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毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第3部・サレ公爵夫人の危険な日常〜お嬢様学園殺人事件〜

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新しい夫婦関係編-3

 その夜、フローラは夢を見ていた。いよいよダリアと会う事が決まり、神経も高ぶっていたのかもしれない。


 夢はなぜか新婚当初のものだった。まだまだ夫との仲も良好で、寝室も一緒だった。


「メイドのローズが優秀でありがたいわ。よく仕事をしてくれるの」

「そうか、フローラ。それは良かったな」


 夢の中では夫と一緒に食事をしていた。当時、国では飢饉があり、食事も質素だったが、何の不満もなかった。


 今では信じられないが、夫と笑顔で食事し、食堂は和やかな雰囲気が流れる。数年後「毒味しろ」と夫が言う事になるとは、誰も予想できない雰囲気だった。


「そういえば、俺。昨日教会で神父さんに会ったよ」

「まあ、懺悔室へ何か用?」

「違うって。慈善活動で協力して貰いたい事があって話聞いてもらっただけさ」


 公爵家は貴族として慈善活動をよく行っていた。教会で家やお金の無いものに食糧を配る事などもしていた。その繋がりで夫も教会に行ったのだろう。


「神父さんには結婚式でもお世話になったわね」

「そうだな。相変わらず我々は仲が良いと話したら、神父さんも喜んでいたぜ」

「まあ、そうなの?」


 フローラは笑顔を見せた。結婚式で「病める時も健やかなる時も永遠に愛する事を誓います」と語った事は昨日の事のように思い出す。


「でも神父さん、変な事を言ってたな」

「変な事?」

「ああ、感情的な愛はいつか廃れるから、意志で妻を愛しなさい、って。どういう事だ?」


 夫は首を傾げていた。


「分からない。感情的な愛が廃れるなんて想像できない」


 フローラはアンジェラが焼いたパンを噛み締めながら考えるが、さっぱり分からない。


「俺もわからないな。俺はフローラを永遠に愛してるぞ」


 そんな甘いセリフにも酔い、フローラはうっとりと目を細めていた。


「ありがとう、あなた」

「それにもうすぐ結婚記念日だ。結婚記念日はお互いどんなに忙しくても毎年ちゃんと祝おう。約束だ」


 夫は子供のような無邪気な目を見せ、フローラの手をとった。そして薬指をからめ、お互いに約束をした。


「そういえば神父さん、約束を守る事も愛って言ってたけど、どういう事だ?」


 指切りした後、夢の中で夫がそう呟いた時。


「え?」


 目が覚めた。フローラはベッドの上にいた。窓の外はまだ薄暗く、朝陽も登りきってはいない模様。遠くの方で鳥の鳴き声も聞こえるが、まだ夢の中にいるみたい。


「夢か。でも何でよりによって新婚当時の夢……?」


 フローラはおでこを両手で押さえて考えるが、分からない。


 ふと、左手の薬指が視界に入り、もうすぐ結婚記念日だった事を思い出した。まだ寝ぼけていたフローラだったが。完全に目が覚めてしまう。


 そういえば最近の夫は何か言いたげだったが、もしかしたら結婚記念日について話したかったのだろうか。


「でも結婚記念日なんて一回も祝った事ないし……」


 夫は新婚三か月で不倫を始め、フローラを裏切った。家にも帰ってこなくなった。ごくたまに帰って来ては暴言を吐くか、「毒味をしろ」と騒ぐ始末。この約束は一度も守られた事は無い。


「ま、まさか。私でさえ忘れていたのに、夫が結婚記念日なんか覚えているはずないじゃない。さあ、起きよう。事件解決するのが先じゃない」


 フローラはベッドから起き上がり、いつものように身支度を整え始めた。夫はまだ眠っているようだ。寝室が一緒になる確率も低そうだが、なぜかフローラの心臓は騒がしい。


「ま、まさか夫が結婚記念日を覚えているわけがないから……」


 身支度を整えた後は書斎に向かい、事件について二代目愛人ノートに纏めていく。そう、今は事件を解決する事が先決だ。結婚記念日の事はまた忘れる事に決めた。

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