Ⅱ Back Story1 Acceptable
Back Story1 Acceptable
この悲鳴、いつ聞いても素晴らしい。私の体内に流れる血が騒ぐ。
体から流れる鮮血というのは、いつ見ても胸が激しくなる。やはり、人間を殺すのは楽しすぎる。
無力で愚かな人間は、必死に私を殺しにやってくる。本当に、良いカモだ……ありがたくその血を貰おう。
――――――また、殺してやった。だけど、足りない。
体にかかる返り血は、私にとってシャワーのようなもの。どんどん浴びたい……もっと、人間は居ないのか!?
そうだ、人間というのは住居を構えてその中に居ると聞いたな。
いつもはあっちからやってくるが、たまにはこっちから来るのも面白い。
「この中に人間が居るのか……」
くっくっく、想像以上に家があるじゃないか。この中に何人居るのか楽しみでしょうがない。
「あはは! 見つけたぞ人間!」
まずは1軒、女と大量の子どもだ。
特に子どもの悲鳴は最高だ。そして、心臓を打ち破ればその声はなくなる。
この瞬間がたまらない。泣き叫ぶ人間が、いきなり無力になるのだからな!
「私から逃げられると思っているのか?」
2軒めだ、ここは大量の酒飲みが居た。
呑気な奴らだ。自分がどういった状態になっているのか分かっていないのだから。
だが、私にとってそれは好都合。ありがたくその体を斬り裂いてやろう。
「お前の血を見せろ!」
3軒め……もう私は人間を見る目なんてなかった。ただ、殺す対象としか思っていない。
男か女、子どもかなんて知らん。ただ殺せればそれで良いのだから。
「なんだ……もう居ないのか」
気が付くと、この辺り一帯の人間は居なくなっていた。
破壊された家、その壁には赤いペンキを塗ってやったよ。素晴らしいアートだと思わんか?
だけど、まだ足りない……殺したい、殺したい、殺したい。
「――ずいぶんと派手にやりましたわね」
人間か? いや、この声は違う。私がよく知っている声だった。
「なんのようだ……?」
「……今日は、もうやめにしましょうお姉さま」
何を言っている、これからが楽しいときなんだ。
お前は黙って、私に人間が居る場所を教えれば良いんだ。
「人間はどこに居る……?」
「ですから、今日は――」
「どこだ!?」
いくら妹だからって、容赦なんてしない。刃向かうならば、殺して良いんだぞ?
「……ただ、人間を殺すだけではわたくしたちの格なんて上がりませんわ」
「うるさい、さっさと教えろ」
殺し以上に格を上げる方法なんてない、お前はそれを分かっていないからそんなことが言えるんだ。
私たちは残虐な行為をするために生まれた。それを捨てるのは、死んでるということになる。
「……ここから東に10分ですわ」
そうだ、その言葉さえ聞ければ良い。お前は黙って私の言う通りにしていろ。
今日は気分が良い。人間どころか街まで破壊してやろう。
○
私が悪いのか……こうなってしまったのは。
だけど、分からない。どうしてこんな状態になってしまった? 私は、ただ人間を殺していただけだ。
周りは認めてくれない。私の行いを認めてくれない。
ただ殺すだけに生きているなら、お前の生き方は間違っている? なぜだ、なぜなんだ。
「だから言ったのですわ」
お前の声を聞くたびに、私は思う。なんで、妹の言うとおりにしなかったのかって。
「わたくしたちの格を上げる方法なんて、いくらでもある。だけど、お姉さまはそれを理解しなかった……そして、もう後戻りできなくなってしまいましたわ」
人間ばっかり殺す私には、仲間から殺し屋のレッテルを貼られてしまった。
そして、無関係の妹までもがその看板を背負う羽目になる。
それならまだ良い方だ。だけど、私たちは最後の追い打ちに仲間から完全に阻害される。
「……しばらく、反省してください。わたくしは、いろいろと作業があるので」
仲間から阻害された私たちは、誰も居ない場所でひっそりと暮らすことしか出来なくなる。
格、ステータスを欲していたらこれだ。
――――――求めすぎるな……か。