捜査が難航
誘拐犯の実行犯は逮捕されたが、その後の捜査は意外にもやや難航した。
信濃警察署では上東警察署管内の信濃沢で事件が発生した朝八時には招集がかかった。そして、八時半には信濃警察署の大会議室に刑事課と地域課の主だったメンバーが集められ、刑事部長より事件のあらましの説明があった。強盗傷害と幼児誘拐という卑劣で凶悪な犯罪が同時発生したことを聞いた時、まだ少し眠い目をこすりながら集められた署員もいたが眠気は吹っ飛んだ。その瞬間も事件が進行していたのだ。朝八時には犯人からの最初の脅迫電話があり、別件の対応で、たまたま上東警察署に駐在していた県警捜査一課の筑摩警部が現場で指揮を執り、犯人が電話をしてきた北浅間村には群馬県警の捜査一課の牧野警部が同じく現場に急行し、犯人と対峙していたのだ。
そして、犯行への関与が疑われる連中が、犯行につながるような事前の動きをしていたのが、彼らのお膝元の信濃市の繁華街にある居酒屋だという。そこの店長と従業員二名と、常連客が犯罪に大きく関与している事を疑われており、盗品の処理や逃走の可能性もあるという状況だ。
その重要参考人の一人である山田が経営する『紫亭』はJR信濃駅近くの繁華街にあり、かなりの繁盛店だったが、カウンターに陣取るのはいつも常連客らしく、その中に同じく重要参考人の庄司と三上もいたようだ。店長の山田は客対応の上手な大石浪江に店のフロアー運営を任せているようで、時々自分は営業中にギャンブルをしに出かけることもあるとのことだった。この情報は所轄の警察官からの情報で、彼もまた常連に近い客で、山田のことも浪江の事も知っていた。彼の名は富樫で階級は警部補だ。現在現場対応している大川警部補とは長年の刑事仲間で、来店客に関する情報も豊富だった。既に今回の強盗傷害と誘拐事件の事はある程度把握していたが、大川から信濃市の繁華街にある『紫亭』に関する情報提供依頼を受けたときには、「やはり来る物が来た」と感じ、高良田捜査一課長に自ら『紫亭』関連の捜査を任せてくれるように申入れた。
「あの店は、自分も良く行く店なんですが、店長の山田と浪江という中年女性が仕切っていますが、結構やばい連中が出入りしていることで有名です。そのうち何か起こすんじゃないかと自分は疑っていました」高良田一課長は
「富樫さん、分りました。まだ、誘拐された幼児を安全を確保出来ていないし、被疑者を特定できていないので、慎重に調査をお願いします」
「了解しました。細かいことは、“筑摩先生”に相談すれば宜しいですね」と筑摩警部を先生呼ばわりしたが、彼の甲高い声と普段は愛想のない所をからかって、先生と呼ぶ刑事達も多かった。ただ、筑摩が多くの事件を担当し、解決してきている実績にも敬意を払っての“あだ名”のようなものだった。
「ええ、お願いします。大川さんも動いていますので、必ず、尻尾を捕まえて下さい」
「はい、必ず」と富樫は意気込んだ。このヤマの裏舞台は『紫亭』だと、彼は睨んでいた。
富樫警部補以下の数人の刑事たちは、犯行に関わったらしい重要参考人たちに関する情報を手分けして収集・整理して、ターゲットの店への張り込みを始めた。十時半には犯人から二度目の電話があり、身代金の入金を迫るものだったと言うので、まだ慎重な対応が必要だったが、いつもなら十一時には清掃と仕込みのために店長と浪江らは店に現れると踏んでいたが、予想通り何事もなかったかのように彼らは少し遅れはしたが現れた。気づかれないように監視を続けていたが、昼過ぎには誘拐されていた幼児が保護された連絡が彼らにも入った。富樫警部補は
「よし、子供が保護されたぞ。誘拐犯の実行犯は逮捕されたし、これで、強盗傷害のホシの逮捕に全力を注ぐぞ!」と、早速に『紫亭』を訪れた。
掃除や仕込みのために店長の山田はカウンターの中で作業をしていた。カウンターまで富樫と二人の刑事が早足で歩み寄り、それに気づいて顔を上げた山田に富樫が警察手帳を見せて、
「店長、どうも」と常連らしい気楽な感じで挨拶をした。店長の山田は富樫が警察官だと言うことを知らなかったようで、
「ああ、いつもお見えになる方ですよね。警察の人だったんだ!」と少し驚いた様子だったが、特におどおどした様子もなくそう答えた。
「警察の人が何の用事ですか?」と悪びれることなく尋ねた。
「実は信濃沢でちょっと事件があってね」
「ああ、そうなんですか。それで、私に何か?」
「この店に庄司という人が良く来ているようだけど、昨日も来ていたかい?」
「ええ、昨日も見えていましたよ。昨日は庄司さんともう一人のお客さんと夜中まで飲んでましたよ」
「ほお、夜中とは何時まで?」富樫が探りを入れるので、山田は
「えっ、なんか変なことを聞きますね?」と聞き返すが、富樫は少し笑顔のまま山田の返事を待った。山田も返事をせざるを得ないと感じたようで、
「えーと、私たちも一緒にかなり痛飲したので、多分夜中の一時ぐらいだったかな。お馴染みさんなので、看板を下ろした後もカウンターで一緒に飲んでましたよ。それが何か?」
「もう一人のお客さんとは誰で、私たちというのは店長と誰のこと?」
「なんか刑事さん、事情聴取のようですね。嫌だと言っても無駄そうなので、言いますよ。もう一人のお客さんは三上さんで、こちらはうちの浪江さんと息子の京介君です」と山田は怪訝そうな顔をしながらそういった。
「浪江さんは今奥にいるの?」富樫が尋ねると、山田は奥の厨房に向かって大きな声で、
「浪江さん、ちょっとこっちに来て」と浪江を大声で呼んだ。浪江は「はーい」と言ってすぐに店のカウンターに現れた。そして、富樫の顔をみて、
「あーら、富樫さん。どうしたんですか?」といつもの気さくさで声をかけた。すると、山田が
「富樫さんは警察の人なんだって」と驚いたような言い方で言うと、浪江をそれに合わせて、
「えー、そうだったんですか!・・で、何かあったんですか?」
「いや、ちょっと信濃沢で事件があってね。それを調べていてね」
「ええっ、今、ちょうどスマホでラジオ聞いていたら、緊急ニュースがあるようですけど、それですか?」と大きな声で驚いた口調で、カウンターの横のテレビをつけたので、富樫と同席した刑事も含めて全員でテレビのニュースに釘付けとなった。民放のテレビで、臨時ニュースが流れていた。“本日早朝に信濃沢で強盗傷害事件と幼児の誘拐事件が発生し、警察の懸命の捜査により、十二時半頃に幼児が無事に確保されたことと、誘拐犯人三人が逮捕されたこと”が報道されていた。富樫は誘拐された幼児が無事に保護されたので、報道規制が解除されることは予想していたが、これほど早く報道されるとは思っていなかった。そして、強盗に入られ、誘拐された幼児の親がABDシステムという有名企業の前社長の孫で、現営業本部長の息子である事がこの即時報道の理由だと理解した。そして、この目の前に居る浪江はその一家の関係者である事も知った上での訪問だった。案の定、浪江は強盗に入られた家が高倉家である事が報道されたので、
「ええっ、高倉さんの家ですって、店長!」山田はそれに反応して、
「ああ、だから刑事さんたちはうちの店に来たんですね。でも誘拐犯人は逮捕されたんですね!」と大げさと言うより本当に驚いた様子だった。富樫は
「ああ、そうなんだ。事件報道がされたようなので、話は簡単だね。先日、お宅たちは高倉さんの別荘を尋ねているよね?」と少し厳しい眼光で、店長の山田と浪江の顔を見ながら、さっきまでとは打って変わって詰問口調で聞いた。浪江が、
「はい、高倉さんの奥さんがうちの亭主の妹だったんでお邪魔しましたよ。三、四日前に」何事もなかったかのように答えた。
「店長も一緒だったと聞いているけど、そうだよね?」山田は少し緊張気味に、
「ええ、そうです。浪江さんに同席を頼まれてですけど、一緒に行きましたよ」
「浪江さん、あんたの息子も一緒だったって聞いているよ」
「ええ、そうです。それが何か?」
「いや、お宅たちが尋ねた後に、浪江さんの代理で庄司さんが昨日、高倉さん宅を訪問したそうだね?」
「ええ、私の夫と父も高倉佐苗さんにお会いしたいと言ってるんですけど、事情があって長い間お会いしていないので、私がお願いして事前に申し入れをしたんですよ」との説明に富樫は頸を捻り、
「なぜ、他人の庄司さんに相談したんですか?」と尋ねると、浪江は
「先週、庄司さんたちが店に来た際に、高倉佐苗さんと私の夫が兄妹で長いこと離ればなれになっていることを話したら、それはいけないね、俺が何とかしてみようか言ってくれたのでお願いしたんですよ。庄司さんは交渉上手だって聞いていたから」
「ほう、交渉がね。でも、その翌朝に高倉さんの別荘が襲われるとは、驚いただろう」と富樫が話をふると、浪江はさもびっくりしたように、
「本当に!驚いたわ!ねえ、店長」山田も大げさに
「本当に驚いた!」と話を合わせた。
「昨晩、あんたたちが庄司さんと三上さんがここで飲んでいたことを、他に誰か知っている人はいるかい?」と富樫が追求するので、浪江は少しむっとしたように、
「いや、いませんけど、私たちだけでは信用できないですか?」と少し顎を出しながら言うので、富樫は心の中で「そんな犯人同士の証言が通用すると思っているのか?」と思いながらも、
「いや、誰か他に一緒にいた人がいればねえ、と思っただけだよ」と少し、困った表情で言った。すると、山田はこれもかなり眉をしかめた表情で、
「でも、今、犯人は逮捕されたとニュースで言っていましたけど、それで終わりなんじゃないのですか?」と少しふくれっ面のような、自分たちの無実を疑わない様子で話すので、富樫は「こいつらは素人だな。主犯はやはり庄司たちだな」と確信し、
「店長、浪江さん、仕事の邪魔をして悪かったね。また、来るよ」と言って、店を後にした。店を出た後に、お決まりのように冨樫は同行の二人の刑事たちに、
「おい、しっかり見張れよ!」と小声で言って二人を残して、パトカーを停めてある場所に一旦戻った。見張りに残った二人は見つからないように店の外で、聞き耳を立てた。山田と浪江はカウンターの中に居るのだろうか、所々切れ切れになったが、二人が興奮して大きな声で喋っているのが聞こえる。
「店長!・・・・どうするの?強盗とか誘拐なんて聞いてないわよ!」と浪江が驚き、詰問するように山田に迫ると、山田は
「浪江さん大丈夫だよ。俺たちが直接・・・・じゃないし、証拠もない・・・。でも、・・・・奴らがこんなにすぐに・・・・・されるなんて驚きだ。そいつらプロのくせに情けない」浪江はまだ興奮が冷めやらぬようで、
「捕まった・・・白状・・・、私たち・・・疑われる・・・・・わ。私どうしよう」と浪江が半ば泣き声のよう話すのを、刑事二人はしめたと思いその話を富樫にするために、歩いてパトカーにたどり着く頃には、
「店長と浪江は実行犯ではないな。庄司と三上と、多分浪江の息子の京介が実行犯だな」とすぐに問題なく逮捕・起訴できるような気持ちでいたようだった。
その日はそれ以上の犯罪につながるような証拠は見つからなかった。実はその頃、庄司と三上、そして京介は盗品を売り捌いたお金の分配で揉めていた。
「庄司さん、情報を持ち込んだのは俺らなんだから、店長を含めて五人で分前を分けることになっていたじゃないですか。それを、俺と母ちゃんは一人分で、店長は半分以下なんて、おかしいじゃないですか!」庄司の事務所で、京介は庄司と三上に文句を言っていたのだ。
「なにをこのガキが!」と三上が京介の胸ぐらを掴んで殴りかかりそうな勢いなのを、庄司が
「まあ、待て!三上。 京介、それなら現地で危ない作業をして、商品を無事に業者に売り渡した俺と三上と、店長やお前の母ちゃんは同じ分前なのが平等だ、とでもお前は言うのか?」三上はそれに合わせて、
「京介!あの商品を七百万円で引き取らせたのは、庄司さんのコネがあるからできたんだぞ!分かっているのか?それとも、お前だったら、もっと高く、安全に買ってくれる先を知っているのか?それに、現地で大きな音を立てて危うく騒がれそうになったのは、お前のミスだろうが!」と凄むと、庄司は
「三上、しょうがねえだろう、京介は不慣れなんだから。そう、味方を責めるな!」
「なあ、京介」と三上を嗜め、京介に同情してみせた。
京介は庄司には頭が上がらないので、
「ええ、危うく壺を落としそうになったので、肘が棚にぶつかって音を出したのは、俺のせいです」
「京介、俺の分から十万円をお前にやるから、それで手を打ってくれよ」と言いくるめられてしまった。実際には、庄司は七百万円ではなく九百万円で買い取らせたのだが、それを知っているのは、庄司と三上だけであったので、実際の取り分は庄司と三上が三百万円ずつで、京介親子が二百万円、店長の山田が百万円となっていた。
そして、翌日には庄司と三上と京介は『紫亭』に何事もなかったかのように訪れた。庄司は店長に信濃沢土産だと言って、店長にお土産袋を差し出した。山田は、
「これは、これは、庄司さん、ありがとうございます」と満面の笑みで礼を言った。浪江がグラスをビール瓶を運び、庄司と三上にビールを注いだその時、店に富樫以下十五人以上の警察官が暖簾をくぐって入店してきた。彼らは迷う事なく真っ直ぐにカウンターに来て、庄司と三上の後に冨樫と刑事数名がにじり寄った。店長の山田が驚いて顎でそのことを庄司に合図すると、庄司と三上は同時に振り返り、逃げ場を探したが、隙間なく寄せてこられ、椅子の背に手を置いた姿勢で冨樫たちを迎えることになった。京介はカウンターの中の洗い場で作業をしていて、それに気づき慌てて裏口から逃げようとした。浪江は警察官に気づかず、フロアーのお客さんの料理を調理場に取りに行った時だった。富樫が庄司と三上に、
「庄司と三上、そして大石京介!強盗・傷害の容疑で逮捕する」と逮捕状を掲げて大きな声で言い放ち、刑事たちはそれぞれ三人を拘束しようとした。庄司は黙って動かずに警察官の拘束に身を任せた。三上は一度は刑事の手を払い除けたが、すぐに取り押さえられた。カウンターの中の京介は裏口に逃げるところを、腰に手を回され転がされ、思わず食器棚の食器に手をかけてしまい、落ちた食器が割れる大きな音をさせてしまった。そして後ろ向きにされて、手錠を掛けられた。店長の山田は直前に庄司に手渡しされた紙袋を慌てて棚にしまうところを富樫に見られてしまった。冨樫は山田に、
「山田店長、あんたも窃盗幇助だよ。その棚にしまったものは分前だな」部下の刑事に
「それを押収しろ」と命じた。そして、調理場から戻った浪江に
「大石浪江、あんたも窃盗幇助で逮捕する」そして、店にいるお客さん全員に向けて、
「警察です。みなさん、今日はこれで店じまいです。お帰りください」と大きな声で声をかけた。十人ほどのお客は突然の大捕物に驚き、荷物を持って入り口から慌てて、火事場から逃げるように出ていった。一人だけ、トイレに行っていたお客がいて、ほろ酔い気分で自席に戻ろうとしたが、店の雰囲気の異常さに気づき、キョロキョロと見回していたが、刑事の一人に事情を説明され、酔いが覚めたように慌てて店の外に出た。そして、数分後に店の外に警察車両がサイレンを鳴らして数台到着した。手錠を掛けられた被疑者たちは放心したようになっていたが、一人庄司だけは責任者らしい富樫に鋭い視線を向けて、
「刑事さん、俺たちが窃盗とやらをやったという証拠があっての逮捕なんだろうな?」と太々しそうに恫喝するように大声をあげた。冨樫はニヤリと笑い、
「ああ、逮捕状はさっき見せた通りだよ。あんたが主犯だという証言もあるよ」庄司は、
「嘘をつけ!どうせいつものでっちあげだろう」とさらに嘯いたが、富樫は顔色一つ変えずに、
「まあ、詳しくは署で聞かせてもらうよ」と庄司の肩を軽く叩き、
「よし、全員を署に連行しろ」と指示を出して、警察官が二人セットで、被疑者五人を警察車両に乗せた。これで、一見落着だと現場にいた警察関係者はそう思った。
警察は誘拐された五歳の子供の安否を優先し、各社に報道統制を敷いていたが、子供が保護されたことで、テレビのニュース番組ではこの事件を大々的に放送した。有名IT企業の前社長夫婦の別荘が強盗に襲われ、さらに社長の長男である営業本部長の一人息子の五歳の幼児が誘拐されたのだ。その衝撃的で卑劣な事件のニュースを、各局は現地の豪華な別荘を遠くからの映像で伝え、渋谷の本社の模様を交えて報道した。そして、現行犯に近い形で誘拐事件の三人の被疑者が逮捕されたようだが、実名が伏せられていた。そして、その翌日には同時に発生した強盗傷害事件の犯人が逮捕されたニュースが報道された。そちらも実名が伏せられていた。これは、かなりのレアケースのようだ。
その報道を聞いてフリージャーナリストの坂田直子は衝撃を受けた。この事件の一週間ほど前に高倉家を訪問し取材していたからだ。すぐに上司である高木に連絡をした。高木も事件を知り、単純な金品目当ての犯罪ではないように直感しており、背後に得体の知れない何かの存在を想定していた。
「おお、直子か?ニュースは見たよ。先週高倉さんにはお世話になったから、驚いたよ」
「高木さん、何か匂いませんか?」
「ああ、匂うな!現行犯で逮捕された連中の名前も伏せられているのは変だよな」
「ABD社内での確執もあるようですので、それが原因での犯行の可能性もありますよね」
「金持ちの別荘への窃盗の方は分かるが、誘拐までをするのはやり過ぎだろう」
「そうですよね、何かの遺恨のような気もしますね。あるいは、社内闘争の成れの果てとか・・、多分広報が仕切っているので本社への取材は難しいですよね。例のスキャンダルが何か関係している気がしますね」との問いかけに、髙木は大きく頷いた。
「私は前社長夫人の関係を明日から再度調べ直します」とさらに直子は髙木に伝え、承認を得ようとした。
「ああ、そうしてくれ。俺はコンタクトのある範囲で社内の確執や人間関係を追いかけてみる。それと、以前に坂元さんにあの話をしたことは、知り合いの刑事に話してみるよ。万が一何か関係していたら大変だからな」髙木は直子の取材行動を承認し、さらに警察関係者にも密かに伝えることを共有した。
雑誌編集長の髙木に『直子』と呼ばれた、フリージャーナリストの坂田直子は前社長夫人高倉早苗の生い立ちに不自然な空白があり、以前詳細に取材をしたことがあった。直子は独自の調査でその佐苗の故郷を訪れ、佐苗の実父が五十年以上も前の事だが、強盗殺人事件の主犯で、三十年近く刑務所で過ごした事を突き止めていた。




