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毒妻探偵〜サレ公爵夫人、愛人調査能力で殺人事件を解く〜  作者: 地野千塩
第2部・サレ公爵夫人の内助の功〜呪いの愛人ノート殺人事件〜

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番外編短編・悪役女優VS元清純派女優

 パティの事件も解決し、ホッと一息ついている所だった。


 フローラは退院後は悪役女優になったり、女王から依頼されて国王の愛人調査を手伝ったりしていた。夫はミステリー作家に転向し、浮気もせず、仕事も多忙だった。執筆だけでなく、公爵家の仕事ももちろん、「愛人探偵」の舞台化の監修も大変らしいが。


「ふう、私は事件がひと段落して暇だわ。紅茶もスコーンもクッキーも美味しい」


 今日はよく晴れていたので、庭のテラスにテーブルを出し、フローラはゆっくりとお茶を楽しんでいた。


 フォリスに用意して貰ったお茶だが、濃いめで香り高い。うっかりメイドだったフィリスも、シスター・マリーの特訓のおかげで何とかまともになって来たのも微笑ましい。悪役女優顔のフローラもついつい優しい顔になり、美味しい紅茶を啜る。


 ブラック公爵家と噂がたち、メイド人材に苦労していたが、最近は単発で来てくれるメイドも増えた。事件の影響により、野次馬感覚で来ているものも多いが、これで公爵家の人手不足問題も解決し、住み込みで常勤してくれるメイドを探すだけで、安堵している時だった。


「ふう、紅茶が美味しい。最高よ」

「奥さん、リラックスしている時に悪いんですが、お客様です」

「え、誰?」


 フィリスがやってきた。てっきりお茶のおかわりを持って来たと思ったが、来客だという。しかも女優のブリジッド。あのアリスの母親で、現在も世間から叩かれる存在だった。


 こんなリラックスしている時に会いたい人物ではないが、とりあえず連れて来させた。


 目の前にいるブリジッドは憔悴し、げっそりと痩せていた。服も地味なドレス。元々芋草い雑草タイプの顔立ちだが、今は除草剤でも撒かれた後のよう。今にも枯れていきそう。


「ブリジッド、何の用? とりあえず一緒に座ってお茶でも飲みますか?」


 フローラは嘘臭い笑顔を作り、ブリジッドを座らせた。緊張しているのか、ブリジッドの動きはカクカクとし、頬も張り詰めている。とても笑えないと言った雰囲気だ。


「ねえ、紅茶美味しいわね。スコーンも食べる? クッキーも」


 ケーキスタンドに置かれた菓子類を勧めたが、ブリジッドは手をつけない。紅茶も飲まない。せっかく良い茶葉を使い、カップもポットも薔薇柄の素敵なものなのに。


「こ、こんな私に優しくしていいんですか?」


 ブリジッドはフローラの態度が疑問らしい。首を傾げ、フローラの目を凝視していた。


「ええ。ま、不倫女でも、ちゃんと私に面と向かって謝罪してくれればいいかな。マムやパティのように死に逃げされる方が嫌かも」

「そ、そうね……」


 ブリジッドは悔しそうだ。口をへの字にし、睨みつけながらも、渋々フローラに頭を下げていた。もしかしたらフローラに嫌味でも言うつもりで来たのだろうが、思惑が外れて居場所が無い感じなのだろう。


「あなた、仕事は大丈夫?」

「大丈夫じゃないわね。これが不倫の報いかしら?」


 その声は元清純派女優らしく演技かかっていた。フローラはこれが演技なのか、素なのか判断しずらい。


「ごめんなさいね」


 その声も演技かもしれない。あのアリスの親だ。毒親だ。素直に反省しているとは、どうしても思えないが。


「まあ、いいか。今回は一緒にお茶でもしましょうか」


 フローラは逆に悪役女優風に目を光らせた。ブリジッドの心境などお見通しという風に。


「ありがとう。あなたは、悪役女優になった方がいいわ」

「褒め言葉として受け取っておくわ。こちらこそありがとう」


 呑気なお茶会の場に緊張感が走るが、表面的には二人は仲良しにも見える。


「アンジェラ、女って怖いです!」


 それを見ていたフィリスは震えてきた。アンジェラも二人の様子を見ながら、苦笑。


「まあ、悪役女優と元清純派女優の戦いも、傍目で見ていたら面白いもんだよ」

「そうですかねー」


 フィリスは納得いかないが、緊張感が走るお茶会の場に、ケーキやシュークリームも運んでいた。


「さあ、奥様方、美味しいお菓子ですよ……」


 そのフィリスは作り笑いなどは出来ず、死んだ目をしながら、せっせと給仕を続けていた。


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