リリィ、魔力暴走!?学園で凍る(物理的に)
人間界でのディベートバトル(?)を終え、魔法学園に戻った私――リリィ・アズラ。
戦争はとりあえず回避、魔力はちょっと目覚めた、でもアイスはおいしかった。
そう、そんな感じの、平和な日常が戻ってくる……と思っていたんだよ。ほんとにね。
「リリィ先輩っ、すごかったですっ! 会場の床が光った時、わたし、泣きそうになりました!」
そう言って抱きついてくるのは、後輩のミラ・ペルセ。
うん、かわいい。が、寒い。
「ちょっ……ミラ、なんか体温……ていうか、寒っ!?」
「え? え? わたし普通ですよ? ……え?」
彼女が私から離れた瞬間、彼女の腕に氷がびっしり張り付いていた。
「え!? えええええええええええ!? 私のせい!?」
「つまりリリィさん、感情が昂ぶると魔力が暴走して、周囲の温度を氷点下にしてしまう可能性がある……と」
「それって、間違っても、氷属性美女ってレベルじゃないですよね!?」
学園の理術室で、担当教師のアーシェ先生が真顔でメモを取りながら言った。
「魔王の娘としての力が封印から解放されていく過程で、制御が難しくなってるようですね」
「でも、冷蔵庫いらずってことですよね! お弁当保存できる!」
「発想がポジティブすぎるよ、リリィさん……」
しかもその日、学園では、魔法球大会なる謎スポーツのクラス対抗戦が開催される日だった。
ルールは簡単。空中に浮かぶ魔力玉を奪い合い、指定地点に運ぶ。
魔法の使用は可。接触プレイは不可。勝者には豪華スイーツバイキング券!
「これは……! 出るしかないやつ!!」
「リリィ、ダメですって! 魔力制御がまだ……!」
「スイーツのためなら、私は冷凍庫にもなる覚悟ある!!」
「それ、逆に凍りつかせる側では!?」
そして試合開始――。
「いっくよー! 『フロストウィング・シュート!』」
私が空中に浮かんで魔力玉を飛ばした瞬間――
ゴォォォオオオ!!
会場の温度が一気に氷点下まで低下!
「うわああああ!? フィールドがスケートリンク化してる!!」
「選手全員すべって転んでるぞー!」
「実況のマイクも凍った!?」
私:「あ、あれ……ちょっと力入りすぎた……?」
先生:「リリィ、控室へ!!」
控室で反省中。
「……まさか、試合会場を冷凍保存することになるとは」
「私、敵選手を凍らせたいわけじゃないんですよ! スイーツがほしいだけなんですよ!!」
「リリィさん……気持ちは、わかります」
慰めてくれるミラ。優しいけど、肩に乗せてたペットのリスが凍ってる。ごめん。
その夜。
私はひとり、学園の屋上で空を見上げていた。星が静かに瞬いている。
「力が強くなっていくのって、素直に嬉しい……けど、怖くもあるんだよね」
遠くで人間界の街の灯りが、チラチラと見える。
カイは、今あの辺にいるのかな。
「私、ちゃんとこの力を制御して……もう一度、会いたいな」
しかし、星空を見つめる私の背後に――
「……やっぱり、ここにいたか」
「ひゃっ!? アーシェ先生!? ステルス魔法やめてくださいって言ってるじゃないですかー!」
「ごめんごめん。でも君が今、何を考えてるかは大体わかる」
「……そうですか?」
「そしてその気持ちに、答える準備が、魔界も人間界もまだできてないってことも」
「……じゃあ、どうすればいいんでしょう?」
「強くなるしかないよ。自分で制御して選べるくらいに」
「やっぱそれかー!」
笑いながら、私は立ち上がった。
「わかりました。じゃあ先生、修行メニューお願いします。明日から、氷点下の特訓コースで!」
「さすがに風邪ひくから、まずはサウナ魔法室からね」
「え、そっち!?」




