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毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第2部・サレ公爵夫人の内助の功〜呪いの愛人ノート殺人事件〜

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番外編短編・初めての蒸しケーキ作り

「はぁ。なんか、フローラを手放すと思うと、逆に惜しくなってきたわー」


 ここは公爵家の食堂。公爵の情け無い声が響いていた。


 今は女主人のフローラは事件の過労の為、入院中だったが、公爵はここに帰ってきて愚痴っていた。


 メイドのフィリスは「なにこの人、散々不倫してた癖に今更奥さんが恋しいって都合良すぎじゃないですか?」と呆れながらも、せっせと仕事をしていた。


 食堂の大きなテーブルの上には、メイドのフィリスとアンジェラが作った肉料理などが並べられていたが、ほとんど手がつけられていない。公爵は恋煩いにでもなったかのように、ため息をついていた。


「思えばフローラっておもしれー女だよな。事件も追うし、悪役女優の代役もする。あぁ、おもしれー」

「公爵さま、さっさと食べてくださいよ。っていうか、そんなに言うなら見舞いに行ったらどうです?」

「そうですよ、坊ちゃん。事件も無事に解決したんですし、見舞いに行きなさいよ」


 フォリスにもアンジェラにも詰められ、公爵は見舞いに行く事に決めていた。


「なんか土産でも持って行った方がいい? フローラって何が好きなん?」

「呆れた、奥さんに好みも把握してないんです?」


 フィリスは呆れて、もう何も言いたくない。せっせと仕事をこなし、腑抜けている公爵は無視。


「そういえば、フローラが作ってた蒸しケーキ美味かったな。あれ、作ってくれね?」

「嫌です。自分でやってください!」

「坊ちゃん、自分で作ったらどうです? それを土産に持っていくのは?」


 何を言ってもメイド達に詰められると悟った公爵は、翌日、一人でキッチンに立ち、蒸しケーキを作っていた。


 しかし一度も料理をした事がない公爵。あっという間にキッチンは滅茶苦茶になった。出来上がった蒸しケーキらしき者も不味そう。ぺちゃんこに潰れ、表面が何故かブツブツとしていた。


 公爵はこの結果に落ち込も、キッチンの隅で体育座りをしていた。


「ああ、料理ってこんなに面倒だったんか」

「そうですよ、公爵さま。さ、さっさと散らかしたキッチンを片付けてくださいよ」


 フィリスはそんな公爵に呆れつつも、今までの言動を反省している事は伝わってきた。ブツブツとフロラへの謝罪の言葉も呟いているのを見ら、同情心も生まれる。


 仕方がないので、シスター・マリーやアンジェラにも協力して貰い、みんなで蒸しケーキを作った。


 みんなの協力もあり、蒸しケーキ作りは大成功。紅茶味、チョコ味、メープルシロップ味とどれも美味しそう。キッチンには甘く優しい匂いで満ちていく。


「公爵さま、蒸しケーキを持ってフローラにちゃんと謝罪をしなさいよ」


 シスター・マリーに優しく諭され、公爵は珍しく泣きそうだ。目の周りが赤くなり、美男子と呼ばれる事が嘘のよう。


「ああ、みんなありがとう! これからは心を入れ替えるぞ!」


 フィリスはその公爵の言葉は、信用していない。それでも公爵の左手の薬指には結婚指輪が光っている事に気づき、頷くしかない。


「奥さん、ちゃんと事件を調査してよかったかもしれませんね。あの公爵も少しは反省しているみたいよ」


 フィリスはそう独り言を呟くと、キッチンの甘い香りを吸い込んだ。

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