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毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第3部・サレ公爵夫人の危険な日常〜お嬢様学園殺人事件〜

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新しい夫婦関係編-1

 翌朝、フローラはキッチンに籠り、栗のマフィンを焼いていた。


 窓の外はよく晴れている。綺麗な秋晴れだが、フローラの顔は冴えない。


 あの後、モラーナを病院へ一緒に運んだ。救急隊員の話だと命には別状はないが、打ちどころが悪く、意識を失っているとの事。


 病院で手当ても受けたが、入院する為の保証人などが見つからず、結局、公爵家として面倒を見る事になってしまった。


 第一容疑者のモラーナが襲われてしまったのは予想外だ。せっかく犯人の尻尾を捕まえられそうだったのに、するりと逃げられてしまった。困った。フローラは栗のマフィンを淡々と作りながらも、表情は険しい。


 栗のマフィンが焼き上がると、キッチンには良い香りが広がる。少しは慰められたが、うまく笑顔は作れない。


 夫は原稿があると自室に篭ってしまった。アンジェラやフィリスもこの屋敷の仕事がある。


「結局、私が事件を調査しないといけないみたいね……」


 ため息をつきつつも栗のマフィンをラッピングし、バスケットに詰める。まずはモラーナの入院先に持っていこう。


「え、モラーナは事件のショックでまだ目が覚めていないんですか?」


 病院に行き、看護師哉医者に様子を聞いたが、まだ目を覚ましていないらしい。事件のショックもあり、精神も錯乱しているようで個室に移されたらしい。


「そうですか。じゃあ、この栗のマフィンは食べられないわね。看護師さん達で召し上がって」


 栗のマフィンは病院のスタッフに好評だったが、喜んではいられない。


 この事がスキャンダルになったら、公爵家にも影響があるだろう。


 フローラは病院からゴシップ記者のトマスに会う事に決めた。


 今日も締め切りが近いようで出版社はバタバタしていたが、一階のロビーでトマスに会うことが叶った。トマスはマムやパティの事件でもかなり協力してくれた人物だ。フローラは信頼もしていた。


「という事なんだけど、ゴシップ記者的には何かモラーナの事件について聞いてない?」


 トマスは栗のマフィンをムシャムシャと咀嚼していた。チャームポイントのすきっ歯を見せ笑顔。栗のマフィンもかなり気に入った模様だが。


「実はな」


 栗のマフィンを食べ終えたトマスは声のトーンを落としながら話し始めた。


「マリオンの件もモラーナの事も記事にするなと上からお達しが来た」

「え、本当?」


 フローラは信じられない。貴族の事も何でも記事にしていた。王族や王の噂だって躊躇なく記事にしていると思ったが。


「本当に記事にできないネタってあるのよな。王の不倫ネタとかも書けんし」


 トマスはそう言うと、二つ目の栗のマフィンを食べ始めた。


「うま! 奥さん、お菓子は本当にうまいな」

「ありがとう、で、何でこの件はストップかかってるの?」

「セシリーだよ。あのお嬢様の家がなぁ」


 セシリーの家は表向きはホテルなどの観光産業に力を入れていたが、元々は王族関係者。しかも代々王の汚れ役なども請け負っており、マフィアとの繋がりも深いという。


「それでセシリーは元マフィアと結婚したわけね。繋がったわ」

「ああ。でもあの家はそんな感じでアンタッチャブルだから、そこからうちにもストップきたわけよ」


 トマスは頭をかきつつ苦笑。


「それにこの事件は白警団もストップくらったみたいだぜ。嫌だねぇ、コネ社会って」


 さらにトマスはニヤニヤ笑っていたが、他人事だから楽しそうだ。


「白警団もストップしているとなると、奥さん、お前さんが犯人見つけるしかないだろう」

「そ、そうね……」


 元々そのつもりだったが、もう逃げられない状況まで追い込まれてしまった。


「でも第一容疑者のモラーナが被害にあったのよ。どういう事なのよ、もう」

「奥さん、よーく考えるんだ。犯人は一人じゃないかもしれないぜ?」

「え?」

「複数犯って事は考えられないか?」


 その発想はなかった。ずっとモラーナが犯人ふだと私怨で決めつけていたので目から鱗だ。それにマリオンを襲った犯人とモラーナを襲った犯人が同一人物とも言い切れない。


「そうね。その可能性は考えていなかったわ」


 フローラは重い腰をあげ、公爵家に一旦帰る事にした。今はまだパズルのピースが混乱状態だ。少し落ち着いて整理する必要があるだろう。


「それにここまで白警団やゴシップ誌に影響があるなんて、セシリーだって十分怪しいじゃない……」


 ぶつぶつ独り言を呟きつつ、公爵家の門の前に辿り着いた時だった。


 そのセシリーが目の前にいた。しかも夫のアドルフとも一緒に。


 セシリーに表情は重く、立っているのもやっとだった。アドルフが支えていてようやく立てる感じだ。


「フローラさん、お話があります」

「お話?」


 セシリーはそれでもきちんと頭を下げていた。


「友達を……。マリオンを殺した犯人を捕まえてください!」


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