表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第3部・サレ公爵夫人の危険な日常〜お嬢様学園殺人事件〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/162

番外編短編・新妻探偵はじめました

「まったくこの薄汚い娘は! 早く私の前から消えてちょうだい」

「そんな、有紗お嬢様!」

「うるさい!」


 時は大正初期。納田花澄は有紗お嬢様に虐げられていた。


 花澄も元々はお嬢様だったが、家が没落し、この華族の家に引き取られた。そうはいっても家族扱いはされず、お嬢様の有紗には虐げられ、使用人として扱われていた。


 有紗は西洋風の豪華なワンピースを着ているが、花澄はボロい木綿の着物に頭巾。顔立ちが残念な有紗だが、馬子にも衣装だ。そこそこ様になっている。


 一方、花澄はこんな粗末な服でも整った顔立ちは隠せず、清楚な霞草のような雰囲気の娘だった。だから余計に有紗はイライラし、花澄にキツく当たっているようだ。


「有紗お嬢様、どうして? どうして私にキツく当たるの?」


 花澄は使用人の部屋に戻るが、その理由は全くわからない。


 そんな時だった。花澄に縁談が舞い込んだ。正確には有紗に来た縁談だったが、条件が悪かったので、花澄に押し付けられた形になる。


 相手は鬼の軍人として恐れられている川瀬護という男だった。数々の悪評があり、性格も女への態度も悪いらしい。妾も十人ほど居るらしい。


 この時代に娘の人権はない。ほぼ強制的に花澄は川瀬家に行かされ、初顔合わせとなった。


 豪華な二階建ての洋館でそれだけで緊張するが、さらに川瀬は花澄を睨みつけ、小動物のように震えてしまう。


 確かに川瀬は美男子だった。ツヤのある黒髪に切れ長の大きな目、高い鼻、綺麗な歯並び。男だが、薔薇のよう派手なルックスで軍服姿もやけに似合う。日本人離れしている顔立ちも、今の時代ではよく目立つだろう。


「俺は妻などいらん」

「は?」

「結婚する気はない。既に離婚したい」


 初っ端から宣言され、花澄はさらに震える。


 この結婚、一体どうなる……?


 不安で胸が押しつぶされそうな時だった。庭から女の悲鳴が響き、川瀬が走った。花澄も彼に続くが、庭には何と死体。


 派手な着物の女だ。どう見ても夜の女だったが、彼女の死体を見ていたら、急に前世の記憶が蘇った。


 前世ではフローラ・アガターという公爵夫人だった。夫に不倫されていたが、ひょんな事から事件に巻き込まれて、殺人事件を解決した映像が頭の中で瞬時に流れていた。


 急に血が騒ぎはじめていた。この殺人事件も自分が解決してみせる???


「旦那さま、私、探偵しますわ」

「は? お前何を言っているんだよ?」


 川瀬に呆れられたが、今は胸がドキドキしてたまらない。


 そう、虐げられてた没落令嬢キャラは一旦お休みだ。今も毒まみれの妻探偵をやってみたくて仕方ない。


「まあ。やれるもんならやってみろ?」

「ええ。よろしくお願いしますわ」

「この女は俺の妾の一人だ。あとで詳しい身の上を話そう」


 警察も到着し、川瀬も花澄も現場から離れたが、今は新しい事件に胸が高鳴って仕方ない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ