姫、魔法学園に初登校! いきなり爆発&転校フラグ!?
「――というわけで、お前には王立魔法学園への編入を命ずる」
朝食のパンを咀嚼中、父上――魔王ゼオス様がとんでも発言をかましてきた。
「……は?」
私は目の前のドラゴンフルーツトーストを噴き出した。
「いやいや待って! 私、昨日『枕爆発事件』起こしたばっかだよ!? 魔法制御ゼロなんですけど!?」
「ならば学園で学べばよかろう」
「そのロジック、筋肉主義と同じですよ父上!」
しかしゼオス様の決定は絶対。逆らったら「数年分の読書感想文地獄」に突入する(過去に一度やられた)。よって、私は半ば強制的に、魔王の娘として学園に通うことになった。
そして――その日。
「わーっ、あれが王女リリィ様!?」
「魔王の娘ってマジ!?」
「本物だ! ツノが公式ツヤ仕上げ!!」
学園の正門をくぐった瞬間から、私のドタバタ人生は第2章に突入していた。
校庭に集まった生徒たちが、わらわらと寄ってくる。
注目の的どころか、動物園の珍獣エリアみたいになってる。これが転生者の求めていた青春か?
「リリィ様! よければお弁当ご一緒に――」
「姫! ご指導いただきたい魔法が!」
「俺を弟子にしてくだせぇ!」
人が次々に押し寄せてくる。オーラの暴力。群がるオタク。押し寄せるモブ!
「待って、パーソナルスペース!? 個人情報保護法!?!?」
と、そのとき。
ドカーン!!
爆発音とともに、校庭の一角が盛大に吹き飛んだ。
一瞬、誰もがフリーズ。
「……誰か、やらかした?」
「……王女、また?」
「私じゃないからね!? 今回はノータッチだからね!?」
煙の中から現れたのは、ピンク髪に巨大メガネの少女。手には明らかに自作と思われる魔導爆弾を抱えていた。
「あっ、実験失敗したっぽい! てへ!」
「『てへ』じゃないよ!?」
少女の名はミラ=バズライト。王立魔法学園きっての爆裂魔法マニアで、本人曰く「魔法とはロマン!」らしい。
将来有望な退学候補として教員からマークされている。
「いやー、あなたがリリィ様か! やっと会えたねー!」
「えっ、あ、はい。あなたは?」
「私、今日からあなたの親友になる予定のミラ! よろしく! ちなみに爆弾は趣味!」
「前情報が恐ろしすぎる!」
一方的に肩を組まれ、もはや逃げられない私。
ドタバタ学園生活、初日から難易度高すぎ問題。
ホームルームでは更なる洗礼が待っていた。
「さぁて、今日からこのクラスに転入してくるのは――」
教師が紹介しようとした瞬間、
「魔王の娘でしょ? いらないわ。目立ちすぎて迷惑」
すかさず放たれたトゲMAXの声。
教室の前方に座っていた白銀髪の少女が、冷ややかにこちらを見ていた。
「リリィ・アズラ。あなたが来たせいで、平穏な学園生活が台無し」
「……誰?」
「私はクラリス・エーデルヴァイス。全科目首席。学園の顔。あと、あなたの存在が気に食わない担当」
「ポジションが多すぎるよ!?」
そう、クラリスは成績優秀、容姿端麗、生徒会の次期会長候補。
いわゆる完全無欠系お嬢様キャラであり、他人と壁を作ることで生きてきたタイプ。
「まさか、魔力も制御できないくせに、特別扱いされるつもり?」
「そ、そんなつもりは……!」
「ならば証明してもらうわ。魔法決闘でね」
え、これ絶対、やる流れ?
「じゃあ今週末の決闘大会、あなたも強制参加。あ、拒否権ないから」
「ここの学園、自由意志の概念ないの!?」
周囲の生徒たちがざわめく中、私は思った。
……転生ライフ、マジで予定外の連続すぎる。
その日の帰り道。
私はミラと一緒に購買部で買った謎色ジュースを飲みながら、ため息をついた。
「決闘って何? 私まだ『枕』しか爆発させてないよ?」
「うんうん、つまり『実戦投入』が必要ってことだね! 今から訓練しよう! とりあえずこの試作品を――」
「やめて!! 今、ジュース爆発したら転校不可避だから!!」