第四話
魔王との生活が始まった。
俺の朝は魔王に朝食を持って行くことから始まる。最初はご飯を炊いてインスタントの味噌汁を運んでいたが、どうもお気に召さなかったらしい。一度たまたま夕飯買って帰ったハンバーガーが気に入ったようで、以来毎朝それを要求される。
「やはりこの丸いパンに挟まった肉が至高だ! 寝起きで胃がそんなに動いてないからこそ、このようなガツンとした味のものを摂取しなくてはな!」
スーパーで買った安いバーガーを前に、魔王は満足そうに笑う。いや、そこはもっと高級なものを求めてくれよ……と思ったが、どうやら彼の舌は質より量らしい。
「魔王ってもっと食にうるさいイメージだったけど」
「魔王は弱きも強きも全て受け入れる。それが魔王の器というものじゃ。」
いや、それただの食いしん坊じゃね?
学校に行っている間は、魔王にはカップ麺を作る方法を教えた。電子ポットを指さしながら説明すると、彼は驚愕した表情でこう言った。
「貴様、まさか魔法使いだったのか!」
「いやいや、ただの科学の力だよ。電気ってやつでお湯を温めてるだけ」
「ほう……電気とやら、そなたの世界では魔法の一種か?」
「違うってば」
説明はしたものの、どうやら魔王の頭の中では電気=謎の魔法ということになっているようだった。
ちなみに昼間の魔王はほぼ寝ている。「魔力を補充するには睡眠が一番である」と言い放ち、俺のベッドを占領しているのだが……その「魔力」とやらの正体がいまだに謎だ。問題を起こさないのは一向に構わないが、いったいいつまで魔王は俺の家にいるのだろうか。できることなら早く帰って欲しいのだが……。
そんな生活が続く中、学校では修学旅行の準備が佳境を迎えていた。昼休みが終わる直前、委員長に呼び止められる。
「花郎くん、修学旅行のしおりの表紙、お願いしてたやつ、どう? もし難しいようだったら、北海道の有名な観光スポットの写真でも載せる方が良いかなって思って」
案外委員長はしおりのことを彼女なりに心配していたらしい。
「ああ、ごめん。渡すのを忘れていたよ」
俺は机の奥から一枚のA4用紙を引っ張り出した。そこにはスキーをする雪だるまと、スノボを楽しむ女子生徒、転んで泣きそうな男子生徒を描いたコミカルなイラストが載っている。
「え……これ花郎くんが描いたの?」
「そうだよ。結構いい感じだろ?」
正直、この絵が完成したのは魔王のおかげだ。今は魔王の身の回りの世話で大変だが、落ち着いたらこれで小銭を稼ぐこともできそうなレベルである。
「すごい! これみんなにも見せよう!」
委員長は興奮した様子でクラスメイトたちに絵を見せて回る。
「みんな見て! 花郎くん、こんなに絵が上手なんだよ!
「ちょっと待って、委員長! 俺の許可は!?」
「私花郎くんがこんなにも絵が上手いなんて知らなかった! 今まで馬鹿にしててごめん」
こいつ、俺のこと馬鹿にしてたのかよ……




