リリィ・アズラ、スーツで出勤!?使者候補生は今日もドタバタ!
「……なにこの服! 息できないんだけど!」
朝から叫び声が学園中に響き渡る。
リリィ・アズラ、スーツと格闘中である。
「まさか、使者候補生の制服がスーツとは……。もっとこう、ローブとか、ケープとか、ふわっとしたやつがよかったぁ!」
「お似合いですよ、リリィさん。新入社員っぽくて」とエリナ。
「うるさいわ! シャキッとしてるのが余計に魔法少女感なくなるの!」
ネクタイをひっくり返しながら奮闘していると、またもやあの男――堂島レンがやってきた。
「準備はよろしいですか? 今日からは、異界交流実地訓練が始まります」
「じっ……実地!?」
「はい。人間界の異能対応訓練施設で、異世界との接触に関する対応を学んでもらいます」
「それってつまり……!」
「人間界にまた行くってことです」
「ですよねええええええ!!!」
異界ゲートをくぐると、そこはとんでもなくスタイリッシュな施設だった。
近未来感満載のホログラム案内板、エレベーターは音声認識、カフェラテも自動で泡立てるハイテクっぷり。
「なんで魔法より技術の方が魔法っぽいのよ……!」
「ようこそ、異能交流訓練センターへ!」
元気いっぱいに迎えてくれたのは、ピンク髪のポニーテールにジャージ姿の女性だった。
「わたしが教官の“桜木ミユ”です! 魔法少女っぽいでしょ?」
「うん、こっちの方が魔法少女だよね!? 圧倒的に!?」
「まずは基本の異能バリア解除訓練です! 失敗すると爆発するけど大丈夫!」
「……え、爆発って何回言えば気が済むの!?」
訓練は地味にキツかった。
「リリィさん、魔力過剰です!バリアが破裂しますよ!」
「うわぁぁぁ、止まらないぃぃぃ!!」
ドカーン!
「……爆発しましたね」
「またですか、先輩」
「こんなん一日三爆くらいで済めばいい方だよぉ!」
でも、そんなドタバタな毎日の中――
リリィは少しずつ、自分の魔力と向き合っていった。
「(暴走するのは、怖い。でも――)」
ふと、施設のガラス越しに見えた人間たちの街。忙しなく動く人々、笑顔、子どもたちの無邪気な姿。
(……守りたいな)
その夜。
訓練施設の屋上で、レンと二人。
「進歩してますね、リリィさん。今日の爆発、1回だけでした」
「だけって言い方よ!」
ふと、リリィは尋ねた。
「……堂島さんって、なんで人間界からこっちに関わってるの?」
「私の妹が、かつて異世界で力を暴走させ、帰ってこなかったんです」
リリィは一瞬、何も言えなかった。
「だからこそ、あなたのような人が、暴走せず、共に生きられるようにしたい」
(……それって、すごく重いけど、やさしい)
「なら、私も頑張ります。スーツの苦しさにも、爆発にも、負けない!」
「それは頼もしいですね。でも明日は空中回避バトルです」
「え、聞いてない!?」
そして、空にはまた、魔法と科学が交差する夜が訪れる――




