
わたくしはここ最近、ずっと自室に引きこもっている毎日ですわ。
生きがいとはなんなのか、そればっかり考えて頭を悩ます。
あの気持ちの悪い騎士が、あそこまで笑顔になる秘密。
ですが、答えは未だに出てこないのですわ。
「今日も引きこもるのか?」
お姉さまの声が聞こえてくる。だけど、聞こえないフリをするわたくし。
今のわたくしは、わたくしじゃない。だから、構って欲しくなかったのですわ。
「そんな本ばっかりの部屋で引きこもっても、仕方ない気もするが……」
何を言われようとも、わたくしは気にしませんわ。
ただ、生きがいとはなんなのか。それの答えを出すまで引きこもるだけですわ。
「……気が済むまで、ずっとここに居ろ」
気が済むまで……ですが、わたくしは気が済むときが来るのでしょうか。
生きがい、この4文字が憎らしいですわ。
――――――わたくしの、生きがい……?