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光の勇者  作者: 夢狗&闇光
第1篇
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四章 night and elegant



四章 naight and elegant


「うぅ・・・腹減った」

『一回戻るか?』

「いや・・・いい。この勢いでいきたい」

『そーか?途中で倒れるなよー』

 槍に体重をかけるようにして花壇に座る。さっき拓馬の攻撃をまともに食らったせいで体の節々がまだしびれるが、少し休むと徐々にそのしびれもとれていった。

「―よし。そろそろ行くか」

 立ち上がり、水を飲んで手の甲で口元を拭う。

「・・・雅、次の奴、どこ?」

『う〜・・・。悪いよこわかんねえ』

「ん?」

 雅が眉根を寄せ、首を傾げる。

『俺に気配を感じさせないほど強力な奴がいるのか・・・』

 それを聞き、思わず身構えた。

 最初の楠木と木上は割と楽に倒せたが、今戦った拓馬は結構苦戦した。それよりもさらに強い奴が来ては、雅を庇いながら戦うなど―・・・

「無理」

 絶望的な気分になり、はあっと肩を落として言う。

『無理じゃないっ。頑張ってくれよ』

「いや、もちろん・・・」

 言いかけた時だった。

 肩に、焼けるような視線を感じてはっと顔を上げる。

「・・・誰かいるのか!?」

 

 びひゅっ


「っ・・・・・・!!」

 それは一瞬の出来事だった。

 どこからか突然伸びてきた蔦が、燈麻の首を捕らえる。蔦はまるで一つの生き物のように動き、燈麻の足が地面から離れた。

『燈麻!!』

 雅が驚きを隠せずに叫ぶ。

「―ぐっ」

<ついに来たか>

『!!お前・・・・・・』

 敵の声に、ちらりと校庭を見る。そこには一人の男子生徒が立っていた。

―確か、藤原大輔(ふじわらだいすけ)・・・・・・。

『燈麻を離せ!!』

<ふん・・・お前に何ができる、私を止めることなどできるのか?>

「みあっ・・・」

―苦しいっ

 きりきりと締まる蔦に手を伸ばしてみると、それは想像以上に太く、くいこんでいた。

『黙れっ。お前らが何を目的にしているか知らないが・・・、燈麻ならお前らを倒すことなど簡単だからな』

<そんなことして何になる>

『なっ・・・・・・』

「―っ・・・み゛・・・っ」

―喉がっ、つぶれる・・・意識が・・・。

 視界が朦朧とし、手足の感覚が薄れていく。

『!!燈麻・・・』

 雅の声が聞こえた。

 燈麻の意識は、そこで途絶えた。


     ****


 雅と大輔の声が聞こえる・・・。

<貴様ら、何がしたい。我々の邪魔をするな>

『それはこっちの台詞だ』

<プラントクロウ>

 ギュンッ

『あ゛っ・・・・・・!!』

―雅っ

 助けに行きたい、けど、体が動かない・・・っ。

『つっ・・・し、質問に・・・答えろ・・・』

<ふん、貴様に話す義理など無い。話したところで何も変わらんしな>

『馬鹿みてえなこと言うな!!お前ら、どうせよからぬことたくらんでるんだろ。わかってる』

<やっぱり貴様ら邪魔だな。この私がその命、終わらせてやる>

『―・・・』

―雅、逃げっ・・・

<ライトスマッシュ・プラント>

 ビュンッ

 バシュッ・・・

 風を切るような音と、雅の苦しそうな声が聞こえる。

<プラントウィングダンス>

 ファッ

『っ・・・・・・』

<苦しめ。我々の邪魔をしようとした罰だ>

『ぐふっ・・・』

―雅・・・動けっ・・・動くんだ、僕も雅も・・・。目を・・・

<まだ諦めないのか・・・哀れだな>

『目っ・・・的をっ・・・』

<・・・しつこい奴だな>

『あ・・・たりまえだ』

―雅・・・もういい・・・

 燈麻の胸に、ふつふつと感情が湧きあがる、その感情の正体は、燈麻自身にもわからなかった。

<魔王様は、この世界を変えようとしている。光にあふれた、浮かれた世界に現実を見せてやるのだ>

『――っ!!』

―こいつ・・・何をやる気だ・・・!!

『お・・・前・・・ら・・・』

<なんだ?>

『絶対・・・絶対、殺してやる・・・』

―雅、だからもう・・・

 もう体に感覚は無く、どこに何があるのかもわからない。けど、これ以上雅の苦しむ声を聞きたくなかった。

<まだ言うか。そこまでしてこんな世界を守りたいか>

―!!なんだと・・・

 燈麻は胸の内に湧き上がる感情が、爆発しそうになるのを感じる。

『俺たちにはっ・・・大切な世界・・・』

<そうか。ならせいぜいもがき苦しめ。―まったく、理解に苦しむ愚民どもめが>

 もう我慢できなかった。

 体中から、怒りが煙のように湧き上がり、燈麻の心を、体を支配する。それと同時に感覚が戻ってきた。

<!!>

『とう・・・ま・・・』

「―呆れた」

 燈麻の体が、眩むような光に包まれる。

―ジュッ・・・

 蒸発するような音と共に、彼の首に絡みついた蔦がちぎれるように離れていき・・・

 パアンッ

<まだぐわっ・・・>

 閃光のような光が一瞬周囲に閃き、悪霊がうめき声をあげる。

 燈麻の体が、解放された。

 今までに感じたことの無いような力がマグマのように体中に満ち溢れた。

 ダンっ

 力強く地面を蹴り上げる。コンクリートの地面がひび割れる。

<くそ・・・私の蔦を破るとは・・・>

 大輔が驚きと焦りの混ざった表情で呟いた。

 空高く跳んだ燈麻は左手に意識を集中し、槍を取り出した。背後に浮かんだ赤く輝く月が、燈麻の黒々とした影をつくりだす。

「―・・・ホリーネスクリエイション、イクスクレションズ」

 槍を横に払い、呟く。

「月よ照らせ―、我に力を。我らは彼奴を敵とみなす。―ともに戦え、闇に轟け光の力。今、力を―」

 キィンッ

「解放せよ」

 ドゴオオオオンッ

 台地が揺らぐような轟音。さっきまで上空にいたはずの燈麻が、大輔の目の前の地面に槍を立てていた。

 ―がらりと、その地面が割れ、崩れる。

<っ―――>

「許さない」

 そのでは、神も震え上がるような恐ろしい形相の燈麻が静かに悪霊を見つめていた。

「お前は雅を傷つけた。世界を馬鹿にした。―しっかり償ってもらうぞ・・・死をもって」

 大輔は背筋が凍るような寒気を覚える。

『燈麻―・・・お、お前』

「やるよ。この世界を、救ってみせる。雅―待ってろ」

<ふん・・・―しかたがない。こうなっては、こちらも本気で行く>

 大輔がゆっくりと弓を構え、背中からお札がささった矢を引き抜く。

「―ウルフマンロアー・・・」

<プラントリストリクションッ!!>

 パアンッ

 放たれた矢が燈麻の足元に突き刺さる。そこから、様々な植物の蔦が蠢きながら現れた。

『燈麻っ・・・気を付けて!!その矢―』

「問題ない」

 ネクタイをほどき、宙に放る。

「ウルフマン ムーンスマッシュ!!」

 ギャイィィンッ

 背後の月が、一瞬波紋がひろがる池のように揺らぐ。

 赤い光が鎌の水晶から飛び出し、みるみるうちに電気のような赤い光からできた狼の形を成して大輔に向かって行った。

 グアオォウ・・・!!

<!!プラントケージ!!>

パアンッ

 狼たちの目の前の地面に、矢が突き刺さる。

 ドォォッ

たくさんの植物が複雑に絡み合って檻をつくり、狼たちを閉じ込めた。

「まだまだだ」

 グラァァァァァ!!

 さらに新しい狼が現れ、檻を飛び越えて襲い掛かる。

<くそっ・・・・・・>

「ムーンスマッシュクロウ!!」

 グァァッ

 四匹の狼が同時に襲い掛かった。大輔が後ろに飛び退く。

<プラントウィップ!!>

 バシィィィィッ

 太い植物が蠢き、地面を力強くたたく。それにあたった一匹の狼が、音もなく消滅した。

 しかし素早い狼たちは蠢く植物たちの間をかいくぐり、飛び越え、とびのり、あというまに十数メートル離れた大輔の元にたどり着く。

 ギャイイインッ

 鋭い金属音と共に、狼が太く、鋭い爪を出し、振りかざした。

<ぐあ・・・!!>

「ムーンスマッシュテイル!!」

 ズゴォン・・・

 上に跳んだ狼が尾を振り上げ、体ごと使って勢いよく振り下ろす。赤い三日月のような形をしたものが大輔に直撃した。

<っ・・・。プ、プラント・・・ウェイク>

「―!?」

燈麻は思わずわが目を疑う。白いワイシャツやネクタイを血で染めていたはずの大輔の傷が一瞬にして消えたのだ。

『っ・・・蘇生魔法―・・・まじかよ・・・』

「くそっ」

 燈麻は静かに歯ぎしりする。

 蘇生魔法は、自らが傷ついたとき使えばその傷を回復させることが出来る魔法だ。雅も蘇生魔法を使うことが出来るが・・・。

『こんな一瞬で、あそこまで回復するすることができるなんて・・・』

<―さて、この勝負、どっちが先に死ぬかだったはずだが?>

「くそ・・・そんなの、むこうのハンデがでかすぎるじゃないか」

 ―しかし、ここで弱気になるわけにはいかない。

「―月の使者よ、主の元へ戻れ。―月よ、我にさらなる力を!」

  音もなく、狼たちの姿が消える。

  槍をゆっくり縦に構えると、腰を沈めた。

 「―閃光!!」

  がらがらとコンクリートの地面を崩し、勢いよく大輔の方へ向かっていく。

 <プラントシェル!!>

  ズゴォォォン・・・・・・

  きょだいな、湾曲した壁が出現した。しかし燈麻はスピードを緩めなかった。

 「シャイニング、クリメイション!!」

  シュィィィィ・・・

 樹下と戦った時と同じような半円ができるが、月の力も加わって赤い星たちだけでなく電気のような黄色い光も半円上を駆けている。

 「―スタートッ!!!」

  ゴオオン・・・

 <うがっ・・・>

  壁を突き破り、そのまま大輔の腹にぶち当たると、彼はまた呟いた。

 <プラント・・・ウェイク>

 大輔の傷が、再び塞がる。そして間髪入れずに、

<プラントエレファントッ!!>

 矢が突き刺さった地面が急に蠢き、植物で固められた巨大な泥の塊が燈麻に襲い掛かる。

「ぐあ・・・」

 燈麻は下敷きになり、吐き気がこみ上げてくるのを必死になって飲み込んだ。

「っ・・・うおおおおお!!」

 咆哮をあげ、武器から光の力を溢れさせる。塊は一見びくともしなかったが、燈麻が挟まれていた部分だけが溶けたかのように消滅した。

<何っ・・・>

 そこから勢いよく飛び出し、大輔に向かって次々に技をぶち込んだ。

 「ダークネススマッシュ、ミラー!!」

 <がっ・・・>

 「シャイニング・ギャラクシー!!」

 <―っ・・・>

 大輔の顔が、苦しみに染め上げられていく。

 「ムーンライト・ライトニング!!」

 <うああ・・・>

  大輔が力なく宙に投げ出された。

 『燈麻、もういいっ!!』

  体中から火山のように血を噴出させる大輔。それを見た雅が燈麻を止めようとする。

「―嫌だっ。俺は・・・こいつを許さねえ!!」

『とうまっ―・・・』

「ムーンパワー・・・リベレイション!!」

 カッ

 槍を月の光にかざし、前に突き出す。その途端、月が大きく一度揺らめいた。


     ****


 ぼんやりと、目を開く。

『―あ、燈麻』

「雅―」

 どうやら少し気を失っていたらしい。そばに武器は無く、体を起こすと少しふらふらする。

 あの後、ここは周りのものが見えなくなるほどの光に包まれた。力を開放したせいで気を失ったらしい。

「大輔は―」

『消えてるよ。最後の連続技辺りで消えかけてたぞ?蘇生する暇、無かったもんな』

―蘇生・・・

 その言葉に、燈麻は雅を見る。

 燈麻が蔦からとがれた後見た雅は傷だらけで、体中から血を流していた。とても辛そうに歯を食い縛り、燈麻の姿を見てほっとしたように息を吐いていた。その後蘇生魔法を使ったらしく、今は回復している。が―

「俺・・・許せねえ」

『?燈麻?もう終わったんだぞ?』

「違う・・・自分が許せない」

 静かに拳を握る。

「蔦に絡まれたからって気を失って・・・雅の声も聞こえてたのに助けにも行けなくて・・・その怒りを全部大輔にぶつけて。―俺、最低だ」

『・・・そうだな』

 はっとして顔を上げる。雅は静かに月を見上げていた。そこ横顔はいつものように笑ってはいなく、望んでいたわけではないがいつものように優しい言葉を彼がかけてくれるだろうと思っていた燈麻は怖いような、不安な気分になった。

『確かにそりゃあ最低だ。俺はてっきり、大輔が許せないからとかそんな理由であんなぼろぼろにしてるのかと思ったよ』

「――・・・・・・」

 燈麻は深く俯く。雅に言われると、とつもない罪を犯してしまったかのように思えた。

『あいつらも悪霊にとりつかれてるから忘れそうになるけど・・・本当は、ちゃんと人間の心を持ってるんだ。道具のように自分が八つ当たりのものにされていたと知ったときは・・・ショックでしかたがなくなると思うぞ』

「っ・・・・・・ごめん」

 雅に謝るべきことではないことくらいわかってはいるが、厳しい口調の雅には謝らずにいられなかった。

 身を縮こまらせていると、ふいに肩に雅の手が触れた。

『でもだから今更どうする?現実に戻って、記憶の無いあいつに『八つ当たりしてごめんなさい』とでも言いに行くのか?別に構わないけど、記憶がない奴に謝ってもしょうがない』

 燈麻にとって、雅が言うことは、いつだって正論だ。だからということもあるし、雅の言うことはもっともなことに聞こえた。

『まあ・・・、だからと言って、きっと燈麻は何もせずにはいられないんだろうな』

「ご・・・ごめん」

『よし、じゃあ俺から提案。自分で自分を一発、殴ってみろ』

「・・・!?」

 突然の言葉に、思わず息を飲む。しかし自分がやったことと今の気持ちを考えると、名案のような気がした。

「・・・そうだな・・・」

『そう・・・って、え。何本気でやるの?』

「・・・は?」

『いやいやごめんだけどさ、俺冗談で言ったつもりだったんだけど。あと燈麻、一人称『俺』になったな』

「は・・・!!?」

 呆れたように笑う雅を、照れ隠しで軽く叩く。

「はあ・・・なんかバカバカしくなってきた。考えてみればそうだよ、今はとにかく戦わなきゃ」

『ん、そうそうその息。やっちまいなー!!』

 雅が明るく笑う。燈麻も久しぶりに明るく笑った。

 しかしふと、雅の笑い声が止まる。

『―なあ燈麻、約束しよう』

「ん?なんだ」

『いくら本の中とはいえ、こっちの世界の奴・・・ようするに悪霊みたいなのにとり憑かれてない俺たちは、死んだら現実の世界からも存在が消えちまうんだよ』

「!!―そうなのか!?」

『多分―・・・。だからさ、絶対、生きて帰ろうな。この次はおそらく―魔王だ』

 心臓が大きくはねた。

「―・・・そんな・・・」

『約束してくれ。絶対に・・・何があっても、生き延びような』

「―ああ、お前もな」

 夜の闇に包まれていた空が、東から少しずつ白み始める。二人の長い影が校庭に伸びた。

 木々が、静かに揺れる。

 二人はほほ笑むと、拳をぶつけ合った。





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