姫、決闘大会で爆笑大乱闘!? ライバルも味方も大迷惑!
決闘大会、当日――。
「おいミラァアア!! なんで私の制服がフリフリ戦闘モードになってるの!?」
「え、可愛いでしょ? 試合はビジュアルが八割って師匠が言ってた!」
「誰よその師匠!?」
ミラ=バズライトの手によって、私の制服はなぜか「魔法プリンセス仕様」に改造されていた。
ピンクのレース、ハートのワッペン、背中に意味不明なウィング……
「ねえこれ、どこ押すと飛ぶの? ていうか爆発する仕様じゃないよね?」
「飛ぶのは心だけだよ!」
「名言っぽく言わないで!?」
そんなこんなで、私は爆発寸前の格好で観衆の前に立たされていた。
「よおおおし! 決闘大会、第一試合――魔王の娘 vs 氷の女王、開始ィィィ!!」
実況はやたらテンションの高い放送部員。なぜか観客席には屋台も出ている。
まるでお祭りだ。いや、もはやカオスの前夜祭。
「……覚悟なさい。魔法が使えないくせに、なぜこんな場に出てきたのか後悔することになるわ」
クラリス=エーデルヴァイスは、白銀の杖をスッと構え、スカートすら乱れぬ動きで魔法陣を展開する。
「はっ……《氷華結界・フロストバインド》」
ゴオォォォオ……!
地面が瞬く間に凍結し、私の足元まで氷が這い寄ってくる!
「ちょ、ちょっと待って! 氷は聞いてない! 私まだ魔法、名前も決まってないのに!」
「ならば、凍るがいいわ――」
「ちょっとストーップ!!」
そのとき――。
ドカァン!!!
審判席が爆発した。
「誰だぁ!? 今爆発させたの!!」
「ご、ごめん間違えて審判ボタンじゃなくて爆裂スイッチ押しちゃったー!」
声の主はもちろんミラ。
「審判席に爆裂スイッチつけるなああああああ!!!」
「てへ☆」
会場は騒然。クラリスも一瞬呆気に取られ、魔法の構えを解いてしまう。
これは……!
「ミラ! 今だ! 魔法を!」
「うん! はい、これが最新型! 《もしかしたら出るかもしれない魔法玉》!」
「名前からして信用できないけど! もらう!!」
私は勢いでその玉を掲げ、思い切り叫んだ。
「いっけえええええ!! なんか出てええええええ!!」
――ポワン。
魔法玉が光り、空中で炸裂――
ズドォォン!!
なんかすごい派手な光と共に巨大なウサギの幻影が出現し、クラリスの氷魔法を綿毛まみれにした。
「ふわっ……な、何このウサギ……鼻が……むず……ハ、ハクション!!」
完全にアレルギー反応を起こすクラリス。
観客「ヒエッ、ウサギすげぇ……!」
審判(生き残った方)「試合終了ォ! 勝者、リリィ・ゼオス!!」
やった……!
いや、なんか実力じゃない気がするけど、勝った!!
その日の昼休み。
私は購買で買った謎の「学園限定モンスター焼きそば(味は青)」を食べながら、クラリスと向き合っていた。
「……納得いかないわ」
「私もいろんな意味で納得してないよ……」
「でも、一つだけ認めるわ。あなた、強運だけは……あるみたいね」
「……褒められてる気がしないけど、ありがとう?」
クラリスは小さく鼻を鳴らすと、髪を払いながら立ち去った。
「せいぜい……次も負けないように。私は手を抜かないから」
……え、またやる気なの!?
その夜、魔王城のリビング。
「いやぁ、娘が初試合で優勝とはめでたい!」
「父上、それたまたまウサギが強かっただけだから」
「それも才能のうちじゃろ。次は世界大会だな!」
「その前に私の魔法制御をどうにかしてください!」
そのとき、窓の外で光が閃いた。
「……ふむ、来たか。リリィよ、お前に第二の試練が迫っておる」
「……第二って、まだあるの!?」