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毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第3部・サレ公爵夫人の危険な日常〜お嬢様学園殺人事件〜

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番外編短編・田舎娘、メイドになる!

 天候というものは人間の力ではどうする事もできない。


「ああ、せっかく一生懸命育てた畑がぁー!」


 フィリスは泣き叫んでいた。


 田舎で野菜畑や果実を作り生計をたてていたフィリスだったが、嵐、台風、長雨という不運に見舞われ、あっという間に飢饉になってしまった。


 親は村で牧師をやっていたが、それも食える事は出来ず、村の病人や貧乏人の面倒を見ながら、探偵業の副業もやっている始末だった。


 天候というものは本当に読めない。田舎娘としてメンタルが極太なフィリスだったが、これには降参だ。まいった。新しい仕事を見つけようと村の職安に足を運ぶ。


 フィリスと同じように失業した者で職安は溢れかえり、デモやストライキの噂も流れていた。はっきりいって地獄のような光景だったが、フィリスはとある求人を見つけた。


「うん? 大都でメイドの仕事。アガター家っていう公爵家で料理と掃除、草むしりの仕事? 洗濯は担当者がいるので、体力のない女性も大歓迎ですだって。お! 給料も超いいよ? ボーナスまであるし、福利厚生でバカンスもある! 住み込みだから引っ越すのは面倒だけど、それ以外は好待遇じゃん!」


 フィリスはこのメイドの仕事をしたくなった。給料はこの国の平均値より倍ぐらい良く、どうしても金に目が眩んでしまった。


「職員さん、私、メイドになりたいです!」


 フィリスは満面の笑みで問い合わせた。頭の中は札束とバカンスしかなかったが。


「ああ、アガター家……。本当にいいんですか? 本当に応募されます?」


 なぜか職安の担当者は顔を曇らせ、何度も念を押してきた。


「え、何か問題でも?」

「まあ、いいか。では紹介状を書きますね」


 職員の態度は疑問だったが、トントン拍子に面接が決まり、メイド頭のアンジェラという人がわざわざ田舎までやってきてくれた。


「本当に本当にいいですね? アガター家のメイドになりますね?」

「え、ええ。私はメイドになります!」


 アンジェラも何回も念を押してきたが、この場で内定が出た。面接では言葉遣いも失敗したが、なぜかあっさりと「すぐ来てください」と。


「ありがとうございます。がんばります。立派なメイドになるぞ!」


 この時はまだアガター家の秘密は知らない。奥さんのフローラがメンヘラ地雷女という事も。ブラック公爵家として有名だった事も。そんな屋敷で愛人調査を始めてしまう未来も。


「よし、未来は明るい。飢饉も何とか乗り越えられそう!」


 面接の帰り、すっかり荒れ果てた畑を見たが、今はさほどショックでもない。


「公爵家の奥さんはどんな人だろう。きっと美人で優しい公爵夫人なんだろうな」


 フィリスの明るい声が畑に響く。この時はまだフィリスの頭には花が咲いていた。この花がすぐに枯れる事は知らずに。


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