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毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第2部・サレ公爵夫人の内助の功〜呪いの愛人ノート殺人事件〜

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番外編短編・公爵の独り言

「はあ、何だか退屈だな」


 公爵であるブラッドリー・アガターは呟く。いつもは不倫をしまくり、妻のフローラを大変悲しませていたが、パティの事件後は反省し、書斎にこもって仕事をしていた。


 といっても締め切りも守ったし、今は少し暇だ。フローラは悪役令嬢としても副業をやっているので、少々妬いてしまうぐらい。


 公爵は口を尖らせながら、自分の手帳を捲る。


「そうはいっても、来週から島でバカンスも決まったし、これは楽しみだな。お、秋には結婚記念日もあるぞ」


 今更結婚記念日というのも微妙だが、今年は違う感覚で楽しめるかもしれない。


 フローラはずっと優等生でつまらない女だと思っていた。修道院で行儀見習いも受け、真っ直ぐだが、頑固で真面目で融通のきかないつまらない女だと思っていたが。


 まさか殺人事件を解決してしまう強かな女だったちは。そのギャップにやられそう。一度は別れようとも思ったが、手放すと思うと、好きなオモチャを奪われたみたいで不愉快。


 そう、己がいかに自分勝手な事を思っているかは自覚していたが、夫婦間に情みたいなものはあったらしい。


「まあ、いいか。しかし、この書斎に愛人ノートが無いのは、スッキリするわな……」


 この書斎の本棚には、フローラが自分の愛人を調べたノートがあった。今はパティの事件の重要な証拠品として白警団が持っているらしい。帰って来るのは秋以降だと聞いた。


「あなた、何を笑っているの?」


 そこへフローラが書斎に入ってきた。お盆を持っていた。その上には湯気が浮かぶ紅茶。どうやら休憩用にお茶を持ってきたらしいが、突然現れたフローラに小さな悲鳴が出てしまう。


「どうしたの? まさかまた何かやましい事でも?」

「ふっ。お前はまだまだだ。女のカンは当てにならんぞ?」

「え、まさか悪い事は考えてなかった?」

「俺だっていつも不倫を考えているわけないじゃないか」


 フローラは悔しそうな安堵したような何とも言えない表情を浮かべていた。


「ところで秋って何かあるか知ってるか?」

「は、何だっけ? 愛人ノートが返ってくる日?」


 フローラは結婚記念日の「け」の字も出さない。これはすっかり忘れている模様。確かにずっと結婚記念日はスルーしていたが。


 しかし、フローラの左手の薬指にはちゃんと結婚指輪がある。それは公爵の薬指も同様だった。


「ふっ。まあ、いい。秋になればわかる」

「何なの? 変な人……」


 フローラは呆れて出て行ってしまったが、公爵は一人でニヤついていた。結婚記念日は何をしよう。フローラを喜ばせる事を想像するだけで、楽しくなってきた。


「あはは」


 書斎には公爵の笑い声が響いていた。


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