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光の勇者  作者: 夢狗&闇光
第1篇
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七章 satan arrive~2~

<闇は聖、光は邪。我は邪悪を滅ぼし聖を貫く。闇よ、聖なる力よ―此処に集え!!>

 キイイイ―ン

「!!」

 超音波のような音が、突然聞こえてきた。

<―フィールド転移>

 吉田の―魔王のその一言で大地が大きく揺れた。超音波が、どんどん強くなっていく。立っていられないほどの揺れに膝をつくと、隣の雅も近くの木につかまった。超音波の大きさと揺れの大きさは比例しているようで、どちらも増していく。強く目を瞑った。

 そろそろ耳がつぶれ、体がバラバラになりそうだと感じたとき、ふいに揺れが止まった。

 ザッ

 壊れたラジオのような音が一度鳴ると同時に音も終わり、一気に静けさが訪れた。

「ここは―・・・」

 見覚えがある。最寄駅前の大通りだ。頭上に鉄製の線路が走り、商店街もどの店も閉じているにも関わらず人っ子一人いなかった。

<呆けている場合か?>

 ふいに、耳元でささやくような声がした。

「っ・・・・・・!!」

 ―魔王の鎌が、燈麻の首に当てられていた。

 吉田は楽しむような微笑を浮かべ、挑発の言葉を投げかける。

<闇に飲まれる光ほど見ていて楽しいものはないなあ>

「っ!!俺は―闇になど飲まれてたまるかっ!!」

 痛みや大量の血に構わず、鎌を掴む。

<!!>

 燈麻は吉田をはねのける。

「フローラル・ウ゛ィザード・・・」

 燈麻は回復魔法で血を止めたが、傷は残っていた。

<ふっ・・・苦しみが増えるだけだと言うのに―>

「―それでも・・・力を持ったからには!」

『―燈麻』

―俺は一瞬で負けたけど―燈麻なら・・・!!

「――!!」

 ―神経・・・集中―!!

<なんだ?>

「アルテミス・シャイン!!」

 吉田に光の輪が次々と飛んで行く。

 ドォン・・・ゴォォッドドド―

 威力が強かったのか、吉田の制服には傷がついていた。

<この程度―ではないのかもしれないな>

 そう言って、空高く舞い上がる。

<ダーク・サイドネス>

―闇の・・・悲しみ?

 思ったとたん、周りの空気が燈麻を締め付ける。

 ギィィィィッ

「・・・くっ!あ゛ぁ」

 心臓に冷たい風が吹く。燈麻はものすごい寒さに耐えていた。

『お前・・・!!なんて』

 ようやく技が解除されると燈麻は地面にへたりと座り込んでしまった。

<力を抜いてしまえば・・・こっちのもんだよ>

「―なんだと・・・」

 こみあげてくる怒りと共に、武器を強く握った。

「シャイニングディセイブッ!!」

 抜いていた力を足にこめ、爆発したかのような轟音と共に飛び上がる。線路の縁に飛び乗り、武器を叩き付けた。鉄の雨が、吉田に降り注ぐ。

<・・・甘い。まだまだだ> 

 次々に塊をかわしていく。吉田は余裕の笑みだったが、歩道で見ていた雅はじっと燈麻を見守った。

―「ディセイブ」は「欺く」という意味・・・。燈麻の技はこれからだ。

 その時だった。

<っ・・・!?>

 線路の上にいたはずの燈麻が、いつのまにか吉田の目の前に立っていた。その口元が、悪魔のように歪む。魔王は、全身の肌が粟立つのを感じた。雅にはいつもどおりの燈麻にしか見えなかったが、魔王には狂気に満ちた悪魔の表情しか見えていない。

<っやめろ・・・来るな>

「シャイニングバド!」

 スサァァ・・・

 砂のように現れた大量の光の粒子が吸いこまれていくように吉田に集まっていき、いくつかの球体を作り出す。

「フラワー!!」

 パァァアンッ

 はじけるような音と共に、次々と球体が割れた。鋭い欠片が、吉田を傷つけていく。

<っ・・・こんなもの!>

「で、終わらせるわけないだろう!」

 燈麻は剣を振りかざす。

<なっ・・・!>

 ビュウウッ

 吉田はよけていたが、腕から血が流れていた。

「この世界の旧神よ―ゼウスに勝る力を見せたまえ!」

<っうっ・・・>

「ロイヤルストロング・インフィニティ!!」

 光っている火山弾が次々と燈麻に飛んで行く。

<ダークネス・バリゲート!>

 吉田は魔法陣で防御する。

 ドッドドッ

「<くっ・・・>」

「いっ・・・けぇぇぇえ!!」

 最後の一弾が魔法陣に当たった。

 ピキッ

<う―・・・>

 ミシミシ・・・

「!!」

 ―パリンッ―

 耐えていた魔法陣が割れた。当然、溜まっていた火山弾は吉田に直撃する。

 ドゴォン―・・・ボッカア・・・ン

 吉田は光に包まれながら砂のように消えて―

<・・・ふっ>

 いかなかった。しかし確かに、吉田は今倒したのだ。なぜだ・・・

「―――」

『あ・・・・・・』

―封印も解けない・・・!?

 混乱する二人の目の前で、やっと吉田の体が崩れ出す。

 しかし。

 中から現れたのは―

「ま、まさか・・・

 お前が魔王!?」


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