べっ別にトイレ行きたいわけじゃないんだかねっ!
高校2年生のツンデレ女子・天宮ひかりは、何かにつけて“強がり”が止まらない。
学校でトイレに行くのも「トイレなんか別に行きたくないんだからっ!」と言い張るほどのこじらせっぷり。
ある日、クラスで不可解な「空間の歪み」現象が発生。トイレに行こうとするたびに謎の転送現象が起きて、なぜか異空間にワープしてしまう体質になってしまう。
その空間には「本当の気持ちを隠したままでは出られない」という不思議なルールがあり、ツンデレのひかりは毎回大苦戦。
一緒に巻き込まれるのは、幼馴染で同級生の男子・秋月蓮。彼はひかりの“本音”を見抜く天才で、昔からずっと彼女のことを見守っていた。
「本音を言わなきゃ出られない」空間で、徐々に近づく2人の距離。
「別に、あんたのことなんか、好きじゃないんだからね!」というひかりのツンデレセリフに、何度も命を救われる秋月。
果たして、ひかりは本当の気持ちを伝えられるのか?
そして、この「空間」の正体とは――?
第1話「別にトイレ行きたいとかじゃ…!」
「べ、別にトイレ行きたいとかじゃないんだからねっ!」
教室の片隅で足をもじもじさせながら、天宮ひかりは顔を赤らめた。
「へえ、でもすっごく足パタパタしてるけど?」
にやにやと声をかけてくるのは、幼馴染の秋月蓮。無表情に見えて、彼のからかいスキルは天性のものだ。
「ちょ、ちょっと黙っててよ!別に我慢してるわけじゃ…っ」
立ち上がったその瞬間、空気がぴたりと止まった。
「……え?」
床がゆがみ、視界がねじれ、教室が消えた。
気づけばそこは、空に便座が浮かぶ謎の空間。風がやたらと爽やかに吹いている。
「……なんで!?どこここ!?どこにもトイレないじゃん!」
「ようこそ、感情認証空間へ」と、謎の案内板がふわりと現れる。
「本音を隠したままでは、この空間から出られません」
「う、うそでしょ!?ツンデレに死ねって言ってるようなもんじゃん!!」
焦るひかりに、どこからか聞こえる蓮の声。
「ひかり、素直になれ。お前、トイレ行きたいんだろ?」
「い、言えないっ!そんなのっ、絶対ムリ――っ!」
強がるひかりの前に、便意と異空間の謎が立ちはだかる。
トイレへの道のりは、想像以上に遠かった。
──ツンデレ×トイレ×異空間コメディ、はじまります。