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毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第3部・サレ公爵夫人の危険な日常〜お嬢様学園殺人事件〜

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殺人事件編-6

「ひっ! 奥さん、何でマムとそっくりなメイクしてるんですかー!」


 フィリスと落ち合った。ちょうど劇場の裏手で、ここだと人気が少なく、話もしやすい。


 マム風のメイクをしたフローラ。そんなフローラの顔を見たフィリスは小さく悲鳴をあげていた。このフェス会場はゾンビや吸血鬼のコスプレをしている者が多い。フィリスもゴスロリメイクをしていたが「奥さん、幽霊のコスプレですか?」と引いていた。


「何でマムのメイクなんてしてるんですか」


 ゴスロリメイド姿のフィリスは、いつもの田舎娘らしさが消えていた。


「何となく? いえ、でもこうすれば夫が家に帰って来るかも知れないって思って」

「もう、メンヘラ過ぎますって」


 フィリスは呆れ、子供のように口を尖らせていた。


「マムの事なんてもういいじゃないですか。奥さん、負けないで。気を確かにして。確かに今は変な女が三人現れましたけど、まだまだです。まだ公爵は決定的に不倫はしていないでしょ?」


 フィリスの指摘はもっともだった。祭りの妙なムードに流され、思考もおかしくなっていたのかもしれない。


「そ、そうね」

「公爵さまにはギャフンと言わせましょ! 本当、奥さん正気に戻ってくださいよ!」


 フィリスに肩をゆり動かされ、だんだんと頭も冷えてきた。確かに今は正気ではなかった。過去の事も思い出しメンヘラになっていた。冷静に考えれば変な女三人に略奪宣言されただけだ。まだ決定的ではない。


「え、ええ。正気に戻ってきた」

「よかったです! じゃ、引き続き聞き込みしましょ!」


 フィリスはそう言い、騒がしいステージの方へ消えて行った。


 残されたフローラは占いのブースへ向かう事にした。あそこにはモラーナもいたし、何かわかるかもしれない。


「あれ、公爵夫人では?」


 占いの列に並んでいると、何とダリアにあった。学園の寮長室で会った時とは違い、今は妖精のコスプレをしていた。優等生的なルックスのダリアは妖精のコスプレは絶妙に似合わないが、そんな事は口にできない。


「ごきげんよう、ダリア」

「っていうかそのメイクは……。ふふ、病んでますね。メンヘラ?」


 ダリアはここで悪く言う事を忘れていなかったが、フローラが軽く睨むと震えていた。


「呪い殺すわよぉ〜!」

「きゃあ!」


 冗談で言っただけだが、ダリアは半泣きで逃げて行った。死人のコスプレは略奪宣言してクタダリアにも怖かったらしい。


 そうこうしている内に列も進み、占いを受ける事になった。占い師は黒マントの怪しい女だった。水晶玉はなく、生年月日を伝えるとホロスコープを描き、診断してきた。


「ふむ、お前さんは月の角度が悪い。結婚生活に苦労する性格じゃ」

「そう。だけど、私と全く同じ生年月日の人も同じ結果になるの?」

「そ、それは……」

「占いって人にレッテルつけて、意外と失礼ね。人は世界にたった一人の特別な存在ではなくて?」


 フローラの言葉の占い師はタジタジだったが、モラーナの事を覚えていたようだ。ペラペラと顧客の情報を勝手に教えてくれた。


「このモラーナっていう女は、作家だと言ってたが」

「ええ。恋愛小説家よ」

「じゃがな、ホロスコープ上では作家の才能は無い女なのだよ。文章力を司る星の状態が悪い」

「本当?」

「そのモラーナって女に作家は向いてない。辞めた方がいい。もしくはゴーストライターをつけろって言ったら、怒ってたね」

「怒る?」

「ああ、図星だったんだろう」


 ひひひと占い師は笑っていた。何か引っ掛かり、この事を一応メモしておいた。


 占いのブースを出ると、ますます人は増え、歩くのも大変だった。マリオンのメイクブースは相変わらず閉まっていて気になる。あれからもう時間も経っていたが。


 近くにいたフェスのスタッフに聞くと、マリオンは劇場の楽屋に向かったという。夕方や夜からは劇場でもイベントがあるので、その為に楽屋に行ったとか。


 フローラは人混みをかきわけ劇場の向かい、楽屋へ。劇場の方も人が多く、楽屋にたどり着く時はへとへとになったが、ここまでくると静かだった。


「うん? 何か、妙な空気が……」


 静かすぎる楽屋の前に違和感が拭えず、ノックもせずに中に入ると……。


 マリオンが倒れていた。


「死んでる……? いえ、まだ息があるわ! 誰か!」


 フローラは走って人を呼びに向かった。また事件?


 フローラには穏やかな日常は縁が遠いようだ。

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