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毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第3部・サレ公爵夫人の危険な日常〜お嬢様学園殺人事件〜

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潜入調査編-5

「奥さん、まさか、ダリアが犯人なんですか?」

「し、静かにして」


 あの後、フローラはフィリスと合流し、学園の近くにある商業地区に来ていた。いつもの肉バルの前は通り過ぎ、文具店に入る。ここは学園の生徒達の御用達の店のようで、ノートや筆記用具だけでなく、体操着や靴下などの細々とした雑貨も並び、意外と広々とした店だったが、ここでキャロルは万引きしていたらしい。


 店の中は紺色の派手な制服を着た生徒達や近隣住民で混み合っていた。店の側には税理士事務所などもあるようで、地味用品を買いに来ている者も多いようだ。


 フローラ達は客のフリをしながらキャロルの姿を探していた。


「ダリアも脅し? 私はモラーナだけが脅しをしれいると思ってましたよ」


 フィリスは店頭にある便箋を眺めつつ、口を尖らせる。


「むしろダリアはモラーナに脅されていた可能性もありません?」

「そうだけど、モラーナの脅しの手口の真似ながら、ダリアだってやっていた可能性もあるわ。それに二人が共謀してマリオンを脅していたっていう可能性はなくて?」


 フローラはいつもより早口で推理を述べる。もしかしたらこれでマリオンを襲った犯人の手がかりが掴めるかもしれない。


「そうかな? 私はやっりモラーナ犯人説を推すよ」


 フィリスはこの推理にあまり納得いっていないようで、店にあるメモ帳や便箋を眺めるのに夢中だった。確かに可愛らしい文具も多く、学園の生徒達も夢中で選んでいた。


「まあ、何が事件の手がかりになるか分からないじゃない? 遠回りになるかもしれないけど、まずはキャロルを見つけましょう。それに万引きも犯罪」

「そうだね、奥さん。事件の手がかりになるか分からないけど、とりあえずキャロルを見つけるかー」


 フィリスは欠伸をし、熊の絵が描かれた便箋に手を伸ばした瞬間だった。今待っでぬるかったフィリスの表情が急に冴えた。目頭が鋭くなり、少し離れた所にある万年筆やインクコーナーを見てる。


「奥さん、あのインク見ている子がキャロルだよ」

「え、本当?」


 フローラは便箋の棚に隠れつつ、キャロルを見た。確かに美人なお嬢様だった。派手な制服もよく似合ってる。金色の髪の毛はクルクルと巻かれ、まつ毛も長い。口元も小さく、清楚な雰囲気だ。この姿だけではとても万引き犯には見えないが、フローラ達は目を光らせた。


「あの子、ずっと見てるだけだね。怪しいね」

「でもフィリス。あのキャロルって子、いかにも裕福そう。何で万引き?」


 フローラはそこが疑問だった。


「さあ。暇つぶしでスリル味わったりしたいんじゃないの? お金だけが理由じゃないかも?」


 そのフィリスの推理は当たってるだろう。フローラは深く頷く。貴族も貧乏人のコスプレをし趣味の悪い事をしていた。夫も公爵という立場にウンザリしている。それが直接の原因ではないが、不貞を繰り返していた。フローラも公爵家に引きこもりメンヘラしていた過去もある。金に困ってなくても万引きする人間はいそうだ。


「でも、万引きなんてされたら店は大打撃よね、奥さん」

「そうね。シスター・マリーの店は大丈夫かしら」


 シスター・マリーの店も万引き被害にあい、犯人を捕まえ損ねた過去も思い出す。事件とは無関係かもしれないが、やはりキャロルは捕まえたい。フローラは手をぎゅっと強く握りしめ、キャロルの様子を窺う。


 しかし予想以上に相手は狡猾だった。文房具屋では本当に見ているだけだった。購入もしないが、商品に手すらつけない。文房具屋を出ると、次は豆屋やジャム店にも入ったが、後ろをチラチラと見ながら、何もしていない。


「フィリス、あの子、私達の事がバレてる?」

「さあ、何なのあの子……」


 田舎者で大抵の事は全く気にしないフィリスもキャロルの行動には顔を顰めていた。


「私達に気づいて挑発しているみたい」


 フィリスの言う通りだった。


 キャロルは最後に書店に入ると、あろう事か夫の「愛人探偵」を手にし、カバンにさっと入れた。こちらを見て舌まで出す始末。


「待ちなさい!」

「待てー!」


 二人でキャロルを捕まえようとした。書店から走って逃げるキャロルを追い、全速力で走ったが。


 相手は現役の女学生だ。体力の差が全然違う。二人ともあっという間にまかれてしまい、ふキャロルを見失ってしまった。一応書店の店員にも報告したが、今は万引き犯がとても多く、商業地区でも問題視され、頭を抱えているようだ。


「店員さん、これが白警団に言ったら? 学園は何をしているの?」


 フローラは困っている書店員を見て黙っていられなくなった。いくら無能な白警団でも万引き犯ぐらいは捕まえられるだろうと。


「いえ、白警団に言っても無駄でしたよ。店側が防犯していないのが悪いんだってさ。あと、貴族のお嬢様方の調査はコネで揉み消されるとか。いや、白警団って無能だな」


 フローラ達は書店員の言葉に深く頷く。おそらくマリオンの事件も全く進展していないだろう。


 だからと言ってフローラ達の事件調査も全く進んでいるいない。手がかりになるそうなキャロルにも逃げられた。舌を出して挑発している様は、思い出すだけで胃がキリキリしてくる。


「奥さん、これ、事件解決できます? 公爵さまの濡れ衣晴らせますか?」


 さすがのフィリスも不安になって来たようだ。いつも明るい目が今日は曇っていた。


「分からない……」


 どうやら迷路にが入り込んでしまったようだ。パズルのピースが揃って来ているのに、目に前で再びバラバラにされた気分だ。


「奥さん、今日はとりあえず帰ります? アンジェラが待ってますよ、パンを焼いて」

「そうね……」


 急にお腹も減ってきた。とりあえずご飯だ。事件については夕食をとってから考えよう。


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