番外編短編・アルマは見た
「はあ、忙しい。寮長になんてなるもんじゃないわ」
アルマは寮長室で呟き、生徒達の生活指導の記録を作成中だった。
前の寮長・ダリアは事件で逮捕され、急遽系列の学園で数学教師をしていたアルマが抜擢され、寮長をやっている。
宗教を母体とした学園なので、アルマも修道着姿で仕事をしていた。化粧っ気ない素肌だが、これでも三十歳。この国では行き遅れで、職業を持っている女は蔑まされるが、今は仕事中だ。余計な事を考えず、バリバリと手を動かしていたが。
「それにしても前の寮長は犯罪者だったなんて。しかも恋愛小説のゴーストライターやってたのも面白いなぁ。一体いつ執筆してたんだ?」
仕事が一段落終えると、事件のことも気になってきた。確か捕まったダリアやモラーナはこの学園の卒業生。何か面白い資料があるかも?
寮の地下にある資料室へ行き、ダリアやモラーナの当時の成績表を見てみた。ダリアは優等生で作文コンクールにも何度も入賞していた。一方、モラーナは成績が悪く、作文も酷い有様だ。
「ひー、こんな酷い成績と文才でよく作家名乗ってたなぁ」
資料を見る限り面白く、アルマは笑いを噛み殺す。
忙しい寮長の仕事だが、こんな風に面白い事もあるかもしれない。もしかしたら事件も……。
「よし、また仕事頑張るかー!」
アルマは腕まくりをし、再び仕事に戻っていた。




