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毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第2部・サレ公爵夫人の内助の功〜呪いの愛人ノート殺人事件〜

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番外編短編・アリスと再会

 事件が解決し、フローラは、夫との仲も元に戻りつつあった。愛人ノートはしばらく白警団が預かる事になり、他にもコンラッドに事件の詳細を伝えたり、書類にハンコを押す為、白警団へ行く事になった。


 相変わらずコンラッドは不機嫌だった。サレ公爵夫人などと失礼な事ばかり吠えていたが、アリスの事も気になった。面会したいとごり押ししたら、留置所にいる彼女と会う約束も取れ、さっそくそこへ向かう。


「いや、なんだか毎日楽しいです。毒親の母と顔を合わせないだけで、さっぱりしたというか」


 ガラス戸で仕切られ、アリスとは直接会話はできない。白警団の監視も三人もあり、迂闊に何か言えない雰囲気だが、アリスは呑気そう。


「ちょっと、アリス。あなたの母はスキャンダルになって大変な事になっているのよ。少しは責任を感じたら?」

「いや、でも。もう母には何の感情もないっていうか」


 ヘラヘラ笑うアリスを見ながら、ため息しか出ない。とはいえ、事件については素直に話しているらしく、弁護士もつき、刑罰も軽くなる可能性があるという。確かにアリスが愛人ノートをルーナから取り返していなかったら、事件は迷宮入りしただろう。


「ところで奥さんって怖いの? ルーナは奥さんを怖がって素直に供述してるって聞いたけど」

「はぁ。人の心配してていいの? ここから出た時のことは考えてる?」

「う、それは……」


 何も考えてなかったらしい。仕方がない。これでまた犯罪をしたら、夢見が悪いので、アリスを公爵家のメイドとして雇う約束もした。ここから出るには何年かかるか不明だが、生きづらそうなアリスを見てたら、少しは同情心も芽生える。


「奥さんって案外良い人? 顔だけ悪役女優?」

「失礼ね。ま、しばらく塀の中の暮らしも楽しんで。あなたは鍵のついた籠にいた方が良いタイプかも?」


 精一杯皮肉を込めて言ったつもりだったが、アリスには伝わず、キョトンとしていた。本当の「つまんねー女」だ。芋臭い顔立ちもイライラとしてきたが、完全に憎めない。かつての自分を見ているような複雑な心境だった。


「奥さん、ありがとう。また来て」

「うーん、来ないとは思うけど、もう少し反省してね。あなた達が脅しなんてしなかったら、事件は起きなかったのよ。パティも十分悪いけどね」


 そこまで言われたら、さすがのアリスも口をつぐんでいた。下を向き、少しは反省しているよう。


「じゃあね。籠の生活もエンジョイしてね」


 フローラは公爵夫人らしい嘘臭い笑顔を作ると、アリスの前から立ち去った。

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