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宴の殺人  作者: 犀川 茂


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1/1

この殺人事件小説はフィクションである。とある邸宅内で催されたパーティーで、主催者が自分の寝室で倒れていた。その後死亡が確認され、何と何者かにより毒殺されたのだ。ご一緒に事件を解決していこうではないか!

宴の殺人



犀川茂(さいかわしげる)



この小説はフィクションです。


1

宴の主催者、高野剛が2階の自分の寝室で倒れていた。

その日の夕刻から高野は自宅に20人を招待して、自らの仕事の大成功を祝うパーティーを開いていたのだ。


「た、大変です!」

廊下からドアを開けて家政婦の本庄久美が1階の広間に飛び込んできて、叫んだ。

「旦那様が、旦那様が!」

本庄は、ただただ叫んだ。

1階の広間でパーティーを楽しんでいた皆は、何事かと驚き、会話をやめて静まり返った。

剛の長男の武が

「どうしたの?」

と問うと、本庄は、

「旦那様がお2階で倒れているんです!」

と顔を引きつらせて叫んだ。

「えっ?」

武は急いで広間から廊下に出て、階段を2階に駆け上がっていった。

何人かの客達も、それに続き廊下に出て階段を上がっていった。


武は2階に上がると、そのまま剛の寝室まで急ぎ、開いたままのドアから室中を見た。すると床のカーペットの上に、父親である剛が俯せに倒れて、動かなくなっているではないか。ウイスキーを飲んでいたようで、グラスがカーペットに転がり、ウイスキーと水と思われる液体と溶けた状態の氷がカーペットを派手に濡らしていた。テーブルの上にはウイスキーのボトルがあった。

「お父さん!」

武は駆け寄ると、剛を抱き寄せて叫んだ。

しかし、剛は動かない。全く反応しないのだ。

他の客たちもその様子を見て一瞬固まってしまった。

武が確認すると、呼吸もしていないし、脈もない。

「大変だ! 誰か救急車を呼んで!」

武が叫ぶと、客の1人が携帯で119番に電話した。


その後、サイレンとともに救急車が到着し、直ちに剛の状態を確認した所、既に死んでいることが確認された。その場の状況から警察にも連絡し、パトカーもサイレンを鳴らして駆け付けた。


剛の家にいる約20人は、皆心配げにうろたえていた。そして警察官が確認した所、剛の死因は何と、毒物によってもたらされた全身機能不全による急性中毒死と判断された。

「何ということだ。」

約20人の人達は口々に驚きを表していた。

「お父さん!」

「あなた!」

家族は突然のことに取り乱していた。

警察は自殺と他殺の両面から捜査を開始し、その場にいた約20人全員に、そのままこの家の中にとどまるように言った。


2

パーティーを振り返ると、2025/4/18(金)(大安)、18:00から高野剛は自宅に家族達を含む20人の人達を招待して、自らの仕事の大成功を祝うために宴の会を開いたのだ。彼は65歳。武蔵野市の閑静な住宅街でもひと際目立つ豪邸であり、広い敷地は周りを塀で囲まれており、築30年の2階建ての大きな自宅の他に広い庭があり、芝生と樹木が目の保養にもなった。

その日は天気も良く、17:30頃から招待客が少しずつ集まってきて、剛は嬉しそうな笑みを浮かべて1人1人に挨拶をしていた。

剛は仕事の大成功を間違いなしと踏んでいたため、何とこの日のパーティーの半年も前に全員に招待状を配ったのだ。家族の他に、剛の友人、家族の友人、隣人等を招待し、パーティーの中身はそれから考え始めたのだ。剛はパーティーの準備をしていても楽しくて仕方がなかった。

企画を簡単に言うと、邸宅の1階の広間でバイキング形式の立食パーティーを開き、テーブルと21人分の椅子も並べて、客が立ちっ放しにならないように配慮した。料理と飲み物は剛が自ら調達し、アルコール類は高級なものをふんだんに並べ、逆に料理は近くのスーパーマーケットに手頃なものを予約注文して当日自宅に配達してもらったのだ。皿やコップ等もコンビニで買った紙の皿と紙コップと割り箸だ。

手作りの、高級酒&スーパーのお惣菜の会、とでも言おうか。それでも、家族と多くはよく知った友人ばかりなので、会話も弾んで楽しんでもらえると思っていた。


3

18:00に開宴した。剛は挨拶の言葉を述べてそのまま乾杯の音頭をとった。

「かんぱーい!」

紙コップなので、グラスを合わせる音はしないが、皆楽しそうに大きな声で剛の仕事の成功を祝って乾杯してくれた。そして大きな拍手が起こった。

「それでは皆さん、お食事とお飲み物を沢山食べて飲んで、ご歓談ください。」

剛が明るく大声で言うと、皆も笑いながらそれに同調してくれた。

皆は食事のある複数のテーブルにそれぞれ散らばっていった。


この日の式次第はあとは数人から挨拶してもらうのと、ビンゴゲームと、締めの挨拶があるだけだ。

招待した20人全員が定刻までに来てくれたので、剛は上機嫌だった。

この日のために剛は自ら何度か買い物に行っては、ビンゴゲームの賞品を買って準備してきた。この宴会は飲み食いもビンゴの賞品も全て剛の奢りだ。正に気持ちにも驕りがあった。


4

家政婦の本庄久美が2階の寝室で倒れている剛を発見し、慌てて1階に降りてきてドアを開けて叫んだのは19:55の出来事であった。

その時1階の広間では、ビンゴゲームが行われていて、広間は明るい歓声で賑わっていた。

実は剛は、18:00開宴から楽しく飲み食いと歓談をし続けて、特にアルコールはハイペースで大量に飲んでいた。自分の用意した高級な酒の数々を周りにも振る舞いながら自分も飲み、自慢話を含めて色々な話を色々な人達としていた。集まった皆にも楽しんでもらおうと、広間の色々な場所で、話しては移動して、話してはまた移動して、を飲み食いしながら繰り返していた。

正に剛自身が1番楽しんでいたのだ。彼の飲酒のペースは速く、18:30から3人に挨拶してもらう時には既に明るく酔っていた。

18:30からは剛が司会をして、友人の田中勉(65歳)、宇佐美哲三(61歳)、諸谷光子(58歳)の3人から順に一言ずつ挨拶をしてもらった。3人とも今回の仕事の大成功の内容をよく知る友人だった。

そしてまた歓談タイムに戻ると、剛を入れて21人もいる広間では、あちらこちらで笑い声や歓声が聞こえて、談笑の渦ができていた。皆、酒に酔い、ワイワイガヤガヤと盛り上がっていた。アルコールを飲まない人も、ソフトドリンクで楽しく談笑に加わっていた。

そして18:50になると、剛は飲酒のペースが速過ぎたのか、少し2階で休んでまた来ると言い出した。19:40からはビンゴの司会をする予定だったが、長男の武にビンゴの進行を任せると言い、ビンゴ賞品一覧を武に渡すと、1人で階段を2階に上がっていったのである。

1階から2階に上がるには、広間から一旦廊下に出て、トイレとバスルームがある廊下を進んだ所にある階段を上る必要がある。つまり、広間からは誰が階段を上り下りしているかは見えない位置に階段があるのだ。


5

剛の死亡を確認した後、警察は、自殺と他殺の両面から捜査を開始し、事故の線は初めから除外された。全員がこの家にとどまるように言われたので、約20人が、広間で呆然と立ち尽くしたり、椅子に座り込んだりしていた。更に警察は、全員1階の広間にいること、トイレに行きたい時は警察官に申し出てから1人ずつ行くこと、そして誰とも話をしないでほしい、と要望してきた。他殺となった場合に、ここにいる約20人が何らかの情報交換をすることを防ぎたかったのである。この中に犯人がいるだろうから。


警察は検視と現場検証を終えると、遺体を搬出するとともに、この家に住む剛の妻の高野裕子と長男の高野武に、3つの部屋を借りたいと言いだした。全員から1人ずつ順番に話を聞きたいと言うのだ。それも、早急に行いたいので、3班に分けて対応したいというのだ。裕子と武は言われるままに、2階の剛の書斎と武の部屋と1階の応接間の3部屋を提供すると答えた。

つまり警察は、他殺となった場合はこの約20人の中に犯人がいると踏んでいるため、直ぐに帰宅を認める訳にはいかないので、全員に捜査への協力を求めたのだ。

警察から駆け付けた者達と後から捜査のために加わった者達の中から、聞き取り調査をする3班が組成されて、直ぐに聴取が開始された。警察側は1班3名、計9名が聞き取り調査班の体制だ。これとは別に捜査班も組成されて、邸宅内の捜査等が開始された。それでももう21:00を回っている。全体で約20人いるので、3班に分かれて同時に聴取が行われても、全体でどの位の時間がかかるのだろうかと思われた。

初めに、警察から予定として全員に説明があり、聴取を終えた人は、確実な連絡先を確認した上で、今日は帰って良いとされた。そして後日改めて連絡するのでその時も協力してほしいと言われた。


6

3班に分かれた聴取の先頭はそれぞれ、妻の裕子と長男の武と家政婦の本庄だった。そして次の、長女の島崎加奈子まで聴取を終えた時点で、警察は本件は自殺ではなく他殺であると断定した。剛には、今自殺をする理由が見当たらず、特に今日は剛本人にとっても大変喜ばしい日であった訳で、他殺と判断されたのはもっともなことだった。そこで高野剛殺人事件捜査本部を立ち上げた。

ごく稀に、人生最高の日に、自殺したいと思う人もいるのかも知れないが。

一体犯人は誰なのか? 約20人も皆、誰が犯人なのかと疑心暗鬼になっていた。犯人を除いては。


7

聴取が進むにつれて、屋敷内にとどまり呼ばれる順番を待つ人達は、いつまで待たされるのかと思うようになってきた。皆、広間の椅子に座っていたが、もう22:00を過ぎてしまったのだ。また、聞き取り調査を終えた人達は、そのまま帰途につくのだが、誰が犯人なのかも分からず、それでもこの約20人の中に殺人犯がいるのだと思うと、恐怖におののいた。


捜査班は、他殺の場合は、この約20人以外の人間が、例えば外部から侵入して剛を殺害することは不可能だと判断した。と言うのは、2階への階段に行くには、必ず玄関から1度広間を通り抜けて廊下に出てトイレとバスルームの脇を通らなくてはならない家の構造になっているためだ。勝手口から入った場合も広間に出るし、窓からの侵入については、全ての窓は施錠されていた。例えば1階か2階の窓を破って侵入したとしたらその痕跡が残っている筈だ。警察が確認した結果、1階も2階も外部からの侵入はないと判断した。なお付け加えておくと、家の中から誰かがどこかの窓の施錠を解除して外部から何者かが侵入し、剛を殺害して窓から脱出し家の中の人間がまた施錠したというような複数犯の可能性も否定された。


そして漸く、全員の聴取を終えたのだが、その途中で、2人、この騒ぎが起きる前に宴の場を去った夫婦がいることが分かり、それがたまたま隣人だったので、その2人も高野家に呼び出して聴取を終えた。青空雅史(35歳)と青空由紀(30歳)である。剛の家族達とこの2人を含めて、招待されたのは丁度20人だ。隣家のこの夫婦も、自宅に早目に帰ってくつろいでいた所、救急車とパトカーが来て大変なことになっているのを見て、剛が死亡したこと、そして殺人かも知れない、と、少しずつ情報が入り怯えていた所だったので、警察から聴取したいと言われた時はむしろ進んで協力し、もしも殺人であれば早く犯人を見つけて下さいと言っていた。

巷では既に、パーティーの席での主人死亡というニュースが飛び交い始めていた。


8

事件の翌日の2025/4/19(土)、テレビや新聞やSNSでは、大々的に前日のパーティー殺人事件として報道されていた。警察は、何者かが2階の剛の寝室内で剛の水割りのウイスキーグラスに猛毒の粉末を入れて、それに気付かずに水割りのウイスキーを口にした武が毒殺されたものであると断定し、剛はほぼ即死だったとした。

また、死亡推定時刻については、18:51頃~19:54頃の約1時間の間とされただけで、それは剛が広間を出て寝室に辿り着いた頃から本庄が広間で皆に叫んだ時刻から推定した時刻の範囲内ということしか特定できなかった。床のカーペットに落ちていた氷の溶け具合からも、はっきりとした殺害時刻を割り出せなかった。

報道では、死亡推定時刻は19:00頃~20:00頃の間とされていた。


そしてその後、警察が捜査を進めた結果、1週間後には早くも犯人を8人に絞っていたが、そのことは捜査機関内部だけの極秘事項とされ、外部に漏れることはなかった。報道では、

「犯人像はある程度絞られているのではないかという情報もありますが、詳しい状況は明らかにされていません」

とされていた。

パーティー出席者は剛を入れて21人であり、また、先に帰った隣人夫婦とは別の隣人である寺西信夫(50歳)がペットの雌犬1匹を連れて参加していたので、つまりは21人と1匹となる。この20人の中から1週間で殺人犯として8人に目星を付けた訳だ。

ここで、警察が疑った殺人犯人の言わば候補8人について、読者の皆さんだけに説明したい。今の所、内緒である。

なお、殺人犯候補と言っても、正確には殺人犯となり得る者を8人に絞ったということであり、8人全員が疑わしい動機をそれぞれ有しているというものではない。


①妻の高野裕子(60歳)

②長男の高野武(28歳)

③長女の島崎可奈子(30歳)

④家政婦の本庄久美(68歳)

⑤剛の友人の市橋孝次(60歳)

⑥剛の友人の霧島宗則(45歳)

⑦霧島宗則の内縁の妻木村多重子(40歳)

⑧長男武の友人佐藤文也(28歳)


上記8人以外は、殺害された高野剛(65歳)を除けば12名だが、いずれも殺人犯人として候補になりえなかったのだ。その理由は、事件の当日、これらの12人はいずれも剛を2階の寝室で毒殺することができなかったからだ。より端的に言うと、剛が一旦中座すると言って広間から抜け出した18:50から、剛が倒れていることを家政婦の本庄が全員に知らせた19:55の間に、この12人は、先に帰宅した2人を除いて1度も広間を離れていないことが確認されたのだ。


白とされたこれらの12人はどんな人達だったのだろうか? そのうちの6人を紹介すると以下のとおりだ。


⑨長男武の彼女の田岡美佐子(25歳)

⑩長女可奈子の夫の島崎一(33歳)

⑪長女可奈子の長女の島崎綾香(3歳)

⑫市橋の愛人の山根まどか(50歳)

⑬剛の妻の友人の三栗谷啓子(60歳)

⑭剛の妻の友人の和田育子(50歳)


それ以外の6人は既に出てきた、挨拶をした剛の友人3人、途中で宴を中座した隣人夫婦、犬を連れてきた隣人だ。


9

さて、ここからが、更なる犯人の絞り込みを行う局面となる。

警察は、血眼になって捜査を進めていた。

物理的に剛の毒殺が可能だったこれら8人については、動機はどうなのだろうか? この点も、捜査当局は、次第に明らかになっていく人間関係とともに、8人については複数回警察に呼んで確認を進めていた。

8人とも、自分は勿論殺していないと言い、捜査に協力する形で警察に出向いていた。

親族にとっては、一刻も早く犯人を見つけ出してほしい所だろう。またそれ以外の人達も、ここで捜査に非協力的な態度を見せればそれだけで怪しいと思われてしまうだろう。それもあってか、8人とも、少しずつ自分と剛との人間関係等を聞かれて話していたし、警察もあらゆる方面から8人の殺害動機有無や宴席での動き等を洗い出していった。あらゆる方面からとは、本人に聞くだけでなく、8人それぞれの友人等に内々に確認したり、これまでの素行調査をしたり、尾行したり、毒薬の入手経路を想定したり、だ。そして、事件当日の18:50~19:55の65分間が勝負な訳で、「魔の65分間」として8人の動きを細部まで確認していった。


10

8人のうち、2階で剛が倒れていることを1階に駆け下りて伝えた本庄以外の7人は、自分はトイレに行っただけで2階には上がっていないと言っていた。しかし警察は本庄を含むこの8人の中に必ず犯人がいると確信していて、本庄以外の7人についても同様に、特に「魔の65分間」について確認を進めていた。


それでも、先ず初めに疑ったのはやはり、住み込みで働いている家政婦の本庄久美(68歳)だ。自分で剛を毒殺してそのまま第一発見者を装うことは不可能ではないからだ。警察は本庄の可能性を調査していた。

本庄によれば、当日19:53頃に自分が剛の寝室に行くと、剛が倒れており、これは尋常でない出来事だと思って慌てて1階に駆け下りて広間で皆に叫んだという。そして、グラスが1つカーペットに転がっていて、液体でカーペットが濡れていたことは覚えているが、びっくりして気が動転して慌てて広間に戻ったので、それ以上のことはよく覚えていないという。

何をしに剛の寝室に行ったのかという質問については、最近、高野家の主の剛が自分に厳しく当たるようになり、嫌われているように思い、自分を首にしようとしているのではないかと思ったので、そしてあの日は剛がとても機嫌が良さそうだったので、これまで自分が誠心誠意高野家のために長年勤めた努力と実績を直接剛に話して、自分のことを首にしたり屋敷から追い出したりしないでほしいと言いに行ったのだが、剛が倒れていたという。


そして、本庄の線とは別に、警察はこれまでの捜査で、剛の友人の霧島宗則(45歳)について以下を突き止めていた。

以前から霧島が剛に多額の投資話を持ち掛けていて、剛もその投資を口頭で約束していた。そして3カ月程前に剛に金を振り込むように依頼した所、剛の反応が悪く、突き詰めて確認してみると、剛は約束を破り今回は見送ると言い出したのだ。これには霧島は慌てふためいた。というのも霧島は、自分の口座に振り込まれる金の多くを霧島の友人である金田吉蔵(44歳)に投資する手筈にしていたのだ。剛からの振り込みがなければその話自体がパアになってしまう。そのため霧島は度々剛のもとを訪れて、約束を守るように迫っていたのだ。しかし剛はあの話はなかったことにしてほしいと言い、霧島を遠避けるようになっていたのだ。そして霧島は自分が約束した金田から早く金を金田に振り込むように迫られているのだ。パーティーの4/18(金)の夕方は、霧島は招待状を握りしめてパーティー会場である剛のうちを訪ねたのだった。剛も半年前に全員に招待状を配っているので、今更霧島の来訪を断る訳にはいかなかったのだ。なお、警察はこのことを霧島を含めて誰にもまだ伝えていない。


11

また、剛の長男の高野武(28歳)にも、剛を殺害する動機があったことを警察は突き止めていた。剛が将来病気や老衰等で死亡するのを待ちきれずに、多額の相続財産を今にでも相続したいと思っていたのである。

武は大手広告代理店に勤務しているのだが、22歳に入社した時から、いずれは3億円の資金を貯めて独立し事業を始めたいと思っているのだ。3億円と言えばたやすく稼げる金額ではない。将来父親の剛が亡くなれば母と姉とともに相続することにより3億円をはるかに超える金額を自分が相続できることは昔から分かっているのだが、ここ3年位は、独立したいという気持ちが強くなり、何と2年位前からは父親を完全犯罪で殺害して相続すればその時点で独立して事業を開始するための資金が十分得られるという夢を描き始めてしまっていたのだ。ああ、何ということだ。武がこういった気持ちを抱くに至った背景には、幼少期に剛から虐待を受けていたことへの反発心があるのかも知れない。そして警察は綿密な捜査によって、武のその良からぬ計画を炙り出してしまったのである。警察の外部には言っていないが、これは遺産目当てによる殺人の犯人である可能性が高いと既にマークしていた。


そして、聴き取りを繰り返しているうちに、長男の武は、トイレに行ったと言う話と広間から席を外していた時間の辻褄が合わず、内山刑事からの粘り強い質問をかわせずに、結局、剛の寝室に行ったことを認めた。武によれば、19:20~19:35のうちの10分間、剛の寝室に入って話をしたという。

何をしに行ったのか? 内山刑事の質問に武は、ウイスキーのボトルと煙草を差し入れに行き、ビンゴゲームの司会をするように広間で突然頼まれたので、分からない点を聞きに行ったと答えた。

「分からない点とは?」

「自分が司会進行をやるとして、ビンゴ抽選機を回す人と、プレゼンターは誰がやるのかと聞きました」

「それで剛さんは何と答えたのですか?」

「それは適当に指名してやってくれと言われました」

「ふうむ」


12

更に、剛の友人市橋孝次(60歳)についてもまた、警察のこれまでの捜査で分かったことがある。剛から多額の借金をしており、剛からその返済を強く求められていたのだ。このことは、警察による多方面への捜査の中で分かったものである。もしも市橋が犯人の場合は、借金返済を迫られ続けていて、計画的に剛を毒殺したという動機を否定しきれない。但し警察は借金判明について警察の外部には言っていない。


13

さて、家政婦の本庄久美(68歳)についても、捜査を進めている中で、殺害動機となりうる話を警察がつかんだ。それは、本庄自身からの聴き取り時の話と重複する点が多いが、捜査で得た情報はもう少し辛辣だった。この所、主人の剛と折り合いが悪くなっており、次第に剛が本庄について辛く当たることが増えていて、更に剛は同居している妻の裕子と長男の武にも本庄のことを悪く言い始めており、家政婦を違う人に代えてほしいと妻の裕子に言っていたのである。本庄としては、長年高野家に住み込みで家政婦を務めてきており、今の家政婦の仕事を奪われると、住む場所も他を探さなくてはならなくなり、次の仕事のあてもないのでたちまち路頭に迷ってしまうのだ。このため本庄自身は剛からきつく言われても酷い態度であしらわれても極力我慢していたのだ。つまり、逆に言うと、自身の中では剛に対する嫌悪と恨みの気持ちが募っていたのだ。

しかし、そういった状態でも、いきなり毒殺するというのは話が飛躍し過ぎているとも思える。警察は本庄については慎重に捜査を進めていった。


14

その後、剛の友人市橋孝次(60歳)も、トイレに行っただけだという供述について細かく確認した所、隠しきれずに2階の剛の寝室に行ったことを認めた。市橋によれば、当日の19:10~19:20のうちの5分間、剛の寝室にいたと言う。何をしに行ったのかと問われると、警察が借金のことを把握しているとは知らない市橋は渋々と重たい口を開き、剛から多額の借金があることを白状し、滞り続けている返済の更なる猶予を相談して頼み込もうとしたが、その話はまた今度にしようと言われたという。それで5分位で寝室を出てやむなく広間に戻ったという。


15

「魔の65分間」に広間を出た8人のうち、これまでに述べてきた4人以外の4人は、いずれも、自らの意思であるいは誰かに依頼されて剛を殺害したという可能性はなくなった。と言うのは、警察の綿密な捜査により、広間を出てから戻るまでの時間が、単純にトイレに行って戻ってきたとしか言えない時間の長さだったことが分かったのだ。これは広間にいた複数の者達から得られた証言により辿り着いた結論である。例えば霧島宗則の内縁の妻である木村多重子(40歳)は、広間から席を外していた時間が約3分であることが分かり、その約3分で広間から廊下に出てトイレとバスルームを素通りして2階に上がり剛を毒殺して広間に戻ってくることは不可能と判断されたのだ。これは、警察の実験により、少なくとも5分はかかることが分かったためだ。


以上により、剛を毒殺した犯人になりうるのは、次の4人に絞られた。


①長男の高野武(28歳)

②家政婦の本庄久美(68歳)

③剛の友人の市橋孝次(60歳)

④剛の友人の霧島宗則(45歳)


この頃になって漸く報道では、犯人像は8人位に絞られた模様とされた。しかしどの8人位なのかは明かされておらず、これは端から見ればまだ20人全員が疑われているのと同じ状態だと言えた。警察は、対象者を明らかにしない理由を、捜査に影響することを避けるためとだけ伝えていた。


そしてその後、剛の友人の霧島宗則(45歳)についても、2階には上がっていないという供述にボロが出た。

実は近所の家の2階の窓から、剛の家の寝室の窓を通して霧島と剛が話している様子を、見られていたのだ。声は聴き取れないが警察がパーティー参加者の顔写真を見せた所、霧島の顔によく似ているとの証言を得たのだ。霧島とみられる男は剛に詰め寄って何かを言っているように見えたという。そして霧島と剛が口論しているように見えたという。時間帯は19:00~19:10の10分間で、その男が剛に送り出されて部屋を出て行くのが見えたので、近所の家人は窓の雨戸を閉めてそのまま何もしなかったという。

つまり、霧島は1階のトイレに行っただけと言ったのが噓だったことがバレてしまったのだ。霧島が犯人の場合は、その動機は投資の約束を反故にされたことへの恨みだと言えよう。それでも、霧島が部屋を出た時点では剛が生きていたことも分かった訳で、霧島が再度寝室に入ってきたのでなければ霧島は白ということになる。なお警察は、近所から見られていたことを霧島を含めてまだ誰にも伝えないでおいた。


16

所で、上記4人と、剛の親族は、剛の寝室の場所を知っていた。また、剛は毎晩寝室でウイスキーの水割りを飲みながら煙草を吸っていたのだが、そのことも知っていた。剛の寝室には小さな冷蔵庫と流し台まで付いていて、剛はいつも自分で氷を作って、気に入ったウイスキーを水割りで飲みながら煙草を吸っていたのだ。

剛の親族と住み込みで働いている本庄であれば、そのことを知っていても不思議はないが、剛の友人の市橋孝次と霧島宗則がなぜ知っていたかというと、市橋は、剛に多額の借金を頼み込んだ時も、その後剛から呼び出されて返済を迫られた時も、いつも夕刻に自ら剛のもとを訪れて、あるいは剛から呼び出されて、剛の寝室で2人だけで話をしていたのだ。その時いつも剛はお気に入りのウイスキーの水割りを飲みながら煙草を吸い、市橋にもウイスキーを勧めていたのだ。

そして霧島は、剛に多額の投資話を持ち掛けた時も、剛がその投資を口頭で約束した時も、剛が約束を反故にしたことを知り度々剛のもとを訪れて約束を守るように迫っていた時も、市橋と同様に、全て夕刻に剛の寝室で2人だけで話していたのだ。その際も剛はウイスキーの水割りを飲みながら煙草を吸い、霧島にもウイスキーを勧めていたのだ。

つまり剛は、そういった環境で2人だけで密談するのが好きで、大事な話はいつも夕方から晩にかけて寝室でしていたのだ。それは、剛と妻の裕子の寝室は今はそれぞれ別になっていて、剛としてはゆったりとした気持ちで話せるので、またこの寝室でこれまで数多くの仕事の企画話等をしてきて成功もしてきたので、そういった成功体験もその場の居心地の良さにつながっているのだと思われる。あとは、流し台と小さな冷蔵庫があるので大好きなウイスキーの水割りを飲みながら、また煙草を吸いながら話せる点もポイントが高そうだ。


つまり、今回は長男の高野武も友人の市橋孝次も友人の霧島宗則も家政婦の本庄久美も、それぞれ剛の寝室に1人で押しかけたことになる。しかも18:50~19:55の「魔の65分間」の間に4人が偶然入れ代わり立ち代わり。

偶然、人とすれ違ったりしていれば、もしかするとこの事件も違う展開になっていたのかも知れないが、今回は4人とも偶然1人だけで寝室を出入りしていたことが警察の綿密な捜査で分かった。


17

所で、4人が順番に剛の寝室に立ち入ったのであれば、剛が倒れていたのを見た本庄の直前に寝室に入った人が犯人か、あるいは本庄が嘘をついていて本庄が毒殺したかのいずれかということになる。本庄以外の3人は剛が生きていて話をしたと言っているので。

警察はこれまでの捜査の過程でも、勿論この点を特に重視しており、「立ち入り順問題」としてキーポイントにしていた。

立ち入り順はどうなっているのだろうか? これまでの全員からの証言と捜査の内容からは、現時点では以下が仮説となっている。


①19:00~19:10の10分間、霧島宗則

②19:10~19:20のうちの5分間、市橋孝次

③19:20~19:35のうちの10分間、高野武

④19:35~19:55の間のどこか、本庄久美


つまり、現在の仮説では高野武か本庄久美が犯人ということになる。

しかし、警察は決めつけることなく、4人について捜査を進めていた。


なお、使用された毒薬は4人とも入手可能と判断された。実際の入手ルートはまだ分かっていないが。


そして後日、霧島については、19:00~19:10に寝室にいた1度しか広間を抜け出しておらず、また18:58に広間から席を外して19:12には広間に戻って来ていることが複数の者の証言により判明し、白となった。そもそもは近所の家の2階の窓から寝室内の様子を見られていたことが、幸いにも霧島の疑いを晴らした1番の要因だと言える。そこで警察は霧島を呼び出し、トイレに行っただけという話が嘘であることを霧島に認めさせて、剛の寝室に何をしに行ったのかを問い質した。今回は霧島は正直に警察に答えた。投資話を反故にされたので、約束を守って速やかに投資するように改めて強く迫ったが、今日はそんな趣旨で招待したのではないと言われて、口論の末、結局は寝室から追い出されてしまったという。


18

本件の捜査本部は、次の3人が主要な役割を果たしていた。


①独眼竜一警部(50歳)

②佐伯正刑事(45歳)

③内山康之刑事(38歳)


彼らの執念深い捜査により、剛以外のパーティー参加者20人から3人に犯人の対象を絞ったことは、賞賛に値すると言える。なお、単独犯か複数の者による犯行かについては、前述した窓の施錠解除と侵入という方法の否定も含め、全体として単独犯であると断定された。


さて、これら3人の寝室への入室順番から見て、殺人犯の被疑者を武か本庄だと結論付けて良いのだろうか?

警察は、予断を持って捜査せず、また捜査当局が得た情報は疑わしい3人にも他の者達にも全く伝えなかった。それを伝えてしまうことによる証拠隠蔽や供述での工夫をされないためだ。

と言うことで、個別にコツコツと捜査を進めているうちに、ちょっとおかしいと思われる点が出てきた。それは、市橋孝次が剛の寝室に行ったという時間帯である19:10~19:20のうちの5分間という供述である。

実は、現在までの捜査により、長男武は、19:20~19:35のうちの10分間、自らウイスキーのバランタイン30年物のボトル1本と、煙草のJPS(ジョン・プレイヤー・スペシャル)1箱を持参して剛の寝室にいたと言うのだ。しかも彼は19:40からはビンゴの司会を務めているから、遅くとも19:38頃には剛の寝室を後にしているのだ。

ここで、武がバランタイン30年物とJPSを剛の寝室に持参した時に、剛は既に毎日飲んでいるウイスキーのジョニ(ジョニー・ウオーカー・ブラック・ラベル)の水割りを飲みキャメルの煙草を吸っていたという。そして武が差し入れだと言って、バランタイン30年物とJPSを剛に渡すと、剛は喜んでウイスキーも煙草も今直ぐに切り替えると言ったという。バランタイン30年物は剛が買って広間に設置したボトルを1本武が勝手に持ち出したものだったが。

それを裏付けるように、現場検証の際には確かに、床に転がったグラスの他に、テーブルの上にもう1つグラスがあり、その中にはジョニクロの水割りの飲みかけが入っていた。また転がったグラスとカーペットからは水と氷とバランタイン30年物と猛毒が検出された。ジョニ黒のボトルは棚の中に戻されていたようで、机の上にはバランタイン30年物のボトルと、JPSとキャメルの煙草ケースと、灰皿にはキャメルの吸い殻が2本あった。

問題は、もしも武の供述どおりだとすれば、市橋が寝室にいたと主張している19:10~19:20の間の5分間には、まだジョニ黒の水割りとキャメルの煙草しか寝室になかった筈なのだ。しかし市橋は先日、トイレは嘘で寝室に入ったことを認めた際に、テーブルの上にバランタイン30年物のボトルとグラス2個と、JPSとキャメルの煙草ケースがあったと供述したのだ。これはおかしい。

近所の人から窓の外から寝室にいる所を見られて嘘がバレた霧島によれば、19:00に寝室に入った時に剛はジョニ黒の水割りを飲みキャメルの煙草を吸っていたと言っているのだ。その点は武の供述と一致する。これは、市橋が何か嘘をついているのではないだろうか?

警察は慎重に検討・準備して市橋を改めて警察に呼び出した。

「バランタイン30年物のボトルがあったというのは間違いないのかい?」

「テーブルの上にグラスが2個あったというのも間違いないのかね?」

「テーブルの上にJPSとキャメルの煙草ケースがあったというのも記憶違いではないかい?」

この時は独眼竜一警部(50歳)と佐伯正刑事(45歳)の2人で聴取し、1つずつ再確認として上記の3つの質問をしたが、市橋はいずれも確かな記憶だと言った。


「テーブルの上には灰皿と煙草もあったかい?」

「あったと思いますが、よく覚えていません」

市橋を帰らせた後で、捜査本部は慎重に分析して、市橋が寝室に入った時間帯が、武が寝室を出た後なのではないかという疑いに確信を持った。いや、そのように疑っていたので改めて市橋を呼んで市橋の記憶を確認したのだが。警察の疑いは正に的を射ていたことが分かったのだ。但し、警察の外部には言っていない。


次に独眼警部は、内山康之刑事(38歳)に指示して本庄久美を改めて警察に呼び出した。本庄は、自分が疑われているうちの1人だと察知していて、当日の様子を繰り返し供述したが、供述内容は当初からの同じ内容を繰り返すだけであった。


19

結局、市橋は、霧島が寝室から出た19:10から武が寝室に入った19:20の間に寝室に入ったのではなくて、つまり、「19:10~19:20のうちの5分間」ではなくて、武が寝室から出た後に寝室に行って、そこで倒れている剛を見たか、あるいはそのタイミングで自分が剛を毒殺したのではないか? そう考えれば、市橋が見たと言うバランタイン30年物のボトル、JPSとキャメルの煙草ケース、等という全ての内容が辻褄が合うからだ。市橋が供述している19:10~19:20の間であれば、ジョニ黒のボトルとキャメルの煙草ケースの筈だからだ。

この点は警察の大きな注目点となった。市橋は、「19:10~19:20のうちの5分間」に剛と会ったのではなくて、武が寝室から出たと言っている19:35頃の後に寝室に入り剛を殺害したのではないか? それで、そのことを誤魔化すために、自分は早い時間帯に寝室に行ったし剛を殺していないと嘘をついているのではないか? 倒れている剛を本庄が発見したのだとすれば、本庄の直前に寝室に入った者が犯人だと疑われるだろうから。この時点で市橋は霧島と武が寝室に出入りしたことを知らずにいるが、本能的に早い時間帯に寝室に出入りしたと供述したのでは? 以上により、「立ち入り順問題」からの答えとしては、犯人は本庄か武ではなく、本庄か市橋ということになるのだろうか?


20

ここで2点触れておくと、剛の邸宅内には監視カメラは設置されておらず、また剛の寝室のドアノブと寝室内の指紋については、複数名の指紋が検出されたが、床に転がったグラスからは剛の指紋しか出てこなかったという。指紋の現れ方は、全体として、ほぼ4人の供述からみて想定される結果だと言えた。


そしてその後の捜査により、犯人は市橋か武のいずれかに絞られた。と言うのは、本庄は、19:55に広間で皆に大声で叫んだのだが、本庄が広間を離れたのが19:51であったことが後になって証明されたのだ。前述した霧島の内縁の妻である木村多重子が離席が3分間のため白だと確定した理由と同じで、警察の実験結果として、広間からの出入り時間が4分間でも剛を殺害することはできず、少なくとも5分間が必要なのだ。本庄には、隣人の寺西信夫(50歳)が連れて来ていた小型犬の雌犬ミミが以前からよくなついており、ミミにじゃれつかれてその相手をして、その後19:51に広間から出たことが、複数の客達の証言で分かったのだ。これは正に、その時ミミにじゃれつかれたことが周囲から目立ったためであり、それが本庄の白を証明する決め手につながったと言える。ミミ様様だ。本庄さんよ、これからもミミのことを可愛がってあげよう。


21

さて、ここからが、捜査本部の腕の見せ所である。

初めに犯人が8名に絞られた時に、本庄以外の7人はいずれもトイレに行っただけで2階に行っていないと言っていた。しかしその後本庄を含む4人に絞られてからは、武、市橋、霧島の3人とも警察の捜査により、剛の寝室に入ったことを認めざるを得なくなったのである。そして今、漸く犯人が市橋か武かの2人に絞られたのだが、なぜ2人とも初めは嘘をついていたのだろうか?

捜査本部はこの点、4人に絞った時点で次のように考えた。犯人であれば、証拠がない以上、トイレにしか言っていないと嘘をつくであろうし、犯人でなければ、一般には寝室に入ったと言うだろう。しかし犯人でなくても、人によっては、犯人と間違われたくないため、またこれ以上関わりたくないため、トイレにしか言っていないと嘘をつくこともあるだろう、と。また、結局は4人とも剛を殺害する動機と想定できる事情を抱えていたので、なおさら一層、動機があったと思われたくないことから、またそれが理由で剛の寝室に入ったと疑われたくないことから、広間で叫んだ本庄以外の3人は、剛の寝室には入っておらずトイレにしか言っていない、と嘘をついたのであろう、と推察した。

そして今や残るは市橋か武の2人である。どちらが犯人なのか?


警察は、捜査の進展状況を外部に漏らしていないので、以前、犯人像は8人位に絞られた模様と報道されただけで、犯人として疑われているのは実は何人に絞られているのかとか、寝室に出入りした人とその順番はとか、正式には一切明らかにされていない。よって、市橋も武も、もしも犯人であれば、どの位自分に捜査が迫っているのかが分からないので冷や冷やものだろう。


この点、現時点では市橋が最も疑わしい。なぜ寝室に入ったことがバレた時点で今度は時間帯について嘘をついたのか? 市橋にはまだ寝室にいた時間帯の供述が嘘であると警察が断定している点について何ら言っていない。これはつまり、市橋と武を両睨みしつつ、2人かそのうちの1人から、更なる何らかの綻びを見出したいと思って捜査を続けているのである。

もしも市橋が犯人でないとしたら、武が犯人だ。しかしそうであれば、市橋はなぜ剛が倒れているのを発見したのに黙っていたのか? それは恐らく、そもそも武の寝室に入ったと言いたくなかったからだ。そして寝室に入ったことを認めざるを得なくなった時点で、今度は倒れている剛を見たと言いたくなかったから早い時間帯に会って元気な剛と話をしたと嘘をついたのだろうと推察された。

逆に、もしも武が犯人でないとしたら、市橋が犯人だ。その場合は、市橋は自分が殺したと言いたくないから、トイレしか行っていないとか、早い時間帯に会って元気な剛と話をしたと嘘をついたのだろうと推察された。つまり、市橋は犯人であっても犯人でなくても、嘘をついた理由は表面的にはさほど変わらないように思える。いずれにしても、動機があるから隠したいと思った、と言えるので。この状態では分かりづらいし答に辿り着かない。

一方、武は犯人であっても犯人でなくても、トイレしか行っていないと初めに嘘をついた点以外は供述内容に今の所変化はないので、これまたこのままでは埒が明かない。

そこで警察は、市橋を呼び出して、詰めの質問を行った。


22

独眼警部は切り出した。

「あなたが高野剛さんの寝室にいたという時間には嘘がありますね?」

独眼警部の口調は、静かだが整然としており、次第に市橋は追い詰められていった。

そして、寝室に入ったこと自体は認めている市橋は、ここでとうとう、土俵を寄り切られた力士のように、

「はい、寝室にいた時間は本当は19:42~19:43の1分です。19:40にビンゴゲームが始まった19:40に広間を出て、19:45にはまた広間に戻りました」

と正直に言った。そして、

「その時、高野剛さんはどんな様子でしたか?」

「……寝室で俯せに倒れていました」

「そうですか。それではなぜ今までそのことを黙っていたのですか?」

「それは、……。私が高野さんから多額の借金をしているので、それで私が高野さんに何かしたと疑われるのが嫌だったからです」

「でも、その時正直に言ってくれればこんな話になっていないですよね?」

「済みません。あの時は気が動転していて。それで、元気な高野さんに借金返済の猶予をお願いしようとしたが、その話はまた今度にしよう、と断られたと言ってしまったのです。倒れている高野さんに関わりたくなくて、自分が何かを疑われたくなくて」

「うう~ん」

独眼警部は暫く黙り込んだ。そしてまた口を開いた。

「あなたが犯人ではないことを証明できますか?」

「……いえ、その場には他に誰もいなかったので。でも警部さん、信じて下さい。私は誰も殺していません」

「それではあなたは犯人は誰だと思いますか?」

「それは分かりませんが、とにかく私よりも先に寝室に入った人です」

「ええ、そうでしょう。……分かりました。ありがとうございます」

その日は帰した。


所で、寝室に入った4人はお互い誰とも鉢合わせにならなかったが、他にも「魔の65分間」にトイレに行った人間が4人いる。この4人とも誰も会わなかったのか?

この点は警察の詳細な確認により、結果として誰も会っていないことが分かった。

「魔の65分間」に広間から出入りした8人の動きを時系列に記すと次のとおりとなる。


① 18:50~19:00のうちの3分間位、武の友人の佐藤文也(28歳)

② 18:58~19:12のうち10分間寝室にいた、霧島

③ 19:10~19:20のうちの3分間位、武の彼女の島崎可奈子(25歳)

④ 19:20~19:35のうちの10分間寝室にいた、武

⑤ 19:35~19:40のうちの3分間位、霧島の内縁の妻の木村多重子(40歳)

⑥ 19:40~1945のうちの1分間寝室にいた、市橋

⑦ 19:45~19:52のうちの3分間位、剛の妻の裕子(60歳)

⑧ 19:51~19:55の4分間、本庄


正に分刻みの出来事であったが、偶然にも、この8人は誰とも会っていないのである。と言っても、トイレは広間から廊下に出た直ぐの所にあるのと、1階の廊下で出くわさない限り、例えば2階の寝室に誰かがいてかつ1階のトイレか廊下に他の誰かがいても、お互いに会うことはない訳だが。

特に、19:10~19:20のうちの3分間位である武の彼女の島崎可奈子は、当初市橋が19:10~19:20のうちの5分であると嘘を言っていたので、よくも鉢合わせにならなかったものだと思われていたのだ。実際には市橋は19:10~19:20の時間帯は出入りしていないことが後で分かったのだが。


さて、これまでの捜査により、市橋か武が嘘をついていてどちらかが剛を毒殺したことが警察の推定どおりとなった。しかし、このまま犯人がとぼければ、新しい証拠でもなければこのまま真犯人を突き止められなくなってしまう。


報道では、犯人像が4人程度に絞られたようだという未確認情報が流されたが、その後の捜査が難航しているのではないかという強い推測がなされていた。

そのような状態で、何とそのまま数カ月が経過してしまった。


23

「独眼警部、大変です!」

部下の内山康之刑事(38歳)が部屋に飛び込んできた。

「おお、どうした?」

内山刑事によると、高野剛殺人事件捜査本部の捜査班に入った情報として、パーティー当日に行われたビンゴゲームについて新たな重大証言があったというのだ。


ビンゴゲームは殺人事件当日のパーティーの中で、19:40から始まり、家政婦の本庄の叫び声により、19:55に突然中断されたものだ。


事件当日、警察に通報した際に、高野邸にある物には触らないように警察から注意されていたため、先に帰宅している近隣夫婦2人を除く18人は皆、辺りの物に触れずにいたのだ。そして要は、捜査の中で捜査員が武から提出させたビンゴゲームの賞品一覧には書かれていない賞品が1つ存在することが先程分かったというのだ。


一体全体、何の話か? 独眼警部は、初めは何が問題なのか分からなかった。しかし、内山刑事からの話を聞くにつれ、次第に顔色が変わり、両方の目をギラつかせて、内山刑事の顔を食い入るように見るようになっていった。


実は今日、とある骨董品店の店主から警察に連絡があり、以前骨董品の壺を高野剛に売ったのだが、ちょっと気になる点があり念のため連絡したと言うのだ。

内山によれば、高野剛殺人事件の2カ月程前に、高野剛が以前から親しくしていた店主の店を久し振りに訪れて、何か良い壺はないかと聞かれ、その後1つの高価な壺を紹介した所、剛はそれを気に入り、暫く確保しておいてほしいと頼まれ、結局事件の1週間位前にそれを買って自宅に持ち帰ったと言うのだ。そしてその翌日には約束どおり高額の壺の代金が振り込まれたという。

その後、ニュースで剛が毒殺されたことを知り、壺は無関係だとは思うが、犯人がなかなか特定されないと知り、念のため警察に連絡すべきか迷っていたそうだ。

その壺はかなり高価な物で、剛は今度自宅でパーティーを開催するので、その時のビンゴゲームでサプライズ賞品にすると言っていたという。そして、誰にも言わずに企画するので、黙っていてほしいと言われたというのだ。

代金も振り込まれているし、既に売買が完了しているので、敢えて話す必要もないと思っていたが、最近、そのパーティーに出席していた知人とたまたま話をしていた所、宴会の初めからビンゴゲームの賞品を陳列していたテーブルに壺はなかったと言われて、おや? と思い、念のため警察に連絡してきたのだと言う。


その後警察は高野邸に行って、家の中を探させてもらった。そうした所、何とその壺が剛の寝室の納戸の中から出てきたではないか。独眼警部は、その壺と、もう1つ、ある物を押収するとともに、この新たな事実に着目し、再度事件当日の全21人の動きを洗い直させた。


その結果、内山刑事による検討を基にして、捜査本部は事件当日の流れとして次の仮説を打ち出した。


① 事件当日、剛は、18:50に広間から1人だけ抜け出て寝室に行き、サプライズ商品である壺を、ビンゴゲーム開始の19:40までに自ら寝室から1階の応接間に運んで隠そうと思っていて、自分もビンゴゲームに初めから参加しようと思っていた。つまり1週間最も隠しておきやすい寝室の納戸に隠し、ビンゴゲーム開始前に広間に近い1階の応接間に隠そうと思っていた。そうでなければ、賞品であるその壺を渡す時に初めて寝室に壺を取りに行けば良い訳で、事前に寝室に行く必要はないからだ。周りに少し2階で休んでまた来ると言い残したのも、煙草を吸いたいこともあり、少し1人でくつろいでから壺の移動をしようと思ったのかも知れない。高野家には喫煙者は剛しかおらず、高野邸では剛の寝室と応接間以外は禁煙だったのだ。そして武にビンゴゲームの司会をやらせて自分はビンゴ抽選機を回してプレゼンターを務めるつもりだった。全賞品を配り終えた所で、最後に自らサプライズ賞品としてもう1品あると宣言して、その場で武から司会を取って代わり、自分以外の20人中ビンゴゲームで何も当たらなかった人達10人だけに、ジャンケンゲームをさせて、先ず隣にいる人同士の2人でジャンケンをして、次に勝ち残った5人全員でジャンケンをして、最後まで勝ち残った幸運の1人が決まった時に、剛は皆を待たせて応接間に隠した壺を取りに行き、戻った時に初めてこの高価な壺を皆に披露して、その勝者にプレゼントする計画であった。これは正に、残り物に福があるという賞品ともいえる訳だ。骨董品の高価な壺なので、正にサプライズ賞品だと言える。

② 剛が寝室でジョニ黒の水割りを作って飲み、キャメルを吸っていた所、19:00に霧島が急に寝室に入って来たが、10分間で追い出した。

③ 更に19:20~19:35のうちの10分間、これまた突然武が寝室に入って来て、バランタイン30年物とJPSを持参した。そして剛は飲んでいたジョニ黒を棚にしまい、吸いかけのキャメルの火は灰皿で消して、ジョニ黒の入ったグラスは脇に置き、バランタイン30年物の水割りを作って飲み始めた。武は、自分が司会進行をやるのは良いが、ビンゴ抽選機を回す人と、プレゼンターは誰がやるのかと聞いた。剛はビンゴ抽選機を回すのとプレゼンターは自分がやると答えた。その時壺のことは武にも言わずにいたが、会話の最中に武が剛に分からないようにグラスに毒薬の粉末を入れて、剛はそれに気付かずにグラスを口にしてしまい、毒殺された。

④ 武は何事もなかったかのように広間に戻ると、19:40からビンゴゲームの司会を開始した。

⑤ その後19:42に市橋が寝室に入った所、剛が倒れているのを発見したが、自分が何かを疑われることを恐れ、見て見ぬ振りをして19:43に寝室を出て広間に戻った。

⑥ その後、19:53に本庄が寝室に入った所、剛が倒れているのを発見して、広間に駆け込んで19:55に叫んだ。


この仮説のとおりなのかも知れない。

それで壺は応接間に持ち出されることなく寝室内に隠されたままになっていたのだ。

そして武も壺のことは知る由もなく、19:40から賞品一覧を見てビンゴゲームを始めたのであろう。剛がいないので、ビンゴ抽選機を回す係とプレゼンターを突然その場で指名したのだ。抽選機を回すのは自分の友人の佐藤文也(28歳)に、プレゼンターは自分の彼女の田岡美佐子(25歳)にお願いした。

つまり、剛が再度登場する筈の19:40までのタイミングで広間に現れなかったのは、その時点で既に武に毒殺されていたと言うのが客観的に説明のつく内容だ。ビンゴゲームは実際には2等賞まで発表されて賞品が当選者に渡された所で急遽中止となったが。そして市橋は19:42に寝室に入った訳だが、まだ剛が1人で何事もなくそこにいて、そのタイミングで市橋が毒殺したというのは不可解な推理だと思われるのだ。なぜ剛はビンゴの抽選機役とプレゼンターとして広間に行かなかったのだ、となるから。


24

仮説を策定した3日後、独眼警部は内山刑事に指示して、高野武を警察に呼び出した。この時は、独眼警部、佐伯刑事、内山刑事の3人とも揃っていた。

内山が武に尋ねた。

「ビンゴの賞品は全部で幾つあったか覚えていますか?」

「……ええと、確か10個だったと思います」

「そうですか。それではお見せしますが、これが当日のビンゴゲームの賞品一覧のコピーです」

内山が差し出した1枚の紙には、ワープロの一覧表に以下のように書かれていた。


賞品(10人)

1等: ローレックス腕時計 1人

2等: ミニステレオセット 1人

3等: ××ホテル1泊2日ペア宿泊券 1(ペア)

4等: ウイスキー バランタイン30年物 2人

5等: 商品券 5人


要は、剛以外の20人中10人が当たりになり、初めの1人が1等、というもののようだ。

とにかく、豪華賞品だ。剛がニヤニヤしながら商品を調達していた様子がまるで見て取れるようだ。相当奮発している。自分の仕事の大成功がよほど嬉しかったに違いない。

それで、警察による事件当日の20人の聴取においても、皆、口々に、ビンゴゲームが始まると、広間は熱気の渦に包まれたと言う。先に帰宅した近隣夫婦はビンゴゲームに参加していないので、ビンゴゲームの熱気を語ったのは、長女の島崎可奈子の娘である幼い島崎綾香(3歳)を含めると18人だが。

なお、バランタイン30年物のボトルは賞品の2本以外にも2本、パーティー用に飲み物用のテーブルに用意されていた。そのうちの1本を武が勝手に拝借して2階に持参した訳だが。

19:40から始まったビンゴゲームは、2等まで当選者が決まり、広間には歓声とどよめきと溜息が洩れていたという。そして19:55に本庄が広間に飛び込んで来た訳だ。


「これ以外にも賞品があったのではないですか?」

「いいえ、ここに書かれている10個で全部です。もっとも、2等賞の賞品を当選者に渡した後で、本庄さんが駆け付けて来て叫んだので、ビンゴはそこで中止になってしまいましたが」

「そうですね。但し、その後の調べで、何と剛さんはもう1つサプライズとして豪華賞品を準備していたことが分かったのですよ」

「えっ?」

内山は、静かに武の目を見つめて言った。

「剛さんは、19:40までに寝室から1階の応接間に骨董品である高価な壺を運ぶ予定で、自分も初めから参加する予定だったビンゴゲームが全て終わったタイミングで、自らサプライズで最後にジャンケンゲームをやろうとしていたのではないでしょうか?」

「ええっ? 僕は何も聞いてませんよ。……宴会の途中で急に、ちょっと2階で休んでくるので、後でまた戻るけど、と言ってビンゴ賞品一覧を渡されて、19:40からのビンゴの司会進行をやるように頼まれただけですし」

武は明らかに動揺していた。両手が小刻みに震えて、両目を大きく見開き、顔色はみるみる青ざめてきた。武はなぜ慌てているのだろうか?

内山は続けた。

「司会進行を頼まれたとのことですが、ビンゴ抽選機とプレゼンターについては剛さんとはどのような話になっていたのですか?」

「それが分からないから父に聞きに行ったのですが、この前も言ったとおり、適当に指名してやってくれと言われたんですよ」

内山はここでおもむろに、捜査本部が打ち立てた仮説を書いた紙を取り出して読み始めた。武は驚いたような顔をしてそれを聞いていたが、仮説が読み終わると、怒ったように言った。

「何を証拠にそんな出鱈目を言っているんですか?」

「ふふ~ん。……実は、剛さんが寝室に隠していた壺の中から1枚のメモが見つかりましてねえ。それには次のように書いてあるのですよ」

内山はそのメモを取り出してそのまま読み上げた。


「~19:40、応接に移動

19:40~ビンゴ

司会:武に頼む

ビンゴ抽選機、プレゼンター:剛

ビンゴ終了直後、サプライズ賞品ありを発表、司会・プレゼンター:剛」


武がわなわなと体を震わせている様子が嫌でも見て取れた。武としては正に開いた口が塞がらない状態だ。

つまり剛は19:40から自らビンゴ抽選機とプレゼンターを務めようとしていたのだ。当選した10人に賞品を渡しながらそれぞれ何か声をかけて祝おうと思っていたのだろう。そして最後にサプライズだ。20人中、いや正確には早帰り夫婦を除く18人中、何も当たらなかった8人ががっかりしているのを見た上で、それこそ意気揚々とジャンケンゲームの司会を始めたに違いない。しかし、19:40までに広間に来れなかったのは、そしてサプライズ企画も実現できなかったのは、正に、その前に毒殺されてしまったからだと言うのが捜査本部の仮説である。


25

そのメモは剛の筆跡だった。これが剛の予定と現実の差異を物語る決め手になった。

武は立っていることができずに、膝をついてうずくまってしまった。

捜査本部の仮説が所々断定的で、武は何をもってそんなことを決めつけるのかと思っていたのだが、剛のメモが全てを解決してしまったのだ。


被疑者逮捕とのニュースは、正に電撃的に日本中を駆け巡った。あまりにも急過ぎたので、唐突な感じさえしたのだ。


その後、結局武は全てを自白した。完全犯罪を目論み、4/18の大勢集まるパーティーが絶好のチャンスだと思い、当日まで1人で準備してきたのだ。仮に剛がずっと1階の居間にい続けていようとしても、武は剛が1人で寝室に行かざるを得なくなる手立てを幾つも用意していたのだ。たまたま剛が不意に2階に行くと言って離席したのだが、武から見ればそれは自分の策略を実行するまでもなく剛がわざわざ武の仕組んだ罠に向かって行ってくれたようなものだった。いずれにせよ剛が2階の寝室に行った後で武も寝室に行き、その場で毒殺するつもりだったのだ。


何という恐ろしい話だ。しかし、剛が残した1枚のメモが、武の完全犯罪を瓦解させたのだ。


所で、本件には本人の自白と状況証拠はあるが、今の所警察は決定的な直接証拠をつかめていなかった。しかしその後、武は毒薬の入手経路も自白し、補強証拠も揃い起訴されて、裁判の結果、裁判所は武に対して、この遺産目当ての実父毒殺事件において、殺人罪で懲役20年の実刑判決を下した。


武は控訴、上告したが、いずれも棄却され、武の刑が確定した。武が起訴されてから約2年後のことだった。


今は武による剛の恐ろしい毒殺事件から5年が経過する2030年。刑務所内の武は今、何を思うのだろうか?


-完-

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