姫、プール掃除で水の精霊とバトル!?水着回なのに全員ずぶ濡れです
「――で、なんで私がプール掃除担当なのよ!!」
両手にデッキブラシとバケツを構えた私は、目の前の広大なプールに絶望していた。
「学園祭で『演劇中にグリフォンが突っ込む』って前代未聞の事件を起こしたでしょ? 反省文とプール掃除がセットなのよ、リリィ姫」
呆れたように腕を組むのは、生徒会長ルミナ。
ちゃっかり日焼け止め塗ってるあたり、準備がいいというか……いや、日焼けするの?
「ていうか、この世界の反省ってスケールおかしくない!? プールっていうか、湖レベルじゃん!」
「安心しろ。ちゃんと人数は確保してある」
そう言ったルミナが指さす先には――
「リリィ様あああああ! 水着姿がまぶしすぎて直視できませんの~~~!!」
ミラ、やる気全開(そして水鉄砲を手にしている)
「やっぱり面白そうな匂いがするって思ってたんだよね!」
現れたのは、トラブルセンサー高すぎる同級生・ノエル(通称:爆発フラグ製造機)
「水……掃除……濡れる……ふふ、私の時代が来たようですね……」
どこから現れたのか、薄暗い雰囲気を放つ少女・クラリスがバケツとスポンジを持ってスタンバイしていた。
……うん、戦力どころか危険度が跳ね上がってるんだけど!?
【掃除開始・5分経過】
「リリィ様! 泡立て過ぎてプールがスライムまみれですわ~~!!」
「どんな洗剤使ったのよ!?」
「異世界から持ってきた『無限泡立ち魔法石』ですわ!」
「出自がまずいよ!!」
そのころ――
「ルミナ、なぜ私がプールの底を磨かされているのですか?」
「静かだったから黙って押しつけた」
「この恨み……水に流せませんね……」
クラリスの目が光る。こわい。さすが、呪詛系ヒロインNo.1は格が違う。
【掃除開始・20分後】
バシャアアアアン!!!
「うわっ!? プールの水が……勝手に逆流して……」
「これは……まさか、水の精霊の怒りですわッ!!」
「ええ!? 精霊!?」
すると、濁ったプールの中央から、巨大な水の蛇のようなものが現れた!
「ぬしら……この水場を、穢す者よ……退去せよ……」
「この流れ知ってるーーーっ!! RPGでよくあるヤツーーー!!」
ミラ、ノエル、クラリス、私、そしてルミナ。
謎の戦闘BGM(なぜかノエルが流してた)と共に、謎の水バトル開始!
「泡よ! 舞い上がれ! 泡エクスプロージョン!」
ノエルが泡を爆発させて敵の視界を封じ――
「水底の呪い――ずぶ濡れにな~れ~」
クラリスが謎の呪文で敵のバランスを崩し――
「必殺! スーパー水鉄砲フルパワーモード!!」
ミラが無駄に派手な武器で蛇精霊を追い詰め――
「やれ、リリィ! 君の必殺技を!!」
「そんなんないっての!!!」
――しかし、私は覚えていた。異世界の王女として、水精霊に語りかける浄化の詠唱を。
「水よ、流れよ。命を潤し、心を鎮めよ。――我が声に、応えたまえ」
蛇精霊が、ふと動きを止める。
「この声……確かに、あの時の……白の血脈か……」
「えっ、私そんな血筋なの!? 知らなかったんだけど!」
「……良かろう。今日のことは水に流す」
「うまいこと言わないで!!」
【戦闘終了・結果】
・プール:浄化完了
・皆:びしょ濡れ
・クラリス:満面の笑み(ちょっと怖い)
そしてなぜか、掃除の頑張りが評価され、私たちは、学園美化週間特別賞を受賞した。
賞品は――
「焼きそばパン一年分ですわぁぁあああ!!」
「結局パンなのかよーーーーっ!!」