番外編短編・公爵家のお皿
僕は公爵家のお皿。
フローラがメンヘラヒステリーを起こすたびに、割られていました。まあ、新しい皿に転生し、結局後者家のキッチンの戸棚に戻ってしまう事も多いけれど。
どうも最近はフローラもメンヘラになる事が少なくなり、僕も割られる事は少なくなってしまったけどね。
公爵も家に帰って来るようになったから、僕の出番も増えた。昨日はサラダを乗せたよ。
新米メイドのフィリスは田舎者らしく、僕を洗うのも雑だ。ドレッシングのシミがまだ残っているのに、洗った事にされた時は参った。昨日もメイド頭のアンジェラが怒ってたよ。やれやれ。
「しかし最近の奥さんはメンヘラしなくなったので、お皿買わなくていいですね!」
僕を吹きながら、フィリスはアンジェラに話していた。
「そうよな。前は皿代だけで私の給料の半分ぐらい使ってから」
「えー、そんなにですか! 奥さんのメンヘラは筋金入りです!」
そう、それは僕が一番よく知ってる。
「でもよ、メンヘラ女辞めろっていうのもどうなんかね」
「アンジェラ、そうですか? マムもメンヘラ辞めろって本に書いてたよ」
「だって、自分でご機嫌とって物分かりよくニコニコして、見かけも美人で稼いで自立している女なんて、都合の良い女だよな。自己中のヒモ男か、クズモラハラ男しかよってこんだろ。それがモテるっていう事か? 私はわからない」
「まあ、確かにメンヘラ女でも許せる男はかなり良い男ですね!」
「まあ、うちの坊ちゃんはね?」
「まあ、公爵は単にメンヘラ製造機ってだけでしょね!」
公爵の悪口で盛り上がってメイド二人を見ながら、僕も笑いそうだ。確かにあの公爵はメンヘラ製造機だった。
「お、二人とも何を盛り上がってるんだ?」
そこに公爵が登場。紅茶のお代わりが欲しいとキッチンにやって来たらしい。
突然に公爵の登場に二人とも慌てふためき、僕を床に落とした。
ガッシャーン!
僕は粉々の砕けてしまった。
「おいおい、君達、なんか俺の悪口言ってただろ?」
公爵の猜疑心モードはオンになり、メイド二人はしばらく目を泳がせていた。
一方、僕は新聞紙にぐるぐる巻きにされ、ゴミとして回収されてしまった。
メンヘラ女が治ったと思ったら、うっかりメイドに粉々にされるとは予想していなかったが、仕方がない。
まあ、人生、いや、皿生はこんなものである。次も公爵家のキッチンに生まれ変わる事を望みながら、僕は意識を手放していた。
「ふふふ、ありがとう、お皿さん。今度メンヘラ女になったら、思いっきり割らせて貰うから。その時はよろしく!」
意識が消えかける瞬間、どこからかフローラの声が聞こえる気がした。




