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光の勇者  作者: 夢狗&闇光
第1篇
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二章 right hemp




二章 right hemp


「しかし・・・不思議な体験をした」

 次の日の朝、傷む肩に湿布を貼りながら誰に言うとも無く呟く。

『だよな―俺も燈麻があそこまで強いとは』

「うわっ、お前まだいたのかよ」

『む。悪いか。お前に幽霊みたいに憑けば外にも出れるんだよ。姿は見えないけど』

「ふーん・・・」

 貼り換えた湿布をゴミ箱に投げる。沸いたお湯で珈琲を作り、テレビをつけた。

『今の時代世の中も大変だな・・・』

「お前どのくらい本の中にいたんだ?」

『うーん・・・。お前と同じ中学上がって・・・』

「え、ここだったの」

『あ、そうだよ。なんかあんな別れ方するの、今思えば変だったな。・・・まあとにかくここの中学校来てからすぐだから・・・半・・・年・・・くらい?あの中、夜も昼もあるけど現実とずれてるからよくわからん』

「―そうか」

 雅はそう言うが、実際入学してから今までは九ヵ月ほどは経っている。

―九ヵ月・・・

 そんなに長い間いたのか。

 隣で楽しそうにテレビを見ている様子の雅の声に耳を澄ます。その明るい声に安心させられている自分の心に、燈麻自身が驚いた。

『?何処行くんだ?』

「散歩。お前も来る?」

『ん、行く行く』

 玄関で靴を履き、誰もいない家の扉に鍵をかけ、ポケットに突っ込む。他愛もない話をしながら静かな町を歩き、騒がしい商店街を抜けて燈麻の通う中学校の前を通りかかる。

 その時だった。

『―――――――っ!?』

「?雅?」

『燈麻・・・やばい・・・』

 姿は見えないが、雅の声は震えていた。

「どうし―」

『燈麻!図書室・・・行ってくれ!早く!』

「!!雅、みや・・・」

『いいから早くいけよ!やば―』

「落ち着けって!」

 思わず大きな声を出す。

―僕の方こそ落ち着けよ・・・

 しかし彼にも似合わずあせる雅の声に燈麻も動揺していた。

「行こう、図書室。行きながらゆっくり話してくれ」

『ああ―・・・悪い、燈麻』



 中学校は今日部活がある生徒のために開いたままだったので簡単に入ることが出来た。

『今気づいた俺も迂闊だったんだけど・・・、考えてみれば悪霊倒したって意味がないんだよ。大元の魔王を倒さなければ次々に悪霊の被害者が増えるだけだ』

 校庭の周りを小走りで図書室へ向かう途中、雅がもったいぶりながら言う。

「それで、何が言いたい」

『わかんない?あの世界に行けるのは、燈麻しかいないんだよ。戦えるのもお前だけなんだよ』

「つまり・・・封印を解くだけでなく、僕に魔王を倒せ、と?」

『燈麻なら、できる。』

 雅が確信の籠った声で言う。

『たしかに、命にもかかわるようなやばいことだ。しかも敵の目的はわからないときた。でも、絶対止めなきゃいけないんだよ』

 こんなに熱心に語る雅の声は、初めて聞いたと思う。

『頼むっ・・・燈麻。お前の力がいるんだ。―必要なんだよ』

 燈麻の足が止まった。

 嬉しかった。

 やるべきことがなんであろうと。

「いい。やってやる。お前も来るんだろ」

『!!!燈麻・・・ありがとう!!サンキュー!!もちろんだよ、手伝ってやる』

「・・・よろしくな」

 自分がとんでもないことに巻き込まれたのはわかっている。だけど、雅となら別にいい。

 図書室の棚から例の本を見つけると、細い指で静かに引き出す。「darkness a ruler」・・・また開くことになるとは思わなかった。

「行くぞ」

『おう』

 ゆっくりと、本を開く。

 目の前に激しい閃光が波打ち、二人を飲み込んだ。


             ****


「痛ッ・・・・・・。今度はいきなり本の中か」

『大丈夫か?ほら、早く行こう』

「―ああ」

 雅の声に急かされ、痛む腰をさすりながら小走りで図書室を出る。

「だけど何処に敵がいるんだか・・・」

『それは俺の任せろ。気配で分かる―こっちだ!!屋上だ』

「わかった」

 短く答え、左手に意識を集中しながら校庭に出る今は夜らしく、周りは闇に包まれていた。

『おーいとーま、外には階段無いよぉ?』

 雅が怪訝そうに声をかけてくる。

「―知ってる」

 ポウッ―ガシャンッシュッ

 巨大な鎌が燈麻の手に握られる。同時に、足元から炎のように力が湧く。

「よし・・・行ける!」

『とう・・・・・・』

 ザッ

 次の瞬間にはもう、燈麻はそこにいなかった。



「っ・・・ぁあっ」

<!!?>

 屋上に来た燈麻はそのままの勢いで―宙に浮いたままで敵に向かって鎌を振った。敵はうまく避けたが、掠った髪の毛が数本、はらりと落ちる。  ・ ・・・ ・ ・・

<・・・いきなり来たな。階段も使わず、校庭から跳んで>

「悪いか。お前は・・・木上(きのうえ)だな」

<答えなくてもよかろう>

「まあいい。僕はそいつが誰だろうと、そいつを解放してやる。僕の目当ては、お前だ悪霊」

<そうか。―潰してやる>

「潰し返す」

 その一言を合図に、戦いの火蓋が切られた。燈麻は再び鎌を振り上げる。

「シャイニングッ・・・ギャラクシィ!!」

 燈麻声と共に、鎌を左から右へはらう。銀河の星粒が何十万個で群れを成し、光速で木上の方へむかう。確実にあたると思えた。

 しかし。

<アイシクルエタナール・フォート>

 木上が、背負っていた巨大な剣を抜き、コンクリートの地面に突き立てながらいった。

ドゴォォォッ

「!!」

 とどろく轟音と地面の振動に、燈麻は思わずバランスを崩す。顔を上げ、目を見張った。

 燈麻と木上の間に、とてつもない大きさの砦がそそり立っていた。

―いつの間に・・・!!

『楠木は風の支配者、木上が氷の支配者か・・・。燈麻の鎌だけじゃ・・・』

「いや―・・・やれる。やってやる」

 燈麻は呟き、鎌を手にしたまま砦に向かって駆けた。

「・・・シャイニング、クリメイション!!」

 下から上に振り上げた鎌をまた右斜めに振り下ろし、また振り上げては右斜めに。繰り返しながら砦にたどり着く。その頃には、恐ろしいほどのスピードで振られた鎌が描く半円形に赤く燃え上がる星が生まれていた。

「うおおおおおおっ・・・・・・!!」

 咆哮を上げながら、思い切り跳躍する。


<・・・・・・・・・!?>

 木上が透明の氷越しに見える燈麻を、目を細めて見上げた。

「・・・スタート!」

 掛け声と共に鎌を氷の砦にぶつける。途端に、砦がガラガラと崩れた。

<!!くそ・・・>

 木上が顔の前に手をかざし、氷の塊から防ぐ。そうしながらも燈麻の姿を探した。

―(どこだ・・・)

「―シャイニング・・・」

 突然聞こえた声に、はっとし剣を構える。しかし、彼の姿は見えなかった。

<出て来い・・・>

「バンクエット」

 冷ややかな声が、姿が見えないまま聞こえてくる。

 ピシっ ―・・・ギギャッ

 心地の悪い音と共に、空中にあった氷の塊の落下が止まり、ひびが入った。そして粉々に砕け散る。

<な・・・・・・>

 ひびの間から星粒を溢れさせながら、氷が次々に消滅していく。しかし本当に、何処に行ったんだ。

「どこ見てるんだ」

 ふいに心地の悪い音が止み、氷の消滅が終わる。気が付くと、もう塊は頭上のものひとつだけになっていた。

―(あの上か)

<アイシクル―>

 言いかけた時、突然塊があの不快な音と共に砕け散った。

 その眩む視界の中に―、燈麻がいた。

「シャイニングドラゴン!!」

 鎌についた水晶玉から銀河が流れ、龍の形を成して恐ろしい速さで近づいてくる。超音波のように耳には聞こえない、圧力的な雄叫びを上げながら大きな口を開けて襲い掛かってきた。鋭い痛み。

―(だけどなんだ・・・)

 むせ返るような鉄の味を感じ、それが自分の口から吐かれた血の味だと理解した。だけど、苦しみは無い。寧ろ、体が解放されるのを感じた。そこでやっと、自分の理性を取り戻す。

―(夜月燈麻・・・)

 消える寸前の意識の中で、視界が一人の少年の姿をとらえ、教室の彼を思い出す。

―(よくわかんねぇけど・・・)

 ありがとう

 それは彼に聞こえただろうか。それとも、砂のように崩れかけていく口が動いただけだろうか。

 どちらにせよ、

―(教室で話してみよう)



『うはー、燈麻かっこよかった』

「五月蠅い」

『相変わらずだなー』 

 屋上のフェンスに寄りかかり、武器も立てかけて少し休憩する。隣では、雅が燈麻の顔を覗き込んでからかっていた。

『おーし燈麻、こんな感じで頼むよ!!』

「わかってるて・・・。よし、次行こう」

『おう!!』

 立ち上がり、鎌を消す。

 クラスメートを傷つけることを最初はためらっていたが、もう違うことを知っている。

―そうだ、違う。僕は今、仲間を―

 助けるんだ。




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