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毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第1部・サレ公爵夫人、探偵になる!〜悪魔な恋愛カウンセラー殺人事件〜

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調査編-1

 あれからフローラは、書店へ行き、ゴシップ誌をチェックしたが、まだ発売はされていないようだった。


 それでも貴族間のネットワークは侮れない。すでにマムの事件を知っている者もいるようで、道を歩くだけでもヒソヒソ。それに記者が後をつけているのにも気づいた。


 このまま記者に好きなようにさせたくない。首根っこを掴み、フィリスやアンジェラがいるホテルに連れて行き、どこまで知っているか、白状させた。


 記者はトマスという男だった。もう年齢は六十近い。頭も禿げていて、体格も太っていたが、女三人に睨まれると、震え上がっていた。


「そんな、奥さんのメイドさん達も責めないでくださいよ!」


 トマスは怖がっていたが、ここで解放するわけにはいかない。


「奥さん、だったらこの男を買収しちゃえばいいですよ。美味しいもん食べさせて我々の犬になって貰う方がいいのでは?」


 アンジェラは耳打ちしてきた。さすが長年、公爵家でメイド頭をやっているだけあり、リアリストだ。


 フィリスもこのアイデアに賛成で、さっそくトマスもホテルの一流の部屋に泊まらせ、豪華な食事を与え、綺麗な風呂に入らせた。


「ああ、極楽だわ」


 バスローブ姿でワインを飲むトマスは、ふやけていた。本当に犬のようだ。アンジェラの作戦は大成功と言えよう。フローラ達の言いなりとなり、知っている事をペラペラ吐き始めた。


 トマスによると、元々マムは極悪女として有名だったので、何かスキャンダルがないか追っていたらしい。


「しかしあの女は極悪だね。取材先の人は、口を揃えて悪女、悪魔って言ってた」


 トマスは顔を真っ赤にし、マムの事を評した。酔っているので余計に口が軽いらしい。


「正直、ざまぁって感じだよ。奥さんもお気の毒」

「だったら、記事にするの辞めてくれない?」

「そうよ、奥さんの言う通りですよ!」

「まあまあ、奥さんもフィリスも。そう怒りなさんな。他に知っている事は?」


 この場ではアンジェラが一番冷静だった。話が脱線しそうのなると、彼女が素早く修正していた。


「わかったよ、知ってる事を言えば良いんだろ」


 トマスはカバンからメモ帳を取り出した。


「まず、マムは離婚歴がある」

「え!?」


 それには一同驚いた。あの極悪女がどうやって結婚できたのか、フローラは首を傾げていた。


「おお。でも元夫は死んでるんだ」


 トマスはここで指を舐め、取材ノートをめくった。


「どうやら元夫は事故で車椅子生活になったらしい。が、マムはこんなはずじゃなかった、私の幸せをどうしてくれるのと怒り狂い、毎日大喧嘩だったらしい。当然夫の介護も病院や施設に押し付けていたとか」


 そのマムの様子はありありと想像できてしまう。フィリスもアンジェラも異論がなさそうで、深く頷いていた。


「元夫は何で死んだの?」


 マムが殺したと聞いても、驚かないが、死因は自殺だったとか。遺書は元々夫の地元の友人向けに書かれ、マムへの恨み言も多く綴られていたとか。


「その友人は?」


 遺書を受け取るなんてよっぽどだろう。フローラは元夫との友人の関係に違和感を覚えた。


「それが行方不明なんだよな。まあ、ショックだったんじゃないか。その後、マムは元夫が残した遺産で障害者施設を開いたり、恋愛カウンセラーを始めたり、文字通り好き放題やってたわけよ」


 トマスは深くため息をついていた。酔いも覚めてしまったらしい。キャリアがありそうなゴシップ記者も呆れさせるマムって何?


 フローラも呆れていた。アンジェラもフィリスの言葉がなく立ち尽くしていた。


「それに比べたら、奥さんって立派じゃね? あんな不貞働く夫も捨てないんだから。庶民の女だったら、離婚してるぜ、ふつー」


 マムと比べられると嬉しくはないが、褒め言葉と受け取っておこう。


「他に知っている事はない?」


 フローラは目を光らせた。他にも地元でのいじめ、顧客とのトラブル、エルとの確執、障害者施設でのパワハラなど、マムの周りのトラブルは尽きない。


「そうだな。この事で魔術師エルは大喜びで、王宮でパーティーを開いたらしい。確かに飯が美味しいだろうよ」

「エルが事件当時、国王や女王と一緒にいた事は確かなの?」

「ああ」


 ここでアリバイが崩れるかと思ったが、トマスは王宮専門の記者にも確認したらしく、間違いないらしい。


「この事でエルは本当に呪いができる魔術師だって評判も上がっているらしい。まあ、王族が敵を呪ったりするのは、噂だが、王宮は王宮で色々あるからなー。一枚岩じゃねぇよ」


 この件で一番得しているのは、エルだ。これは間違いないようだ。


「私はエルに共犯者がいると思うけどね。そいつが殺したんじゃね?」


 アンジェラはエルの共犯説を推していた。


「でも共犯者って誰よ?」


 フィリスの疑問ももっともだ。


「まあ、エルは仕事も無能で、人徳もないからな。共犯者なんて見つかるかね。殺し屋雇うっていうなら可能だが、この国の殺し屋ぐらいは白警団も把握しているだろう」


 トマスの推理ももっともだった。今のところエルが怪しいが、物理的にマムを殺すのは不可能だった。


「だったら、エルは呪いでマムを殺した?」


 フローラの推理は、結局そこに戻ってしまう。もはや推理とも言えないが、振り出しに戻ってしまった。


「呪いなんて無いだろ。だったら、エル以外が犯人だ」


 トマスの推理はそうだが、だったら一体誰が犯人なのか?


「思いもよらない人物が犯人かもしれませんよ」


 フィリスは能天気な声をあげていた。この田舎娘はとことん神経が太いらしい。こんな状況でも普通に笑っている。


 思いもよらない人物?


 フローラはまだ何も分からない。パズルのピースがバラバラで、別の絵のピースも混ざっているよう。もしかしたら、エルの件は全部別の絵のピースかもしれない。とりあえず、エルの件は横に置いても良い?


 そんな事を考えている時だった。ホテルのスタッフが伝言を持ってきた。伝言は白警団からで、公爵家の家宅捜査が終わったので、帰宅しても良いという事だった。また、コンラッドも話があるようで、公爵家で待っているという。


「トマス、ありがとう。あなたは明日まではここでゆっくり滞在していいわ」

「奥さん、太っ腹やな。うん、そうするわ」

「その代わり、もうあなたは夫や私にゴシップ記事は書かない。約束できる?  あ、ワインもう一本開ける?」


 トマスに釘を刺し、フィリスとアンジェラを連れて公爵家に向かう。楽しいホテル滞在が終わってしまい、二人は文句を言っていたが、今は帰るしか無い。


 まだまだパズルのピースは全部揃っていない。コンラッドが隠しているピースも全部知る必要があった。


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