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毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第3部・サレ公爵夫人の危険な日常〜お嬢様学園殺人事件〜

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番外編短編・フローラの懺悔

 マリオンの事件が解決し、フローラは女王の仕事をしながら忙しく働いていた。


 夫も仕事が忙しく、今は全く不倫をする様子もない。毎日公爵家に帰って来ていた。


 そんな折、フローラは時間を見つけ教会の懺悔室へ向かった。


 今はとても幸せ。夫との仲も良好になりつつあり、女王の仕事も充実感もある。それ故に夫の不倫に怒り狂い、悪口、暴言、メンヘラしていた事に心苦しくなり、こうして懺悔室で告白していた。


 懺悔室は狭く、仕切りもあるので相手の神父の顔も見えない。声からすると、初老の男のようだが。


「ああ、私、今はとても充実して幸せです。なので、夫や不倫女に復讐心を持ったり、悪口言っていた事が心苦しく……。本当にごめんなさい……」


 フローラがそう語ると、紙が擦れる音がした。神父が聖典を捲っているらしかった。


「そうですね。聖典には善を持って悪に勝てとも書いてあります」

「ええ、むしろ今みたいにに幸せになってしまった方が罪への良心が痛むというか……」


 フローラは苦笑しつつ、マリオンの事件についても神父に語った。


「今は夫も結婚記念日の約束を守ってくれるそうです。今年は夫にケーキを焼いて貰いました」

「それは良かったですね」

「ええ、不思議事に約束は守れそうな気がします。今はもう夫は裏切らないと信じたい気持ちの方が強いです。自分でもよく分からないのですが」


 もしかしたら夫はまた不倫するかも知れない。そんな疑問はゼロではないが、相手をずっと疑い続けているのも違う気がした。


 それに人は神と違って完璧でもない。フローラも問題があったのかも知れない。夫への理解したい気持ちも足りなかったのかもしれない。そう思うと、夫を疑い、責め続ける事から解放されてしまった。


「正直、もう夫への感情的な愛はないんです。一緒にいてもドキドキもしません。でも、約束を意思の力で守る事は出来るのかなって思うんです」

「そうですね。感情的な愛はだいたい三年で廃れるそうです」

「やっぱり、そうなのね」


 フローラは苦笑しながら頷く。感情的な愛が無い事に自分を責めそうにもなったが、そうしなくても良いからも知れない。


「だったら約束を守る事が愛ですかね? たぶん、そんな気がします」


 フローラがそう語ったのと同時に、教会の鐘の音が響いた。懺悔室にまでうるさいほど響いたが、まるで正解だと言われているみたいだった。


「では、また来ます。神父さん、話を聞いてくれてありがとう」


 そう言い残すと、フローラは懺悔室を後にしていた。

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